以下、完レポになりますで未プレイの方や、
ネタバレが嫌な方は即Uターンしてください。
また、あくまで私が選択したものであり、
結果を保証するものではありません。
選択肢は載せていません。
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秀吉に連れて行かれた城で、私はいいなずけの織田信長様にはじめて出会った。
私が大人しくしていれば神威家には手を出さないーー。
その約束を信じ、私は信長様のもとにいることを決めた。
秀吉も侍女も去り、一人部屋にいる私のもとへ信長様が訪れた。
信長「見違えたな。俺のそばに置いておくにふさわしい」
着飾った私の姿を、信長様は満足そうに眺めている。
(信長様にとって私は、神威家と同盟を結ぶための人質としての価値しかないのだろう)
(女は所詮、ただの政治的道具に過ぎないのだから)
(けれど、せめて私は男として生きてきた自分を誇りに思いたい)
「私には男の姿が似合っていたと思います」
信長「ほう、どうしてそう思う」
信長様は私の相手をするのも面白いと思ったのか、興味深げに私を見る。
「私は男として生きて参りました。このように命令されて女の姿をするのではなく…」
「私自身がそうなりたいと願ったときに、はじめて女として生きたいのです」
信長「今はまだ、俺のもとで女として生きたいとは思えないと?」
「はい…」
私がきっぱりと答えると、信長様は低く笑った。
信長「ふっ、すがすがしいほどにはっきりした物言いだ。さすが、いいなずけ殿」
信長「誰にも臆することない気高き心を寺で学んだとみえる」
「……」
信長様は私の目を見据えながら、近づいてくる。
私はひるまぬように自分を奮い立たせ、目をそらすまいとした。
(なにかしようものなら…)
私は懐の小刀を確かめた。しかし、ふわりと頭に置かれた手のひらの温かさに、思わず目をみはる。
見つめられた瞳の中に、いつもの鋭さはなく、優しい光だけが揺らめいていた。
信長「安心しろ。 何もしない」
(この方は…本当はお優しいのだろうか)
「…なぜ死んだことになった私を探していたのですか?」
頭に浮かんだ疑問が、そのまま口からこぼれていた。
(私が寺に預けられた後、死んだという知らせは信長様のもとに届いたはず)
(ならば、なぜ私を探そうとしたのだろう)
信長「勘というやつだ。お前が死んだという知らせは、あまりにも唐突で、とても信じられなかったのだ」
「それだけの理由で…?」
信長「十分であろう。ずいぶんと時間はかかったが、お前が生きていることを突き止め、会うことが出来た」
「神威家を問いただしたりはしなかったのですか?」
信長「俺の気が済めばそれでよかった。事を荒立てる必要はない」
(信長様は無益に人を傷つける人ではないのかもしれない…)
信長様はぎこちなく髪を撫でる。
信長「祐美…」
信長様が見せた優しさに私は戸惑っていた。
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信長様がお帰りになって、やっと息をつく。
(信長様はいいなずけとして、私に歩み寄ろうとしている…)
(しかし、私には信長様と夫婦になる覚悟は出来ていない)
私は一人ため息をついた。
(この戦乱の世では、意にそぐわない相手に嫁ぐことは当たり前のことーー)
(それが、家と家とを結ぶ一番の硬い契約となるのだから…)
(わがままかもしれない。けれど、どうしても頑なに譲れないものが、私の中にある…)
男として暮らしてきたせいなのか、それとも相手が信長様だから抗ってしますのかーー
(近頃の私は、自分の心すらわからなくなってしまったように、心細い気持ちが消えない…)
心を落ち着けるように、寺にいた時の思い出を頭に描く。
(剣術と勉学に励む日々ーーしかし秀吉と出会い、初めて友人ができた)
(畑仕事をして、待ちへ出かけたりもした…毎日が楽しかった)
(秀吉は剣の稽古にも付き合ってくれた。あの時はまさか秀吉が実力を隠していたとは知らなかった…)
寺から連れ出された時の、秀吉に刀で打ち込まれた痛みまでもを思い出し、私ははっとする。
「--っ! 私はなぜ秀吉のことばかり考えて…」
(すぐに約束をたがえるお調子者で、口先だけの軟派な男のことを、こんなに考えてしまうなんて…)
信長様に「サル」と呼ばれていた秀吉を思い出す。
(サルというあだ名がぴったりだ)
(あれから、部屋にたずねてきても。くれない 世話役なのだから、もう少し顔を見に来たっていいのに…!)
「…あのバカザル!」
秀吉「…ははっ、そりゃ参ったな!」
「秀吉! いつから!?」
襖を開けた秀吉は、おなかをかかえて大笑いをしていた。
秀吉「はははっ! そのバカザルって俺の事だよなぁ」
「そうだ。お前以外に誰がいる」
怒ったように言っても、秀吉の笑いはおさまらないようで、目には涙までためて笑っている。
秀吉「あはは、そうだよな。サルって俺しかいないよな」
「はぁ…。変なことを言って悪かった」
秀吉は私の顔を見て、にっこりと微笑んだ。
秀吉「いいよ、気にするな」
秀吉は、急に私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「うわっ、何を…!」
秀吉は私を見て目を細める。
まるで愛おしいものを見るような優しい瞳に、ふわりと心が温かくなる。
(この笑顔を見ると、すごく安心する。どうしてだろう)
そっと秀吉の手に触れた瞬間、私はその手の感触がとても恋しかったのだと気づいた。
(私は秀吉と会えなくて…さみしかったんだ)
秀吉「ば、馬鹿!お前どうして泣きそうな顔をしているんだ」
「泣きそうな顔などしていない。 それに、バカザルに馬鹿と言われたくない…!」
秀吉「うわっ、泣きそうかと思ったのに、急に怒るなよ」
「泣きそうじゃない…!」
私は恥ずかしさで、怒ったふりをしてふいっと顔をそむけた。
秀吉「まあいい、今から俺の猿芸でお前を笑顔にさせてやる」
「猿芸とは何だ?」
秀吉「お前を笑わせる芸をしてみろと、信長様がおっしゃったんだ。 だからお前が笑うまで頑張るからな!」
「私を笑わせる?」
秀吉「そうだ。 逆立ち踊りと腹踊り、好きなほうを選んでくれ」
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秀吉6日目~後編~に続きます →
