＜コラム：188＞ 傲慢な発想、いまだに！
【2011年7月26日】
傲慢な発想が、ことここに至っても繰り返されています。
中国の高速鉄道の事故です。
「日本では考えられない事故」という表現がマスコミの至る所でなされています。
たしかに、日本新幹線の運行システムは素晴らしく、開通して半世紀、ひとりの乗客も事故で死なせていません。また、深刻な事故も起こしていません。
しかし、「日本では考えられない事故」という傲慢というか、慢心というか、自らを省みない思考が重大事故を招く根本原因なのです。
私の知り合いのJR幹部の人と、東日本大震災のとき「在来線は線路もぐちゃぐちゃになったのに新幹線事故が起きなかったのは、素晴らしい耐震技術ですね」と話したことがあります。その時の彼の返事は「運がよかったのです」という控えめなものでした。人間が全知全霊を賭けて創っても、しょせんは人間の所業、最後は運を天に任すしかないところがあります。そんな謙虚な姿勢を持っていなければ、とんでもない事故を避けることはできないし、たとえ持っていたとしても事故を起こさない保証にはならないのです。
俗人は「ざまあみろ、俺たちには無縁だぞ」のような反応をするでしょうが、まっとうな人間なら中国の事故に対して「もって他山の石」とするのです。
現に、在来線の福知山線脱線事故では、107名の乗客乗員が死亡する考えられない大事故がつい最近起きたばかりです。
ロサンゼルス大地震で高速道路が崩壊したとき、「日本ではあり得ない事故」と言った矢先に阪神淡路大地震が起きて高速道路が崩壊したのはそんなに昔のことではありません。
520名が一瞬にして生命を失った世界最大の航空機事故、御巣鷹山事故を起こしたのも日本の航空会社とアメリカのメーカーでした。
メーカー、官僚、学者一体となった利権体質のために薬害で一生を台無しにされた人びとの無念さ。日本でなければ陥らない不幸がある･･････
（この際、日本の政治の悲惨さは置いておきます）
そんなことを思っていたのですが、昨日の朝刊で、ひどく無神経な主張を読みました。『朝日新聞』の天声人語欄です。そこにはこの中国高速鉄道事故にふれてこう書いてありました。
「当局は現場検証もそこそこに、運転を再開させた。原因究明の鍵とおぼしき先頭車輌は、運転席ごと埋めてしまった。汚職も絡み、強権体制の下で命を惜しむのは河清をまつがごとし。日本に生まれた幸運を思う」
なんたる傲慢、慢心、無神経！ 百年河清を待つがごとき境遇に落とし込まれている日本庶民のことを考えたことがあるのか！ お前は、ぬくぬくとした豪華な社屋ビルのふかふかな席にいて、東京湾の素晴らしい夜景を見、恵まれた安全なポジションを満喫しながら、「あぁ、おれは幸せだなぁ」と駄文を書いているにしかすぎないのだ！ あんただけが幸せなんだよ!
天声人語氏は、このあと、福島の原発事故に触れてはいるが、海外からの日本への評判を気にしているだけ。福島原発事故で生活を破壊され、放浪生活を余儀なくされている数万の人びと、生きる糧であるあらゆる職業、漁業や農業や酪農を破壊され、政治の悲惨により明日の生活の見通しも立たない数十万の人びと。天声人語氏よ、この人びとに向けて、「日本に生まれて幸運ですね」と言ってみよ！
私の尊敬する中村天風先生には「怒らず恐れず悲しまず」を信条にせよ、と教えられたが、昨日の天声人語には、教えを忘れて無性に腹が立ちました。
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傲慢な発想が、ことここに至っても繰り返されています。
中国の高速鉄道の事故です。
「日本では考えられない事故」という表現がマスコミの至る所でなされています。
たしかに、日本新幹線の運行システムは素晴らしく、開通して半世紀、ひとりの乗客も事故で死なせていません。また、深刻な事故も起こしていません。
しかし、「日本では考えられない事故」という傲慢というか、慢心というか、自らを省みない思考が重大事故を招く根本原因なのです。
私の知り合いのJR幹部の人と、東日本大震災のとき「在来線は線路もぐちゃぐちゃになったのに新幹線事故が起きなかったのは、素晴らしい耐震技術ですね」と話したことがあります。その時の彼の返事は「運がよかったのです」という控えめなものでした。人間が全知全霊を賭けて創っても、しょせんは人間の所業、最後は運を天に任すしかないところがあります。そんな謙虚な姿勢を持っていなければ、とんでもない事故を避けることはできないし、たとえ持っていたとしても事故を起こさない保証にはならないのです。
俗人は「ざまあみろ、俺たちには無縁だぞ」のような反応をするでしょうが、まっとうな人間なら中国の事故に対して「もって他山の石」とするのです。
現に、在来線の福知山線脱線事故では、107名の乗客乗員が死亡する考えられない大事故がつい最近起きたばかりです。
ロサンゼルス大地震で高速道路が崩壊したとき、「日本ではあり得ない事故」と言った矢先に阪神淡路大地震が起きて高速道路が崩壊したのはそんなに昔のことではありません。
520名が一瞬にして生命を失った世界最大の航空機事故、御巣鷹山事故を起こしたのも日本の航空会社とアメリカのメーカーでした。
メーカー、官僚、学者一体となった利権体質のために薬害で一生を台無しにされた人びとの無念さ。日本でなければ陥らない不幸がある･･････
（この際、日本の政治の悲惨さは置いておきます）
そんなことを思っていたのですが、昨日の朝刊で、ひどく無神経な主張を読みました。『朝日新聞』の天声人語欄です。そこにはこの中国高速鉄道事故にふれてこう書いてありました。
「当局は現場検証もそこそこに、運転を再開させた。原因究明の鍵とおぼしき先頭車輌は、運転席ごと埋めてしまった。汚職も絡み、強権体制の下で命を惜しむのは河清をまつがごとし。日本に生まれた幸運を思う」
なんたる傲慢、慢心、無神経！ 百年河清を待つがごとき境遇に落とし込まれている日本庶民のことを考えたことがあるのか！ お前は、ぬくぬくとした豪華な社屋ビルのふかふかな席にいて、東京湾の素晴らしい夜景を見、恵まれた安全なポジションを満喫しながら、「あぁ、おれは幸せだなぁ」と駄文を書いているにしかすぎないのだ！ あんただけが幸せなんだよ!
天声人語氏は、このあと、福島の原発事故に触れてはいるが、海外からの日本への評判を気にしているだけ。福島原発事故で生活を破壊され、放浪生活を余儀なくされている数万の人びと、生きる糧であるあらゆる職業、漁業や農業や酪農を破壊され、政治の悲惨により明日の生活の見通しも立たない数十万の人びと。天声人語氏よ、この人びとに向けて、「日本に生まれて幸運ですね」と言ってみよ！
私の尊敬する中村天風先生には「怒らず恐れず悲しまず」を信条にせよ、と教えられたが、昨日の天声人語には、教えを忘れて無性に腹が立ちました。
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