心の磁力の活用(具体策 24 コンプレックス再考 6) | 芸能の世界とマネジメント

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中身のある人間とよくいいますが、これは本来的にどのようなことを意味するのでしょうか?ということを考えたことがあるでしょうか?という二重の質問を投げかけているのですが、勉強はできても人間的にダメとか、高い社会的地位にいながらにして嫌われている人物というのをよく見かけるかと思います。また、企業にお勤めの方ならば、上司が中身のない人間だと感じている人も多くいるかと思います。この「中身」ですが、これを心理学的に翻訳すれば、個人的無意識となります。これが実際に自我の方へ作用しだすと「コンプレックス」となるのですが、要は、主体の個人的な履歴が蓄積されているのが個人的無意識となります。人間は生きているとそれなりの履歴は蓄積されていきますが、ただ単に生きているだけでは「豊かな」履歴は蓄積されません。勉強だけを行い、それ以外のこと、例えば、自然科学者になろうとしているにもかかわらず、自然に接したこのない学者や、経営学者であるにも関わらず、企業経営を経験したことがないなど、このような経験不足であるにもかかわらず高い地位にある人はこの世に大勢いらっしゃいます。このような方々が一般の人の前に立つとき、多くの人は、「?」という印象になるかと思います。言っている内容はわかるが、言葉が軽いという印象です。しかしながら、その人は自分たちより上にいるのはなぜか?と疑問に思うことも多いかと思います。この原理については、要は経験不足、個人的無意識の層が成熟していないからであるといえるのですが、このシリーズを終えてからじっくりと説明することにして、今回は実践的なコンプレックスの活用法を解説してまいります。

 

前回はいろいろと論じた後に3つの課題を提示しました。本日はそのうちの1番をやっていこうかと思います。その課題を引用しておきますと、

 

一番最初の布置は正味の身内を使うことができても、他の地方ではどうするのか。 

 

前回は芸能人として自分自身を商品化し、売っていくにはどのようにすればよいのかについて、心理学的に考えてみたのですが、そこで活用すべきは「布置」であると述べました。布置というのはここで経営の実践の言葉で言い換えますと、「パッケージ化」となります。要するに、主体と身内と身内以外のファン層を一つにまとめパッケージ化することにありまして、このパッケージ化したものを他の地方へ売り込んでいく形になります。地元では有名であっても他の地方へ行くと無名となりますから、地元以外では一から信用を築かなければなりません。しかしながら、そのような時間はありませんから、あらかじめパッケージ化された信用を他の地方へ持ち込み、一気にファンを取り込むという作戦を行えばよいかと思います。企業であれば、融資を受ける際に預金通帳の原本が提出書類の中の最重要書類となり、最大の信用となりますが、芸能人はファンの数で勝負をすることが一番の信用となります。では、その地元のファンの数を他の地方の人に証明するにはどうすればよいかといえば、これは、まず、演技や演奏が他の演者と比較してズバ抜けてうまいことは基本的なこととして、重要なのはそれ以外に、ネットやマスコミに情報を公開しないことであります。

 

これは通常の考えとは逆の考えで驚かれるかもしれませんが、最初に演技や演奏を見てもらう場には目の肥えた人しか集まらない場所となります。演技や演奏にあまり興味のない一般層にいきなり見てもらうわけではありません。ですから、演技や演奏の善し悪しは一目見れば判断してくれますし、また、場慣れしていることも瞬時に見抜いてくれます。そして、そのような状況となった時、当然のごとくネットで情報を調べようとします。ところが少しの情報はあるものの、ほとんど情報が出てこないとなると、明らかに何かがおかしいことに気づいてくれます。「非常に高い技術をもち、場慣れしているにもかかわらず、情報が出回っていない」となると、そこにいるプロたちは次にこのように考えます。

 

「きっと、多くのファンがこの人たちの情報を出回らないようにせき止めている。そのくらいに強いきずなと多くのファンを取り入れている」

 

このように判断してくれます。これが信用となり、他の地方での「布置の核」となるファンを獲得できるようになります。この核となる布置を拡大させ布置を大きくし、それなりに成長したところで次の地方へ巣立っていくというサイクルを繰り返すうちに主体は大きくなるという構図です。

 

ではなぜネットに情報公開すると売れにくいのかというと、その人の「布置」が丸見えになるからです。これまで私の論文を全て通読している方ならお分かりかと思いますが、人間には表と裏が必ずあります。そして、人間関係にも表と裏があります。その「裏」の部分が見えないところに人間としての魅力が増すわけです。ですから、ネットですべてを公開するとその人の影やペルソナが全て剥がれてしまい、人間としての魅力がゼロとなり、逆に信用がなくなり、売れにくい状況を作り出してしまいます。例えば、全裸の警察官を考えればよくわかります。全裸の警察官と制服を着た警察官がいて、道を教えてもらうのにどちらの人物に尋ねますか?ということです。ファン層の布置という問題でいえば、表立って宣伝をしてくれるファンがいるなかで、主体をしっかりと守ってくれる、縁の下の力持ち的なファンがいる状況の中で、では、その縁の下の力持ちなるファンを一目見てみたいと思うのが人情であり、こうなるとファンもタレント化し、ともに仕事をするパートナーとなり、より良き関係を構築していくことが可能となります。

 

まず、地元で成功し、それなりの評価を得ることができたのであれば、とにかく、必要最小限の情報を流すにとどめ、ファンにもその旨を伝えておくことが必要です。例えば、バンドのホームページは作ったほうが良いです。しかしながら、細かなライブの情報や活動履歴などは隠しておいたほうがよく、ファンがツイッターで情報を拡散するなどはご法度であります。このように厳重な体制をひいても情報が拡散される場合、ご自分の個性が足りなかったということになり、また一からやり直しとなりますが、失敗は成功のもとともいいますから、成功するまで根気強く頑張りましょう。また、この方法はまず、地元で成功する必要があります。これから何か事を起こそうとする人にはこの方法を使うことはできません。しかし、これから事を起こそうとする人は土台が真っ白ですから、そこを活用し、情報の流し方に細心の注意を払いながら活動を行えば、後の行動が楽になります。

 

以上が前回の課題の一番目に対する回答です。一言でいえば、主体にも集団にも「表と裏」を作ることが大切であるということです。逆に地元では表も裏もありませんから、他の地域で活動するときに表と裏を作ることがとても難しく感じるでしょうけど、例えば私を見てください。学者という表の顔とミュージシャンという裏の顔、そして裏の顔を知る人は私のファンしかおりません。このように、常に表と裏の二重構造を意識し、活動していけば新たなる道を開いていける可能性が高くなるかと思います。

 

次回、来月となりますが、残りの二つの課題について解説をしていきたいと思います。ご高覧、ありがとうございました。