【マフィア企画】氷の瞳が、【文章】 | あたしの海にさよならを

あたしの海にさよならを

あなたはあたしのすべてだったの。 だからさようなら。 さよなら、あたしの海。


「あれじゃあまるで…!」

震える声で叫ぶリッチーの声が耳を劈くように谺する。




     ――主の帰還、或いは





銃声、怒号、悲鳴、爆音。鉄の匂いが鼻にこびり付き嫌悪感。悪臭漂うビルの一階、インノチェンティ・ジュニアの「元」ソルジャーの4名が身を潜めていた。

「さて、どうしようかね~?」

サングイノーゾがぽつりと呟く。鮮やかな程の長かった赤髪は今ではとても短く切られていて整った顔立ちが露になり、もはや別人のように見えている。

「…今目立つと、少々面倒臭いな。」

ウェーブのかかった茶色の長髪を揺らめかせ、小声でキースが呟く。

「ですねー。なんかこの調子だと援軍とか来そうですしねー。」

エマもまた疲れたように呟く。少し落ち着いたのだろうか、少し軽い口振りで話していた。

「…。」

リッチーはというと、拳銃を構えてぷるぷると震えているのみだ。

「致し方ないだろう、弱体化したRCを狙うだけの数は用意しているのだろうから。」

今回の「シゴト」はシンプル。RC潰しを謀る輩の排除。彼等4人はリストアップされた組織の内の一つ、しかもそれなりに大きな組織に不法侵入しているのだ。しかも、たった4人で。何の目的があるのかは誰にも解らない、だが重要な仕事である事は確かだ。壁の影から進行方向の様子を見やる。スーツ姿の男が3人留まって持ち場を離れようとしない。壁には回がが飾られ、近くには高級そうな花瓶が数個、天井には通気口の弁であろう金属格子がかかっていた。あれらに弾を当ててこちらに気を逸らせ数人を背後から襲わせるか、そう考えてサンは指示を出そうとする。ダビデに「彼等を任せる」と頼まれたのだ。この程度で考え込んではダビデに合わせる顔がない、ふとダビデの涙が脳裏に映る。振りほどくように首を横に振る。いくら首を振っても長い髪が顔に当たる事はなかった。青色の瞳をすうと見開き、口を開いた。

「そんじゃまあ、キースは俺と正面突破ね~、で、エマとリッチーは」

瞬間、空気が一瞬にして冷える。否、表現としては「凍り付く」の方が正しいだろうか。一切の身動きを赦さない異常な空間。ぴり、と張りつめたそれに先方も動揺、その動きを停止した。エマとリッチーもまたその威圧感に怯んでいた。唯一、その場で動けたのはたったの「3人」だけであった。内のひとりであるサングイノーゾが口の端を吊り上げ、にいと笑う。内のひとりであるキースは天井を見上げる。そしてふたり声を合わせて同じ事を言うのだ。

「来た」

があんと喧しい音が静止した空気を強制的にぶち壊す。音の方を見やると、それはどうやら通気口の蓋を蹴破った音のようだ。轟音を鳴らした犯人は黒ずくめのボディスーツを着た男で、頭や口元まですっぽりと覆う服装、加えゴーグルまで装着しているため個人の特定は難しい。それが通気口真下、敵陣の中心に着地、と同時に屈んだ姿勢のまま長身の男に脚払い。巻き込まれるように周囲の構成員達も耐性を崩す、隙を与える間もなく長身の男の腹に蹴りを入れる。よろけたそれを踏み台にするように顔面を踏みつけ跳躍、横でバランスを崩している男の顎目がけて飛び膝蹴り。飛び膝蹴りが命中した事と長身の男が気絶した事をを目視で確認、と、中肉の男が銃を向けようとする。その動きに合わせて黒ずくめがするりと男の腕の下に潜り込む。中肉の男が照準を定める隙も与えさせない程の速さで移動、右手を握り込み、動揺する男目がけて身体の中心線を沿うような軌道で綺麗なアッパーを叩き込む。ぐらりとよろける男に追い打ちをかけるように腹を軽くひと蹴り、倒れた所にのしかかり、ひたすら顔面を素手で殴打する。骨が折れるような音と、柔らかいものが潰れるような音が繰り返し廊下中に響く。反撃を与えさせない程の連撃、異常とも呼べる空気が周囲を包む。と、黒ずくめの男の背後からかちりという金属音が聞こえる。長身が目を醒ましたようだ、銃身が黒ずくめの方に向けられる。それに気付いていたのだろう、黒ずくめはぐんと身体を捻らせ長身の銃弾を避ける。瞬間、それの目を覆っていたゴーグルが破裂した。――普通の人間なら銃弾を避けるなどという芸当等出来る筈がない、それを可能にできるだけの聴覚を持つ男がそこには居た。それが誰か漸く理解できたのだろう、長身が喚く。

