「実彩子ちゃん…?」
「春嘉さん……。」
会いたくなかった…。
まさかこんな所で会うとも思わなかった。
「実彩子ちゃん久しぶりね。秋が産まれて病院に来てくれた時以来かしら。」
「そうですね…。今度は念願の女の子の雪ちゃんも産まれてなっちゃんがデレデレしてるのが想像できます。」
「そうなの夏樹さんったらもお嫁にやらないとか言ってて気が早いよね。」
ちゃんと、笑えてるだろうか。
「それよりっ!その人実彩子ちゃんの彼?」
「…っいえ!大学時代の友人です。今日何人かで集まっててその帰りなんです。」
春嘉さんと那月が2人無言で挨拶をしてた…。
那月の私を見る目が寂しげに揺れた事に気付けない程鈍感ではない。
「秀太くんから元気にしてるって話は聞いてたけど会えて嬉しかった。また遊びに来てね!夏樹さんも実彩子ちゃんの事俺の大事な妹だっていつも言ってるから。」
「…はい。是非遊びに行かせてください。」
またね!って可愛い笑顔で去っていった春嘉さんはつい3ヶ月前に第2児を出産したとは思えないほど綺麗に髪や爪まで手入れがされていた。
「実彩子…。」
「ごめん…。」
「俺はさ実彩子の事大学の時からずっと実彩子だけ見てるけど。あれが実彩子の答えでしょ。」
「ちがっ…そうじゃないよ。」
「実彩子。いままで俺を好きになろうとしてくれてありがとう。」
「那月…そんなこと言わないで。私…ちゃんと那月のこと「ありがとう。」
「実彩子は優しいから。ああ言えば優しいし実彩子は俺と付き合ってくれるってわかってて言ったんだ。」
「私優しくなんかないよ…。私が那月の優しさに甘えてただけ。」
「弱味に漬け込んででも手に入れたかったんだ俺が。狡いやつでごめん。」
「なつき…。」
「別れよう…実彩子。」
「ごめんっ…。」
「実彩子は悪くないから。」
そう言って抱き締めてくれた那月は最後まで優しかった。
小6の冬お父さんの仕事の都合で修学旅行も卒業製作も全てすんだクラスに転校した。
毎日嫌で嫌で堪らなかった私に
「窮屈やろうけどあと数ヶ月やし、俺とおらん?」
そう声をかけてくれたのが同じくお父さんの仕事の都合で夏休み開けに九州から越して来た秀太だった。
そして私は秀太の家に遊びに行って初めてあったなっちゃんに恋に落ちた。
私より5つ年上のなっちゃんは優しくて笑うとえくぼができる秀太とは違って笑うと顔がくしゃくしゃになる所が大好きだった。
お姉ちゃんしか兄弟がいなくて仲良くなった末吉兄弟に実彩子って呼ばれるたびにくすぐったくなった。
秀太と一緒に同じ中学へ進学したとしの夏休み、秀太と何人かの友達といった夏祭りなっちゃんと女の人が歩いてるのを見た。
私たちを見つけて…。私を見つけていつもと同じくしゃくしゃの笑顔で実彩子って私を呼びながらこっちへやって来たなっちゃんの隣の女の人は同じ高校の人だった。
浴衣似合ってるな。って褒めてくれても可愛いな。ってせっかくセットした髪を撫でてくれても、
私にはなっちゃんと同じその制服が羨ましくて堪らなかった。
「なっちゃん受験生だから夏まつりは行かないって言ってたのにどうしたの?なっちゃん行けるならなっちゃんと来たのに。」
「ごめんな?塾の帰りにみんなで行こうって事になったんだ。来年は一緒に行ってやるから。な?」
2人で来たわけじゃないんだ…。凄い安心した自分に自分が1番驚いた。
帰り道。秀太と2人で歩いてる時、
「実彩子、兄貴が好きなの?」
その言葉で自分の気持ちを自覚した。
実彩子って名前で私を呼ぶ異性はお父さんと親戚以外では秀太となっちゃんだけで、だからだと勘違いしていた。
なっちゃんに呼ばれるから嬉しくて。
なっちゃんに呼ばれるから…ドキドキするんだ。
