「新世界より」第十二話の感想です。



※ネタバレします。



◎「新世界より」

「新世界より」 四 [Blu-ray]/出演者不明
¥7,875
Amazon.co.jp


☆第十二話「弱い環」の感想です。


倫理委員会の議長である朝比奈富子に

呼び出された早季たち。

処分を予感し恐れる早季だったが、

富子の口から出たのは思いもよらない言葉だった。




禁忌を幾つも知ってしまった早季たち。

しかし、何故か処分はずっと保留にされていた。

そのわけが今回、富子の口から明かされました。


富子は早季を自分の継承者にしたいと考えていた。

だから、教育委員会に処分の保留をお願いしていた。


早季のメンタルの強さが類稀なものであるため、

富子は早季を失うわけにはいかないと思ったようです。


そして、富子は早季に「悪鬼」と「業魔」についての

記憶を話してくれました。

大人たちが、人間全体が恐れ、忌避するもの。


「悪鬼」と「業魔」。

「悪鬼」とは、「攻撃抑制」と「愧死機構」によって

同胞を攻撃することが出来ないはずの人間達のなかで、

何故か人間を攻撃し、大量殺戮を犯す存在のこと。

「業魔」とは、無意識に漏れ出した大量の呪力が

周囲の物質や生物全てを変質させてしまい、

本人の意志では止められない状態になってしまった

人間のこと。


今までも何度か言葉では説明されていたけれど、

いまいちイメージの掴みにくかった「悪鬼」と「業魔」。

「業魔」に関しては瞬の事例によって具体的なイメージが

湧きやすくなりましたが、今回、改めて説明されることで、

この二つの症例の悲劇がより生々しく理解出来る

ようになりました。


特に「悪鬼」の症例「K」に関する富子さんの記憶。

それまで表面的にはごく普通だった一人の少年が、

突然悪魔のような大量殺人鬼になる瞬間。

その場面に背筋がぞくりとするような恐怖を覚えました。


そして、その悪鬼に対し、「攻撃抑制」と「愧死機構」が

あるために逃げることしか出来ない他の生徒達の様子。

呪力という強い力を持ちながら、その力で身を守ることも

出来ず、その力によって殺されていく・・・。

何とも言えない歪んだものを感じました。


また、「K」の最期も。

どの程度K自身が察していたかは分かりませんが、

医者に薬と言われて毒を打たれ、

獣のような断末魔をあげ、医者も道連れにして死んでいく。

ひどく凄惨でやりきれない場面でした。


悪鬼となった「K」の話だけでなく、

その後に語られた業魔となった少女の話や、

その話を聞いて、記憶はないけれど何かを思い出して

泣く早季の姿・・・。

何もかもやりきれない気分になりました。


悪鬼も業魔も、

それに関わってしまった早季や富子さんのような人間も、

何もかもが悲惨で酷い話だと思います。

歪んだ社会、世界だとも思います。

けれど、富子さん達のように、悪鬼の可能性を潰し、

業魔を消し去って、時には記憶や感情も操作して

平穏を保つ以外、どのようにして社会を維持できたかと

問われると・・・答えは浮かびません。

それがまたひどくやりきれない気分になります。


悪鬼や業魔に対する対応。

全ての人間に備えられている「攻撃抑制」と「愧死機構」。

社会を脅かす可能性への暗黙の対処。

知らずに行われる記憶の操作。

何もかもがこんなに歪んでいて間違っていると思うのに、

ではどうすれば正しいのか分からない。


とてもやりきれない。

なんだか息苦しくなる。

嫌な気分になる話でした。


まあ、

正直、

こういう話、

大好き!!もっとやって!!なんですけどね。






でも、

一番やりきれなかったのは彼でした。

良君。

瞬の代わりにされ、

記憶も人生も書き換えられ、

自分は早季達の幼馴染で、

ずっと早季が好きだったと信じ込まされているうえに、

今回も覚に適当にあしらわれて仲間外れにされる・・・。

ああ、なんて悲惨な・・・。

やりきれない。

とてもやりきれない。

彼に幸あれ。