「ありがとうでもごめんね?俺大事にしたいヤツがいるんだ。」
この言葉は女の子達から逃げるための体のいい嘘じゃない。ってそれを知ってるのはきっと実彩子以外のみんな。今日2月14日は何だか知らないが日本では女がすきな男にチョコレート菓子を送る日で。
俺にとってこの世でキュウリの次に嫌いなチョコを名前もよく知らない人から手渡され続ける日。ただただ憂鬱だ。女子はみんなキョロキョロしてるし男子は男子でそわそわしてて馬鹿みたいだとまぁ思う。
でも俺にもこの日は楽しみだったり。勿論沢山の子がわたしにくるチョコレート菓子は甘ったるい匂いが気に入らないしぶっちゃけいらないんだけど。今日バレンタインは唯一実彩子が早弁を許してくれる日。
もお何年前だ、甘いもの嫌いなのにチョコレートだらけになって帰る俺に実彩子が手作りのお弁当をくれたのが始まりだった。小3にしてガッツリ胃袋を掴まれた。
それに隠していた甘いもの嫌いがアッサリバレていたのにも驚いた。何よりその弁当の味に感動した。
産まれた時から母さんがいなくて父子家庭の俺はそれまで暖かい食事なんて食べた経験はあまりなくて。それでも俺が好きだからって親父が頑張って作る黒いオムライスは俺にとって自慢だった。
でも実彩子がくれた弁当に入ってたちゃんと黄色いオムライスと味のわかる唐揚げがあまりに美味くて実彩子につきまとうようになった。
「西島くん。ウザいからついてこないで。それに今日西島くんにあげられるエサ持ってないよ私。」
転校してきて半年喋るように(俺が一方的に話しかけてつきまとうように)なってから一週間でこの対応だった。でも実彩子も父子家庭だった事と偶然家が隣だった事もあっていつしか自分と2人分の弁当を作って持ってきてくれるようになった。
昔はたまに塩と砂糖間違えたり可愛い間違いもしてたけど今じゃそのへんの主婦作った弁当よりはずっと美味い。
バレンタインには昼用の弁当だけじゃなくて早弁用にも1つ弁当をくれる。しかし他の日は早弁禁止。
それが実彩子と俺のルールだった。
今年もリクエスト通り唐揚げとオムライス。受け取ったと同時に食べ始める俺。何故こんなにやけになって食べるかって言うと一度他の奴らに取られそうになったことがあるから。
男バスの俺や日高、秀太。後輩の與とか大輝とかもそうだけどかなりモテる。でもああ見えて実彩子は俺らに負けず劣らずモテる。チョコが欲しいやつなんてゴロゴロいるし俺の毎昼の弁当に羨ましそうにねっとりとした視線を送ってくるやつらもいる。
だけどコイツの場合全く自覚がない。まぁ俺が追っ払ってるってのもあるんだけど。とにかく俺のこの弁当だけは誰にも渡せねー。
「あっ勿論実彩子も…。」
「お前何言ってんの?口に出てるぞ。」
「なっふぁふぃいっふぇんだ!」
「っきったねー!飲み込んでから喋れよ。おい宇野っコイツキタねー食い方するから明日から作ってこなくていいぞ。」
「えっ?ほんと?やったー。睡眠時間増えるぅ♡」
「ダメっ!!俺の昼飯っ!」
「ふっ。西島どんだけ必死なの?笑笑」
「心配しなくてもあんたのエサなら作ってあげるからー。安心しな。」
「にっしーのバーカ。」
「お前さぁ。もっと他に言うことあるだろ。」
「馬鹿か、マジで宇野誰かに取られても知らないぞ。」
俺の気持ちを知ってる奴らにはとことん怒られる。
「はぁっ…。」
「え、西くんお腹いっぱいなら俺食いたーい。」
「秀太っ!!ダメに決まってんだろ。」
「ふーっお腹いっぱい。美味しかったぁぁぁ!!」
「西島うるさい。」
「てか実彩子今日の唐揚げめっちゃ美味かった。なんか変えたの?昼のにもはいってる⁈」
「あーお醤油変えたかも。おばあちゃんが送ってきてくれたから。うんそう言うと思ったからお昼のにも入ってるよ。」
「あぁキミちゃんとこの醤油俺ん家にもちょーだい。」
「宇野のばぁーちゃんキミちゃん
呼びとかもはや恐ろしいよな。」
「もおなんか公認だよね。
当人達が動かないだけで。」
「え、やだよ。結局西島が食べるもの作ってるの私じゃん。西島家にあってもだれも使わないし。量が減る。」
「確かに。うん。やっぱいいや。実彩子の料理食べる。」
「っ// …。そっ。」
「宇野もなぁー。変なとこ不器用だからなぁ。」
「なんの話?」
「ん?あーいや。こっちの話。」
「てかお前マジで早いとこ告わねーと俺ら卒業だからな。あと何日通えると思ってるんだよ。宇野狙いのやつみんなが焦ってるぞ?」
そう、高3の俺達はもお1ヶ月もしないで卒業する。小学校から一緒の実彩子と俺も大学は別だから。
どんなに実彩子の事を好きな奴が沢山いたって。そいつがイケメンだろうが長身だろうが実彩子の好きなスイーツ男子だったって。
俺だって実彩子が好きなんだから渡さねぇ。
ガタンッ____
「だからお前さぁほんと「実彩子っ!!」
「っ何⁈どうしたの。」
「今日俺に放課後付き合って。」
「えっ?!別にいいけど…。」
「約束なっ⁈」
「うん…。」
不思議そうな実彩子とやっとかって顔の3人が俺を見た。

