心の磁力の活用(具体策 29 コンプレックス再考 11) | 芸能の世界とマネジメント

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芸能界、芸能人のために論じます。

前回は人の精神状態を吟味する場合、まずは己の精神状態を知ることが大切だと論じました。自分と客体との相性が合わない場合、これは果たしてどこに原因があるのだろうかと考えることが必要であります。原因というような書き方をするとユング派から大変なおしかりを受けるのでもう少し詳しく説明しますと、原因は両者にあるというのが正解であります。

 

ここでまずタイプ論を使って吟味していきましょう。ユングはタイプ論において人間の心の基本的な構えとして「外向型」と「内向型」とに区分しました。ここに心的機能として、思考、感情、直観、感覚とに機能面を区分し、外向型と内向型のそれぞれに心的機能が加わり、合計で8つのタイプに類型化したのがタイプ論の概要です。まず、外向型の主たる特徴は、心が客体に向かって行くことであり、内向型はこの逆です。要するに、外向型と内向型とでは心のあり様が180度違います。ですから、職場で外向型の人と内向型の人が一緒に仕事をすることは難しく、生産性が上がりにくくなるという仮説を導き出すことができます。外向型の人はまずは客体に向かって心が進みますから、例えば、本に書いておることを忠実に解釈することが得意な人で、ゆえに、学者などが適職となります。但し、あまりにもこれが行き過ぎると、論文のデータの捏造などを行う傾向にあり、ここが欠点であります。逆に内向型は客体をとらえる際に、自分の心の内側にまで思いや印象を取り込み、あくまでも主観的に判断することに特徴があります。ですから、芸術家などが適職となり、欠点としては、非常にクリエイティブな割に、性格はネガティブとなってしまう点です。

 

ある日、職場の上司から2人でチームを組み、あるプロジェクトを行うことになりました。しかしながら、残念なことに、命令されたAさんは外向型、Bさんは内向型の人でした。心のあり様が180度違うわけですから初対面から意見が食い違います。そして両者ともにこのように思うのでした。「なんやこいつ?頭おかしいのとちゃうか?」。しかしよく考えてみてください。両者ともに心の基本的態度が異なるわけですから元々意見が合うわけがありません。彼らの意見が合うときがあるのか?というと、100%の確率でありえないです。もしそのようなことがあったとしても、それはどちらかが妥協をしている時であり、わだかまりがある状況の中での業務遂行となります。これはコンプレックスですね。非常にコンプレックスな状況です。では、この場合はどのようにすれば解決へと導かれるのでしょうか。源流をたどると外向型と内向型の従業員を平気な顔して組み合わせた上司にそもそもの問題があるのですが、心理学の専門的な知識を持った現場の実務家などほとんどいませんから、そこは目をつぶるとして、AさんとBさんの間でどのようにこの問題を解決するかといえば、まずは、Aさんは外向型の人間であることを自覚することから、Bさんは内向型の人間であることを自覚することから入っていき、お互いが180度違う心のあり様であるから、そりゃ、意見が食い違うのも当然だとお互いが理解するしかありません。しかしながら、お互いが自分たちが違う立場の人間であることを自覚できれば、コンプレックスが解消されるわけです。

 

これを芸能人に当てはめて考えてみると、芸能人というのは基本的に外向的な人間でなければなりません。客体に向かって走り続けなければテレビカメラは逃げていきます。しかしながら、日本人の多くは内向型の人間であるという学会の認識であります。ということは、まさにここで「矛盾」という状況に出くわすわけです。これを克服するにはどうするか?なのですが、これは理論では簡単なのですが、実践では難しいのです。結論から言えば、外向型の人間が内向型の人間を徹底的に知ることです。外向型の人間が内向型の人間になりきるくらいの覚悟が必要になります。そして、ここで重要なことにお気づきの方がいらっしゃるかと思います。それは、外向型は外向型、内向型は内向型というベストな組み合わせは、磁石で表現するとプラスとプラスとがベストとなる結論付けとになります。さて、この逆説をどのように解釈するのかを今回の宿題とします。

 

この論文を読んで何らかの参考にしている読者の皆様方は絶対に、一度はご自分でこの件について考えてみてください。予習は非常に大切です。次回をお楽しみに。