リチャード・ブラント氏の新著『one-click』(出版社:ポートフォリオ/ペンギン、2011年10月発行)は、米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムの最高経営責任者(CEO)で創業者のジェフ・ベゾス氏の半生を追ったものだ。カリフォルニアの牧場で働いた幼いころの思い出から、自らが創業したネット通販サイトに対する厳格な経営姿勢までが描かれている。
ブラント氏は1981年からIT(情報技術)分野の記者を務め、ビジネスウィーク誌では全米雑誌賞を受賞。グーグルの創業者、ラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏に関する著書(『グーグルが描く未来』、2009年発行)をはじめ、IT業界の経営者に関する多数の書を著している。
われわれは今週初め、電話でブラント氏にインタビューを行った。主なやり取りは以下のとおり。
——スティーブ・ジョブズ氏亡き今、IT業界には先見の明を持ったこれといったリーダーが見あたらない。ベゾス氏はどうか。
スティーブ・ジョブズ氏の代わりとなる人物などいない。ジョブズ氏は卓越したイノベーター(改革者)であり、流行の仕掛け人だったが、多くの人が今そうした役割を(ジェフ・ベゾス氏に)期待している。
ジェフ・ベゾス氏は素晴らしい起業家であり、会社の立ち上げやある種の製品の創造に関して最も優秀な経営者の1人だ。だが、特に電子機器の分野では、ジョブズ氏のようなイノベーション(技術革新)能力は発揮していない。
キンドル(電子書籍端末)のような製品の製造はベゾス氏にとって比較的新しい領域だ。だが、ネット通販ビジネスとはいかなるものであるかを示したのはベゾス氏だ。一部の新市場では素晴らしいイノベーション能力も発揮している。
クラウドコンピューティングでは市場をリードした。これは素晴らしい動きだった。まずコンピューティングパワー、ソフトウエア、サービスのすべてをそろえることを決断し、そのコンピューティングパワーを他の企業に貸し出すことを思い付き、そして社内でそれらサービスとソフトウエアすべてに対するインターフェースを標準化するよう義務付けた。
ベゾス氏はジョブズ氏のように多少気まぐれなところがある。全従業員にソフトウエアとサービスを見直すよう命じ、安全で信頼性のある標準化されたインターフェースに統一させた。皆に「これをするな。さもなければ首にする」と命じた。
電子機器に関しては、ベゾス氏もご多分にもれずジョブズ氏におおむね追随した。わたしはベゾス氏がいつ電子書籍の販売に踏み切るかとずっと期待していたが、ようやく07年になってからだ。ジョブズ氏が一足先にネット経由での楽曲販売を開始してから6年後だ。
ダウンロードビジネスを最初にはやらせたのはジョブズ氏だが、ベゾス氏はやると決めるとすぐにキンドルを開発し、その取り組みを熱心に推し進め、素晴らしい成果を達成した。世界初の最も良くできた電子書籍端末を作り上げた。
——キンドルとタブレット端末「キンドル・ファイア」の戦略上の位置付けは?
