以下、完レポになりますで未プレイの方や、
ネタバレが嫌な方は即Uターンしてください。
また、あくまで私が選択したものであり、
結果を保証するものではありません。
選択肢は載せていません。
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信長「申してみよ」
信長様も真顔になり、父上の真剣な眼差しを受け止めている。
父上「後ろ手の縄を解いてくださらぬか。死ぬ前に一度だけ、両腕で娘を抱きしめたいのだ」
信長「・・・・・・」
死。という恐ろしい言葉に私は息を飲んだ。
「父上、死ぬとはどういうことなのです!?」
父上「わしは戦いに負けたのだ、祐美」
父上「それにわしはこの戦を一国の主としてではなく、親としての気持ちで挑んだ」
父上「神威家のために多くの家臣を死なせてしまった。わしは潔くここで果てようと思うのだ」
「・・・・・・っ」
その言葉に計り知れぬ父上の覚悟を垣間見て、胸が締め付けられた。
(私のためを思って下した父上の決断が・・・このような結末を招いてしまった・・・)
父上「負けたその運命がいかなるものかお前もよく知っているだろう」
父上「お前をもう一度抱きしめることができるならば、心に残すことはもうない」
信長「それは許さぬ。神威家は織田と血縁となり、ともに天下統一を果たすために働いてもらう」
きっぱりと言い切る信長様に、父上は目を見開く。
父上「天下統一ですと・・・!」
信長「そうだ。貴重な兵力を失うわけにはいかない」
頼もしげに口元に笑みを浮かべる信長様を、私は呆然と見つめていた。
(天下統一・・・。そのような果てしない夢に、この方は突き進まれようとしているのか・・・)
信長「神威家は織田家と今以上の強固な契りをぬ結び、天下に俺に力を知らしめる役割がある」
信長「父上殿にはまだまだ生きてもらわなくてはな」
父上の拳は震え、座を正すと地に頭がつくほどに平伏した。
「信長様・・・ありがとうございます!」
信長「行くぞ」
「え?」
突然、信長様は私の体を抱き上げ、まるで攫うように歩き出した。
「あ、あの・・・」
信長「神威殿、祐美とは後でゆっくり話す時間を与える。今は俺がもらっていくぞ」
父上「かしこまりました」
仕方がないといった様子で父上はうなずいている。
そして信長様は当然のように私ごと馬に乗り上げた。
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戦の傷跡の残る合戦場を走り抜け、信長様はどこかを目指している。
「信長様、一体どこへ・・・」
私を腕の中に抱き込んだまま馬を走らせる信長様の顔を見上げた。
信長「二人きりになれる場所だ。もう、邪魔はいらぬ」
その声には焦れた色がにじんでいた。
(私も・・・信長様と二人で、話しがしたい・・・)
馬から振り落とされぬよう、私は信長様の胸元にぎゅっと掴まった。
森の中を通り過ぎると、急に視界が開け、澄み渡る青空と、眼下に広がる景色が見えた。
緩やかな風が頬を撫でながら、通り過ぎていく。
(なんて見事な景色・・・)
信長「下りるぞ。俺に掴まれ」
腕を広げて待つ信長様に広い胸に、私は飛び込んでいった。
信長「ここなら邪魔も入らず、祐美を二人だけでゆっくりと過ごせるだろう」
私を抱いたまま、信長様が丘の上を歩いていく。
そして、見晴らしの良い場所で立ち止まると、わたしをそっと地面に下ろした。
「見事な景色ですね・・・。ここから、合戦上も見える」
信長「ああ。こうしていると、地上に見えるすべてを手に入れたような錯覚に陥る」
「そう思うのは信長様だけではないでしょうか?」
信長「ふっ・・・そうかもしれぬな」
目を伏せて微笑むと、信長様は私の体を引き寄せ、その場に座り込んだ。
その胸の中に囚われ、身動きがとれず困惑する。
信長「俺は、すべてを手に入れたいのかもしれない」
「すべてを・・・?」
信長「ああ。そうしてお前をこの腕の中に捕らえ・・・それでも飽き足らず、この国すべてを欲してしまう」
(この国、すべてを・・・? それはつまり、天下を・・・)
父上に語って聞かせた、天下統一の話を思い出す。
(しかし、信長様にならそれすら可能なのかもしれない・・・)
(この方は、二万五千の兵相手に、たった二千で挑み、勝利を掴んだのだ)
勇猛で恐れを知らぬ信長様になら、いつか天下を取ることも夢ではないのかもしれない。
信長様が見つめる景色を、私もその腕の中から静かに眺めていた。
(この方のそばで、こうしてずっと、同じ景色を眺めていきたい・・・)
そんなことをぼんやり考えていると、ふと、信長様の腕に切り傷があることに気がつく。
「信長様・・・! 怪我をなさっているではありませんか」
あわてて私は自身の襦袢の裾を破くと、信長様の手首を取った。
「化膿しては大変です。応急処置ではありますが・・・」
傷口に布を巻き付ける様子を、信長様が黙って見つめている。
「痛みましたか?」
信長「いや、お前の手際の良さに感心していたのだ」
見上げると信長様は愛しげに私に笑いかけ、なおも強く抱きしめてきた。
信長「惚れ直したぞ。祐美、お前は俺にとって最高のいいなずけだ」
「信長様・・・」
(それは、私も同じ気持ちです・・・)
気恥ずかしくて言葉に出来ずにいると、信長様の手が頬に触れる。
そのまま、しばし無言で見つめ合う。
(こうして見つめ合っているだけで・・・、胸の中がいっぱいになる・・・)
いつになったらこの胸の騒がしさは、収まってくれるのだろうか。
もしかしたら、一生このまま、信長様に対して胸を高鳴らせ続けるのかもしれない。
信長「祐美・・・、お前を離さない。一生俺のそばにいろ」
「はい・・・」
信長「・・・愛している」
荒々しく重ねられた唇から伝わる信長様の吐息に、私の唇も熱を帯びていく。
「のぶ・・・な・・・・・・さ・・・」
愛しい人の名前を呼ぼうとすると、すぐにより深く重ねられる唇にさまたげられる。
その激しくも愛しさに溢れた口付けに、私は目を閉じた。
(この口付けこそが、信長様の気性を表している気がする・・・)
強引で、身勝手に振舞って、私を翻弄する。
けれど私は、それを嫌だと思うどころか惹かれてしまうのだ。
吐息を乱す唇が離れると、私は信長様を見上げ、微笑んだ。
「いつかのように、私を逃がさぬと言ってください」
強気にそう言ってみせると、信長様は笑顔になった。
信長「ああ、わかった」
信長「お前が逃げようとしても、俺は逃がさぬ。・・・一生逃がさぬ」
「はい」
(これからはもう、人質でも、敵でもない)
私にとって信長様は特別なお方で、信長様にとってもきっと・・・。
(信長様を拒んできたけれど、今は信長様にこんなにも惹かれ、そばにいたいと思う)
(私は信長様のそばから離れません)
(信長様の目指す先までずっと、ついていきます)
私たちは口付けを交わしながら、寄り添い合い、飽きるまで丘の上から景色を眺めていた。
織田信長 HAPPY END![]()
