高校生偏⑥

 

初めての全国大会。

悔しいことやつらいことに歯を食いしばってやってきて、

みんなで勝ち取った全国大会。

 

「自分たちはどこまでできるのか」

そんな期待と楽しみがある一方で、

経験したことのない世界への不安もありました。

 

開催地は、夏の暑さが厳しい宮崎県。

登録メンバーは数日前に出発し、

福岡県で合宿と地元チームとの練習試合を重ね、

その後、宮崎に入り数試合の調整を行いました。

 

ここまでは、これまでの遠征と変わらず、

緊張もありませんでした。

しかし、会場での前日練習に向かったとき、

空気が一変しました。

 

会場の雰囲気を感じて緊張感が増していました。

開会式では、全種目の選手たちが集まり、

その人数と熱気に圧倒されました。

 

秋篠宮殿下ご夫妻も出席していて、

私たちは浮足立っていました。

 

宿舎に戻ると、そんな私たちの様子を見たコーチから、

気を引き締めるための喝が入りました。

 

 

 

初戦の相手は、全国大会の常連校。

私たちは挑戦者として、ただ精一杯やるだけでした。

 

しかし、会場の雰囲気に呑まれ、

試合開始から思うようにプレーできませんでした。

 

相手が強かったこともありますが、それ以上に、

自分たちの心が整っていなかったのだと思います。

 

いつも通りのプレーができず、焦りが連鎖し、

結果は0-4の完敗。

全国大会の壁の高さと、

自分たちの未熟さを痛感する試合となりました。

 

遠くまで応援に来てくれた親や仲間に、

申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

それでも私は心に誓いました。

「もう一度、この舞台に帰ってくる」と。

 

右手のない障がい者が健常者と同じようにサッカーで

全国大会に出場した選手は他にいるのだろうか?

もしかしたら私だけかもしれません。

こんな自分でもやればできる、

もっともっと強くなりたいと思えた大会でした。

貴重な経験ができたと思います。

 

高校生偏⑦に続く

 

心理学や脳科学を学んだからわかりますが、

大舞台になればなるほど、

メンタルが大事だということです。

私は、自分の今までの経験と知識で、

選手がいつもどおり力を発揮できるように

サポートしています。

 

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