心の磁力の活用(具体策 26 コンプレックス再考 8) | 芸能の世界とマネジメント

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芸能界、芸能人のために論じます。

前回は今シリーズの5シリーズ目における設問の二番目を論じました。今回は最後の三番目の設問を論じていこうと思います。その設問ですが・・・

 

有名になるまで時間がかからないか。

 

これは切実な問題ですね。実務家の人から特に強く質問されるのがこの、「短時間で簡単に・・・」であります。これまで述べてきた方法は私からするとものすごく簡単な方法であり、なぜできないのか不思議に思うのですが、心理学に免疫のない人々にとっては難解で時間のかかることであると感じております。ではなぜそうなるのかですが、ユング心理学というのは心理療法の現場から生まれてきた理論ですから、心がおかしな状態になっている人を直視し、その原因を探っていかなければなりません。また、教科書にはその方法が詳しく書かれております。しかし、その教科書を読んで勉強する人は健常者であるため、ここにねじれが生じ、よほどのことがない限り理解ができない状況となります。換言しますと、「気のおかしい人の気持ちを健常者が理解し、気持ちを正常な方向へ戻してあげる」という覚悟が必要となります。これができれば短時間で立派な芸能人になれるかと思います。

 

これとは逆に、そのようなことはやはり無理だと感じる人には無理でしょうし、心理学の勉強をすることに対して気は進まないものの、有名になりたいがゆえに心理学の勉強をしていこうとする人も時間はかかるでしょう。私が提唱する方法で時間のかかる人のもう一つの特徴は、自我が強く作用している人もその傾向にあるように思います。有名になりたいという自我が強すぎてコンプレックスや元型をうまく利用できないような人は結局のところうまくいかないことが多いです。要するに、自我が答えとなってしまいますから、自我の赴くままとなってしまい、これまでの経験や集合的な没個性化を組み込むことができず、いわゆる「孤立」という現象が起きてしまいます。簡単に表現すると、ただ単なる「目立ちたがり屋」になってしまいます。こうなると再起することはかなり困難となるでしょう。

 

では、心理学の臨床の経験がない人がどのようにして成功をつかみ取るのかですが、これはただの一点を貫くしかありません。それは「勇気」です。これまで何度も指摘しておりますが、ステージに立つときは主体と客体との作用が非常に重要となります。具体的な内容は何度も論じておりますが、ここでもう一度、復習をしてみたいと思います。

 

1:まず、ステージに立つ主体は客体に対して「同化」しないといけません。これは換言すると「没個性化」であります。これができなければ客体は受け入れてくれません。当たり前の話ですが・・・

 

2:次に、ステージにたつ主体は客体の個性を否定しなければなりません。換言すると個性的な主体といいます。これも当たり前の話ですが、客体と違うから客体は主体を観覧しているわけです。客体と主体が全く同じであれば、わざわざ会場にまで足を運ぶ必要はありません。

 

3:客体を軸にステージを見るとこれと逆のことが起こっておりまして、個性的な主体を見たいわりに、心理的には閉鎖的な状態です。要するに、受け入れ態勢に関しては閉じられている状態です。ゆえにステージに立つ主体はこれを打ち破っていく行動に出なければなりません。

 

そして、ステージに立つ人や、それ以外の人でも、政治家にしても企業の営業の人なども含め、外に出ていこうとする職種の人が特に気を使わないといけないのが、1の話です。特に芸能人は目立ちたい人が多いがゆえに、「没個性化」に対して異常なほどの恐怖心を覚えるものです。人前に出ていくことが得意なのは理解できますが、その気持ちをコントロールし、没個性化しない限り、マーケットは解放されません。非常に勇気がいることで、芸能人によっては恐怖以外の何物でもないでしょうけど、覚悟をもってやるしかありません。没個性化が大きなキーワードです。

 

次に、人前に出ることが苦手であるにも関わらず、有名になりたいという人ですが、これについてはまずは人前に出ていくしか方法がありません。これも勇気がいりますね。このような人に必要なのは打たれ強さでありまして、前述の人前に出ていくことの得意な人と逆の行動をとらねばなりません。ですから、まずは独りよがりになることから始めてみてはいかがでしょうか?勇気がいりますが、そこは我慢して耐えるしかありません。頑張りましょう。

 

前述二つのタイプの人に共通するのは、やはり自我が強い人です。頭でいろいろと考えすぎるがゆえにステージがうまくゆかない人の典型例であります。人と違ったことをやる・・・それが差別化・・・なのに売れない・・・という芸能人の方、一度ご自分の心理状態を見直してください。道は開けていくはずです。

 

このように見ていきますと、難しいことはさておき、「勇気」をもってステージ上での「恐怖心」と対峙することができれば、私が提唱する方法で、短時間に自分を売っていくことが可能であるはずです。但し、何度も繰り返しますが、それには勇気がいります。そして、前述の主体と客体の絡みの例からお分かりのように、主体が恐怖と思っていることは客体にとっては「エンターテイメント」であり、要するに、主体が恐怖や恥と思っていることは主体が勝手にそう思っているだけの話であり、客体からするとむしろそれを受け入れる体制であることを主体は感じ取らなければなりません。もっと言うと、恐怖と感じているのは主体だけの話ですから、堂々とステージに立つことをお勧めします。

 

最後に、舞台での恐怖心(良くも悪くも)が無くなり、ある一定の評価を得られたのなら、あとは意識と無意識とのレベルの中庸を心がけましょう。これを繰り返すうちにユング心理学が手に取るように理解できるようになります。こうなると好循環です。面白いほどに人の心が読めてきます。そして、どのステージに立ってもお客さんは味方となってくれます。このように考えてみると、ステージ上でのパフォーマンスの方法は一瞬にして変えることができますが、それを変えることに対する意識を改革することの方に時間がかかるものと思われます。これは心理学的には「退行」という現象でありまして、意識的には何かを変えないといけないと思っていても、個人的無意識がこれまでの経験則からして新しい方法を否定するときなど、この退行が起こります。しかしながら、退行は長くは続きません。収まった段階であたらなる企画への実行へ移していきましょう。

 

以上で3つの設問を論じ終えました。ステージ慣れしている人は「没個性化」、ステージ慣れしていない人は「個性化(ここでは目立ちたい自分と解釈してください)」を意識することによって、時間短縮ができるのではないかと考えております。しかしながら、退行という心理作用があるため、これを逆算して事を進めることをお勧めします。退行は必ずしも起こるわけではありません。退行しない人なら、次回のステージでいきなり自分を180度変えることも可能であるはずです。

 

それでは、皆様方の幸運をお祈りします。このシリーズ、コンプレックスのシリーズはもう少し続けようと思います。来月をお楽しみにください。ご高覧、ありがとうございました。