実は結語を二つ書こうと思っていたのですが、すっかり忘れて結語の最初の半分しか書いていないことに気づき、今回は番外編として書くことにしました。この結語で一番重要である部分、そうです、LinQが今現在どの戦略を選択して、どのような結果となり、その将来展望はなんでしょう?というものをやっていこうと思います。
まず、本編の中で少しだけ触れておりましたが、現在のLinQは「慣習的イノベーション戦略」を選択しております。この慣習的イノベーション戦略はフランク永井先生やブルーハーツの例からすると大成功への切符だと思われがちですが、実はそうではないからくりがあります。
LinQのまず、ビジネスモデル面から見てみますと、これはAKB48のやり方と同じです。劇場に行けば誰でも直接会えることができる普通の女の子集団、とにかくCDを買ってもらい特典をつけ、さらに顧客を魅了するなど、一般的なアイドルのビジネスモデルです。
技術面からみれば、まだ地方にアイドルが根ざしてなく、既に全国制覇していたAKB48と比べると、非常に激しく、かつ、技術を必要とするダンスや歌を披露しておりますが、これはすでにピンクレディーに代表される「アイドル」が行っており、その意味で慣習的イノベーション戦略を選択しているとなります。この慣習的イノベーション戦略は前述のとおり、大成功を収めるための重要な意思決定であるかと思われるかもしれませんが、原文では「ルーティン」と呼ばれておりまして、同じことをひたすら繰り返す戦略の方法です。もっというと、「機械になってください」ということであります。その機械に間違った関数をプログラミングすると、半永久的に間違った解答をだします。これが慣習的イノベーション戦略のもっとも怖い部分です。
LinQの皆様方は九州発、日本全国からの世界へ!という大きな目標をお持ちです。何を隠そう、この私は東京から福岡にやってきて、ブレイクした地はその福岡。そしてもう地方と東京を掛け持ちながら海外でも活躍しております。この違いは何かというと、元々の戦略の違いというのもあるのですが、慣習的イノベーション戦略で歩む場合、「素人でもわかりやすいもの」を永久的に提供し続けることが成功の条件となります。この地球上にいる人のほとんどは芸能に関して素人です。ですから、たくさん売るにはこの素人さんを相手にしないといけません。そこで大切なのは、「わかりやすさ」ということになります。5年たっても福岡ローカルであるLinQの現実を見ると、技術が卓越しすぎて、素人さんにはわかりづらい傾向にあると思います。すごいテクニックを永久的にやり続けるとマーケットの需要をはるかに追い抜いてしまい、逆に売れません。そこで、レベルを落とし、ニーズを探り、そこに合わせ、そしてあとはルーティンとなるのですが、デビューして既に5年、かなりの費用と年月がつぎ込まれた現在において、さらに時間とマーケティングの費用をかけて調整するのは非常に不利であると、通常は考えます。そこで、戦略の変更を行えばどうかというのが、本編で議論したことでありました。
比較的負担が少なく移行できそうなのが「破壊的イノベーション戦略」だと述べました。これはダンスの技術をそのままに、ビジネスモデルを変えるという手法です。音楽業界ではパールジャムの例を参考にしていただきたいのですが、やはりファンクラブのあり方を変えるだけで随分と違ってくると思います。メジャーデビューしているので、縛りが多く、そんなことできるか!!となる場合、思い切ってメジャー契約を切ってしまうのも手です。そうするだけでビジネスモデルは一変します。手売りというのもいいものですよ。メジャーでいるよりも儲かるのでは?と思うくらいです。あくまでもトータルな費用面での話ですが・・・
このあたりで番外編は締めようと思います。いろいろ書きましたが、一番重要なのは戦略というよりも、芸能人であることは何かを常に自問自答することだと思います。ある意味、芸能人は仏の領域に達しないとできない職業だと自分自身が芸能界を体験して思っております。他力本願。これは私が好きな仏教用語です。これは決して「他人に身を任せる」ことではなく、身の回りの人々に自分が生かされているという意味です。自分たちがどのような状況にあってもそれは「生かされている」状態であり、その分、自分自身がしっかりとしないと他力本願は実現しないのです。経営学では差別化戦略、深層心理学では自己実現などで語られる領域ですが、不思議と仏教用語での方が理解しやすいと感じております。
ご高覧、ありがとうございました。