先輩別れましょうか。


あの困ったような笑顔が瞼を閉じればすぐに浮かんでくる。


好きだった。誰よりも好きだった。

好き過ぎて、いつか壊してしまいそうで

手放したんだ。




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ガッハ______




「あんた馬鹿じゃないのっ⁈」



「んだよ。てか全力で今背中蹴ったろお前っ‼︎



「そんなこと言ってる場合じゃないでしょっ?何で止めなかったの?何でかおるにあんなこと言わせたの?!思ってないことぐらいわかったでしょ?!」




「自分のせいだってわかってるんでしょ?てかあんたがいつまでもグチグチしてるからっ!大好きな癖にっ!いつまでもナヨナヨしてるからっ!」




「なんで?!なんでいいよ。なんて言うのよぉ。なんで、なんでそんな事言ったのよ。馬鹿じゃないの?!」




「なんでよぉやだよぉ。」




「よしよし頑張ったね。おいで、実彩子。」




いきなりやって来て全力で俺の背中に蹴り入れて、誰よりも怒っていよいよ泣きだした忙しいやつ。これでも可愛い大事な俺の妹だ。



「日高もさ、言われなくても自分でわかってんだろ?実彩子の言ってることもわかるよな。」



「あぁ。」



「なら俺はなんも言わない。ただ今日は実彩子借りるぞ。」



まだ泣いてる実彩子を胸に隠しながら。泣いてる可愛い実彩子なんてレアなんだから。やすやすと晒せるかっ!とか言いながらさっさと歩いて行ってしまう西島。



「ちょっ待て!12時までには返せよっ?!泊まりは許さないからなっ?!」



「お約束はできませんお兄さまぁ~。」



「おいっ!!」




香に呼び出されたのは今日の昼休み、普段態々昼休みに呼び出したりしない子だから着信を見た時嫌な予感はしていたんだ。



「えぇ~光啓行っちゃうのぉ~」



「今度穴埋めはしてやるからネクタイ返せ。」



「絶対だよ?」



「はいはい。」


俺が付き合っても変わらずフラフラしていても笑って許してくれる。香の前で女の子と歩いていても、デートの約束をドタキャンしても。香はいつも文句も言わずに笑う。



「あっヒカ先輩。」



また、俺が来ることわかってるはずなのに俺を見つけると嬉しそうに笑ってくれる。


「どうしたの?昼休みに呼び出しなんて初めてじゃない?」



「放課後じゃない方がよかったので。はい。今日は私がヒカ先輩と昼休みの密会です。」



その言葉はさっきまで俺が何してたかもアテがついてるってことで



「先輩別れましょうか。」


ああやっぱり。



……いいよ。」



「いままで、ありがとうございました。」




最後まで俺が見たのは香の困ったような笑顔だけ。


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まっすぐ家に帰る気にならなくて街をふらふら歩いた。どうやって帰って来たかあんま記憶はないけど家に入ると誰もいないのにカレーの匂いがした。




電気をつけるとアルミホイルを被ったカレーの鍋と綺麗に飾られたサラダが冷蔵庫に入っていた。




市販のルーを使わない母さん特製の、元気の出るカレー。態々一旦帰って来て俺のために作ってくれたんだろう。できた妹だ。




俺が12歳実彩子が10歳の時に母さんが病気で死んだ。そこから親父はなんとか男手一つで育ててくれたけど、そもそも転勤の多かった親父と話し合って俺が高校を入学した年から兄妹2人で暮らしている。




まあ年の割に色々あるから、兄妹仲が良くて。




「あいつすんげぇ怒ってたなぁ。」




親友と兄貴と。付き合うことになった時は誰よりも喜んでくれて




昔の事を思い出して、涙が出てきたから。カレーが美味すぎる所為にした。