キンドル・ファイアはまさにジョブズ氏とiPad(アイパッド)に対抗したものだ。そうすることで、自分もそのような素晴らしい新たな製品を作れるのだと示したかったのだろう。だが、まだジョブズ氏の模倣の域を超えていない。
ジョブズ氏は最高峰の製品を作り出そうとしていた。ジョブズ氏がゴールドスタンダードを築いたのに対して、ベゾス氏は大衆向けの手頃な製品を作ろうとしている。ベゾス氏が電子機器を開発する主な目的は、電子書籍や映画、ビデオといったさらなる拡大を目指す他の自社商品の売り上げを伸ばすことにある。
キンドルやキンドル・ファイアは大衆向けの低価格製品で、手頃な値段でありながらも優れた機能を備えている。だが、ジョブズ氏が常に築いてきたような高い基準を設定するものではない。
——ベゾス氏に、ジョブズ氏のようになりたいという野心はあると思うか。
まだそこまで考えていないと思うが、いずれ目指すのではないか。だが、それまでにはまだ多くを証明しなければならない。
ベゾス氏にゴールドスタンダードを設定するような上位製品の開発を目指している様子はまだない。彼がアマゾンにおいて今重視しているのは価格をできる限り安く抑えることであり、そうなると製品に搭載できる機能は限られるだろう。
ベゾス氏は社内でもケチだとの評判がある。設計者への報酬も他の企業ほど高くない。そのためグーグルなど報酬や福利厚生がまさる企業にエンジニアを引き抜かれている。今後そのような優秀な設計者を引きつける必要が出てくるだろう。
——今後ベゾス氏はどのような新規事業に参入すると思うか。
ベゾス氏はどんな選択肢も除外していないと思う。彼は起業家の中においてさえも極めて野心的な人物だ。わたしがこれまで会った起業家で最も野心的といってもいい。ライバル企業と競争する一方で協業したり、ライバル企業の製品やサービスに便乗することもまったくいとわない。
今ネットフリックスとも強い関係を築いている。ネットフリックスはアマゾンのサーバー経由で動画を配信している。だが一方で、ライバル関係もしっかりと維持している。自社のビジネスに完全に依存している企業とライバル関係を維持しようとするのは非常に珍しい。
——ビル・ゲイツ氏やラリー・ペイジ氏、サーゲイ・ブリン氏などの他のシリコンバレーを代表する経営者と比較してどうか。
ベゾス氏は技術的な知識も豊富だが、アマゾンを起業してからはジョブズ氏的な役割に徹している。自分自身では製品を開発せず、他の人に指示を与えるだけだ。だが、製品化が可能かどうかを判断できるだけの十分な技術的知識は持っている。
ジョブズ氏はそのような技術的知識は持っていなかったが、何が可能かを見極める非常に優れた才能を持っていた。ベゾス氏はそういう意味ではゲイツ氏に近い。ラリーとサーゲイは自分たちで製品を開発することから始めており、何が可能かを分かっている。
だが、ベゾス氏の手法は起業家としては非常に独特で、分析的だ。そして、そのやり方をうまく成功させている。
ベゾス氏には非常に強力なイノベーターになれるチャンスがある。ジョブズ氏の悲劇的な死によって空白が生まれているからだ。ベゾス氏もそれをチャンスとみているはずだ。チャンスだと判断すれば飛びつくだろう。
彼が今後アマゾンをどのような方向に導いていくのか楽しみだ。今後も新機能や新製品で、われわれを驚かせ続けてくれるに違いない。
ブラント氏は1981年からIT(情報技術)分野の記者を務め、ビジネスウィーク誌では全米雑誌賞を受賞。グーグルの創業者、ラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏に関する著書(『グーグルが描く未来』、2009年発行)をはじめ、IT業界の経営者に関する多数の書を著している。
われわれは今週初め、電話でブラント氏にインタビューを行った。主なやり取りは以下のとおり。
——スティーブ・ジョブズ氏亡き今、IT業界には先見の明を持ったこれといったリーダーが見あたらない。ベゾス氏はどうか。
スティーブ・ジョブズ氏の代わりとなる人物などいない。ジョブズ氏は卓越したイノベーター(改革者)であり、流行の仕掛け人だったが、多くの人が今そうした役割を(ジェフ・ベゾス氏に)期待している。
ジェフ・ベゾス氏は素晴らしい起業家であり、会社の立ち上げやある種の製品の創造に関して最も優秀な経営者の1人だ。だが、特に電子機器の分野では、ジョブズ氏のようなイノベーション(技術革新)能力は発揮していない。
キンドル(電子書籍端末)のような製品の製造はベゾス氏にとって比較的新しい領域だ。だが、ネット通販ビジネスとはいかなるものであるかを示したのはベゾス氏だ。一部の新市場では素晴らしいイノベーション能力も発揮している。
クラウドコンピューティングでは市場をリードした。これは素晴らしい動きだった。まずコンピューティングパワー、ソフトウエア、サービスのすべてをそろえることを決断し、そのコンピューティングパワーを他の企業に貸し出すことを思い付き、そして社内でそれらサービスとソフトウエアすべてに対するインターフェースを標準化するよう義務付けた。
ベゾス氏はジョブズ氏のように多少気まぐれなところがある。全従業員にソフトウエアとサービスを見直すよう命じ、安全で信頼性のある標準化されたインターフェースに統一させた。皆に「これをするな。さもなければ首にする」と命じた。
電子機器に関しては、ベゾス氏もご多分にもれずジョブズ氏におおむね追随した。わたしはベゾス氏がいつ電子書籍の販売に踏み切るかとずっと期待していたが、ようやく07年になってからだ。ジョブズ氏が一足先にネット経由での楽曲販売を開始してから6年後だ。
ダウンロードビジネスを最初にはやらせたのはジョブズ氏だが、ベゾス氏はやると決めるとすぐにキンドルを開発し、その取り組みを熱心に推し進め、素晴らしい成果を達成した。世界初の最も良くできた電子書籍端末を作り上げた。
——キンドルとタブレット端末「キンドル・ファイア」の戦略上の位置付けは?
