高校生偏⑧

 

全国高校サッカー選手権大会の予選に向けて

広島県に遠征をしていました。

 

そこでまさかの出来事が起こりました。

チームのエースが大怪我を負い、

戦線を離脱することになりました。

 

チームには衝撃が走りました。

エースが試合に出られなくなるのはかなり痛手ですし、

不測の事態となりました。

 

それでも、私たちの目標は変わりませんでした。

「やるしかない」——その言葉を胸に、前を向いていました。

 

代わりに出場する選手には、

計り知れないプレッシャーがあったと思います。

 

それでも、練習と練習試合を重ねながら、

少しずつチームは形を取り戻していきました。

 

この高校を選んだ理由。

厳しい練習に耐えてきた日々。

そのすべてが、私たちを支えていました。

 

そして迎えた大会。

エース不在の中でも、私たちは準決勝まで危なげなく進みました。

準決勝では気負うことなく、リラックスをして試合に入れました。

 

みんながいつもどおりのプレーができたので、

終始試合を支配できました。

終わってみれば10-1の圧勝でした。

 

そしていよいよ、決勝戦。

会場には多くの応援団が駆けつけてくれました。

その声援は、私たちの背中を強く押してくれました。

 

しかし、「絶対に勝たなければならない」という空気が、

逆に私たちを硬くしていました。

 

試合開始から動きは重く、ミスが目立っていました。

落ち着いてできるはずのプレーも、噛み合わない。

 

それでも先制点を奪い、少しだけ安心しました。

しかし、それでもなかなかいつも通りの試合運びが

できなかったので、すぐにミスから失点をしてしまいました。

 

私はゲームキャプテンとして、

必死に声をかけてチームを落ち着かせようとしていました。

 

後半に入りやっとリズムを掴めてきて、

私が起死回生のロングシュートを決めて勝ち越しました。

イメージ通り打てて、すごく気持ちのいいシュートでした。

 

会場の応援団も盛り上げてくれて、

これならいけるという雰囲気になりました。

 

しかし、まさかの事態に…

得点を奪った数分後にまたも自分たちのミスから

失点をしていまいました。

 

いつもなら考えられないようなミスでした。

同点に追いつかれてかなり動揺しました。

 

そして焦る気持ちばかりが勝り、

ベンチのスタッフやピッチの選手は冷静さを失っていました。

 

怪我が完治していないエースが途中出場するも、

流れは変わりませんでした。

そして試合は延長戦へ。

 

体力には自信があった私たちは

「絶対に勝てる」と信じていました。

 

延長に入ってからは怒涛の攻撃で相手ゴールに迫りました。

相手ゴールキーパーのファインセーブがあったり、

シュートがゴールポストに当たるなどで、

なかなか得点を奪うことができません。

 

そして…

延長後半にまたも自分たちの連係ミスから失点をしてしまい、

それが決勝点となり、2-3で敗戦となりました。

 

 

 

終了のホイッスルが鳴った瞬間、その場に崩れ落ちました。

優勝を目指してここまでやってきたのに、

勝てなかった悔しさや、ゲームキャプテンを任されて

みんなを引っ張り切れなかった無念さ。

そして、私たちの応援をしてくれたみんなに

申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 

色々な感情がこみ上げて来て号泣していました。

私は大会の優秀選手に選ばれましたが、

勝てなかったので素直に喜べませんでした。

 

表彰式のあとはなかなか切り替えることができず、

あの時もっとこうしておけばよかったなど、

後悔や悔いばかりが、頭の中に浮かんできました。

今までで一番悔しい試合でした。

 

この悔しさは来年に…

と思えるまでは少し時間がかかりました。

 

高校生偏⑨につづく

 

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