「きさま」

瞬間、長身の頭部から出血、どさりと倒れ痙攣、そのまま静かになる。黒ずくめの背後で、キースが静かに煙を吐き出す鉄の塊をホルスターに仕舞った。その後ろからサンが歩みを進める。二人の存在を空気で察したのだろう、割れたゴーグルを外し、頭を覆っていたフード部を脱ぐ。鮮やかで長く美しい金の髪がはらりと舞う。黒地のボディスーツの上であるため一層華やかに見える。ひとつ溜息を吐き、己の下で気絶した中肉の男の腹に渾身の一発をぶつけ、すうと立ち上がる。中背、ぴちりとしたボディスーツに絞り切った筋肉が浮き立ち目立つ。普段からスーツしか着ない、しかも怠惰なイメージしかない男の意外な側面を見、エマもリッチーも動揺を隠せない。

「おかえり、ダビデ」

サンがしずかに言う。言葉を発する事も無く、ダビデが頷く。そう、それは「元幹部」、インノチェンティ・ジュニア、ダビデ=O=インノチェンティそのひとであった。すぐ帰る、という言葉を残して数月が経った今日、その狗はやっと戻ってきたのだ。他の面々も挨拶くらいは交わそうとした、が、動けなかった。サンの言葉を聞いて数秒後にまた中肉の男を蹴り始めたからだ。執念く蹴り続けた。静止を促すことはできなかった。その行為の異常性を表すように、ダビデは無表情であった、とてもつまらなさそうに、否、ひとつの退屈しのぎで渋々やるかのように、何度も何度もその腹を蹴るのだ。その光景があまりにも恐ろしかったのだ。しかし何よりも、

「…あ、」

氷の眼が。

「………。」

静寂に響く肉塊を蹴る鈍い音が、鼓膜を犯し、精神を摩耗させていく。

「ダビデ、…これ、どうする?」

あまりに凍てついた空気を少しでも柔和させるようにキースが問いかける。ひとつの屍骸と、ふたつの重傷人について、そして恐らく次々と送られてくる増援に関して言ったのだろう、目線は変形した肉塊に向けられている。無言で視線のみをキースに送る。執拗に腹を蹴りながらダビデがぼそりと答える。その答に、幼い頃からの付き合いである二人はその状況の異常さに気付いた。

「自分で考えろ。」

幼い頃からの付き合いであった親友に、淡々と、冷酷に、たったひとことだけ言い放つ。表現が寂しいからと遠回しに伝える言葉遊びが好きなダビデにはあり得ない言葉であった。単刀直入に、己の苛立ちを言葉に表したのだ。流石にサンもそれには驚いたようで、彼に問おうとするも、

「サン、髪切ったんだな。」

いつもどおりのダビデのような口振りで返す。それは、これ以上の追求を赦さないという意味でもある。いつもどおりの「遠回しな表現のダビデ」に戻りサンも少し安心したように会話を続ける。

「うん、ばっさり切った~。似合う?」
「…似合ってるよ、でも俺は長い方が良いと思うけどなァ。また伸ばすのか」
「んー…。どうだろうね~?なァんにも考えてな~い」
「…そうか。」

会話が途切れる。空気が緩和された隙にとエマが笑顔で挨拶をしようと思うも、彼女なりのユーモアを交えてみようと、

「帰ってきたんですかー?そのまま遠い地で迷子になって死ねばよかったのに」

照れ隠しもあったのだろう、その言葉を発して一瞬、ダビデが全ての動きを止め、氷の瞳でエマを睨む。あまりに感情を帯びないその視線に恐怖、身体が思うように動かない。瞬間、ダビデの両腕をサンとキースが掴んだ。

「…ダビデ、真に受けるな」
「これはジョオクだよ。愛情の裏返しみたいなモンだから、そのモノ仕舞いなさい。」

両手には愛銃、クロスハウンズ。昔見た映画でフォルムに一目惚れして購入したカスタムガバメント、AMTハードボーラー・ロングスライドを更に改造したものである。彼の両手に握られた大きな鉄の塊は、「彼女の言葉通りに所持者を殺そうとしていた」。あまりにも異常、だがキースもサンもその光景には慣れていたようで、その行為を止めることが出来た。彼の自傷行為は一度や二度ではなかったのだろう。だがそれを知らないリッチーとエマはただその異常性に恐怖しか感じていなかった。当然だ、「軽口を叩いただけで銃を抜かれた」のだから、誰だって殺されると思うだろう。真意を知らない二人へ、誰に対してもやさしさを持たなくなったそれは、氷の瞳を向けて、リッチーとエマに冷たく、冷たく言い放った。