キンドル・ファイアはまさにジョブズ氏とiPad(アイパッド)に対抗したものだ。そうすることで、自分もそのような素晴らしい新たな製品を作れるのだと示したかったのだろう。だが、まだジョブズ氏の模倣の域を超えていない。
ジョブズ氏は最高峰の製品を作り出そうとしていた。ジョブズ氏がゴールドスタンダードを築いたのに対して、ベゾス氏は大衆向けの手頃な製品を作ろうとしている。ベゾス氏が電子機器を開発する主な目的は、電子書籍や映画、ビデオといったさらなる拡大を目指す他の自社商品の売り上げを伸ばすことにある。
キンドルやキンドル・ファイアは大衆向けの低価格製品で、手頃な値段でありながらも優れた機能を備えている。だが、ジョブズ氏が常に築いてきたような高い基準を設定するものではない。
——ベゾス氏に、ジョブズ氏のようになりたいという野心はあると思うか。
まだそこまで考えていないと思うが、いずれ目指すのではないか。だが、それまでにはまだ多くを証明しなければならない。
ベゾス氏にゴールドスタンダードを設定するような上位製品の開発を目指している様子はまだない。彼がアマゾンにおいて今重視しているのは価格をできる限り安く抑えることであり、そうなると製品に搭載できる機能は限られるだろう。
ベゾス氏は社内でもケチだとの評判がある。設計者への報酬も他の企業ほど高くない。そのためグーグルなど報酬や福利厚生がまさる企業にエンジニアを引き抜かれている。今後そのような優秀な設計者を引きつける必要が出てくるだろう。
——今後ベゾス氏はどのような新規事業に参入すると思うか。
ベゾス氏はどんな選択肢も除外していないと思う。彼は起業家の中においてさえも極めて野心的な人物だ。わたしがこれまで会った起業家で最も野心的といってもいい。ライバル企業と競争する一方で協業したり、ライバル企業の製品やサービスに便乗することもまったくいとわない。
今ネットフリックスとも強い関係を築いている。ネットフリックスはアマゾンのサーバー経由で動画を配信している。だが一方で、ライバル関係もしっかりと維持している。自社のビジネスに完全に依存している企業とライバル関係を維持しようとするのは非常に珍しい。
——ビル・ゲイツ氏やラリー・ペイジ氏、サーゲイ・ブリン氏などの他のシリコンバレーを代表する経営者と比較してどうか。
ベゾス氏は技術的な知識も豊富だが、アマゾンを起業してからはジョブズ氏的な役割に徹している。自分自身では製品を開発せず、他の人に指示を与えるだけだ。だが、製品化が可能かどうかを判断できるだけの十分な技術的知識は持っている。
ジョブズ氏はそのような技術的知識は持っていなかったが、何が可能かを見極める非常に優れた才能を持っていた。ベゾス氏はそういう意味ではゲイツ氏に近い。ラリーとサーゲイは自分たちで製品を開発することから始めており、何が可能かを分かっている。
だが、ベゾス氏の手法は起業家としては非常に独特で、分析的だ。そして、そのやり方をうまく成功させている。
ベゾス氏には非常に強力なイノベーターになれるチャンスがある。ジョブズ氏の悲劇的な死によって空白が生まれているからだ。ベゾス氏もそれをチャンスとみているはずだ。チャンスだと判断すれば飛びつくだろう。
彼が今後アマゾンをどのような方向に導いていくのか楽しみだ。今後も新機能や新製品で、われわれを驚かせ続けてくれるに違いない。
「この記事の著作権はウォール・ストリート・ジャーナルに帰属します。」
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