「遊びは終わりだ」

言葉はとてもまっすぐ突き刺すように二人の心を抉る、目の前にいる金色の髪の男は、自分たちの知るダビデではないと錯覚さえ覚える程に、彼等への態度が変わっていたのだ。続けて淡々と、嗄れた声で呪詛のように吐き捨てる。それはリッチーやエマのようなダビデを知らない者だけでなく、幼い頃からの彼を知っている二人にも向けた言葉であった。

「貴様等は、俺にとって有益な存在になるのか?そうでないのなら、直ぐに俺の所属から離れろ」

そう呟き、抜いた銃をホルスターに仕舞う。黒いボディスーツに黒いホルスター、それはまるで喪服のように漆黒で、まるで誰かの追悼のように、

「Sì」

サンとキースはその後ろを歩く。まるで葬儀への参列のように重く苦しい空気の中に靴音、そして今からの乱戦に備えてマガジンを装填する音が響く。前を歩くダビデは笑顔を見せる事なく早足で抜けていく。ダビデの空気が変わった事がどうしても気になったキースは、小声でサンに訊ねる。

「…あいつ、何かあったのか」

寂しそうな笑顔を向け、キースの瞳に焦点を合わせる事無くサンが答える。

「あったよ、色々ね」

身内をも切り捨てる覚悟、目の前を歩くそれはすっかりと変わってしまった。その理由を知る者はたった一人だけ、当人だけだ。キースは古くからの友人の唐突な変化に戸惑いを隠せない。ダビデの自殺未遂はあの一件、【ニーナの件】の後しか見た事がなかった。恐らくそれに準じた事件が起こったのだろうと推測を立てる。サンもまた【ハイドの件】だろうと思っていた、だが両者ともにそれが見当違いであることに、サングイノーゾもキースも気付いていない。



「…あれじゃ、」

取り残されたリッチーはぼそりと呟く。混乱と恐怖が彼を支配する中、漸く彼はひとつの言葉を口にする事ができたのだ。

「あれじゃあまるで、悪魔じゃないですか…!」



そう、まるでそれは、Diabloのように。
享楽の儘に、享楽を求め過ぎて享楽を感じられなくなったDiabloのように。





     ――主の帰還、或いはDiabloの召喚





「…サングイノーゾ、キース」
「どうした」
「なあに~?」
「…ついてきてくれてありがとう。」
「急に何~?どうしたのさ~」
「…ごめん、二人とも。」

「俺、  死ぬの、怖いってこと、解っちまった」


己の手では誰も殺せなくなってしまった青年が呟いた初めての弱音を、

「…そっかぁ~。まあ、仕方ないよ。」

二人は

「…それが普通だ」

やさしく

「…御免なさい」



赦してくれないと解っていた。





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うおーーーー遅くなりましたすみません!!!!!やっとこさうp!!!
戦闘シーンの表現とか考えてたんですけど大幅カットすることで一件落着!ほんとはあと3人くらい素手でぼこりたかった!!!!←←←←←←←
…しかし改行多過ぎて逆にうつくしくなくて嫌だわ…orz←不必要な改行が苦手

相変わらず不安定な文面すぎて^q^wwwwwwさーせんwwwww
あと心理描写とか捏造すみませんでしたあああああ!!!!orz







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    おまけ
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「なあダビデ?」
「簡潔に」

「お前あの通気口から侵入してきたの?正面から入ってきたほうが良かったんじゃね?」

「だってそっちのほうが謎の構成員っぽさが出てて格好良いだろ」

「格好良さ重視で危険を冒すな。馬鹿か。」
「えっそんな子供っぽい理由なの!?馬鹿なの?」

「ば、馬鹿って言うな!物事にはスマートさってモンはあンじゃねェの!それだよ!」

「スマートさを求めるならもう少しやり方があっただろう。通気口は無いな。馬鹿か。」
「うん、俺も思う。なんか埃っぽいし~臭いし~。着替えておいでよ~お馬鹿さん。」

「…ばかじゃねェし…男なら一度は憧れる事やっただけだし…。でも着替えてくる…すっげェくさい(メω・`)」


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