【満州国】

 

満州国と言えば『傀儡国家』と呼ばれて久しいが、実際はそれほど単純な話ではない。

 

満州国は単なる植民地主義の産物ではなく、日本が本土や朝鮮を防衛するためのいわば緩衝地帯として設けられたことは、あのリットン調査団でも認めざるを得なかった。さらに当時の中国は内戦状態であり、日本を除けば当時の満州国がアジアの何処よりも治安が安定していた。実際に、毎年100万人以上の難民が中国から治安と職を求めて流入してきたのである。

 

また、日本は莫大な額の資産を投じて満州地帯の工業化に努め、国民の生活水準を飛躍的に向上させたが、そうとみるや中国共産党は日本の満州権益を不当視する態度を取り始めた。

 

彼らはこれを『革命外交』と呼んだ。共産党や国民党の支援による抗日テロや侮日政策が支那事変(日中戦争)の遠因になったことは、想像に難くない。

 

 

【国際連盟脱退】

 満州国の建国を強行した関東軍の立場を、外務大臣の松岡 洋右は十字架上のキリストに例えて弁護した。これが十字架演説である。しかし、結局それは受け入れられずに日本は国際連盟を脱退し、世界から孤立した。これが今では日本の暴走の始まりのように考えられているが、暴走していた世界中も同じである。

 

一方的に脱退を表明した日本に対し、国際連盟は全く制裁措置を取ることができず、連盟の権威は完全に失われたからである。日本の脱退は恐慌後の失われていく世界秩序を象徴していた。それ以後はいよいよ世界経済のブロック化が進み、もはや国際連盟は世界大戦の終結までまともに機能することはなかった。

 

これは現在の国際連合にも言えることだが、こういった国際協議の場は、単純に加盟国間の利害損得がぶつかり合う駆け引きの場であって、【平和維持】と言うよりむしろ【外交手段】に過ぎず、核兵器や一個師団と同様の戦略的、外交的単位に過ぎない。

 

外務大臣 松岡 洋右(まつおか ようすけ)

 

 

【大東亜共栄圏】

 

この言葉自体は決して軍国主義の象徴ではない。単なる経済用語である。

 

第2次近衛声明によって提唱された4つの経済ブロックの内の一つを指す言葉で、資源に乏しい日本が東南アジアの資源の安定供給を確保するための交流樹立を前提としてアジアの欧米による植民地支配からの脱却、すなわち日本軍の進駐まで視野に入れるのは【八紘一宇】との混同である。

 

道程の差はあれ、これは現在のEUと同列の言葉である。

しかし、このイデオロギーが後にアジアの運命を決定的に変えたのは間違いない。

 

第34,38,39代  内閣総理大臣 近衛 文麿

 

※4つの経済ブロックとは、アメリカ圏、欧亜圏、ソ連圏、大東亜圏のこと。世界はこの4大経済ブロックに分かれるから、日本は大東亜圏の盟主として外国への経済依存を脱するというのが大東亜共栄圏の骨子であった。

 

【日独伊三国同盟】

 

日本はドイツやイタリアとは違い、【全体主義】には陥ったものの【ファシズム】は確実に存在していなかった。昭和12年(1937)の支那事変(日中戦争)以後も日本は何度も政権交代し、治安維持法で死刑になった者はおらず(多くの獄死者が出たのは事実である)、大政翼賛会も発足こそすれ実権を握ったのはあくまで既存政党のセクトであった。

 

天皇陛下はあくまで英王室と同様に【君臨すれども統治せず】の原則を心掛けておられたが、国民の方にも強力な独裁者を必要とする風潮は希薄で、天皇陛下が居てくださればそれで満足といった状態だった。むしろ開戦の際にも終戦の際にも、重大な国策の決定にあたって議論が入り乱れ、官僚が陛下の聖断を仰ぐ他なかったという状態であったことが情けない。日本はあくまで国民国家としての体系を維持していた。

 

日本がナチスやファシストと手を組んだ理由は単純に境遇が似通っていただけである。つまり、【持たざる国】同士のやむを得ない選択だった。昭和13年3月、社会大衆党・西尾末広代議士が近衛首相を激励する意味で『ヒトラーのように』と発言し、衆院議員を除名されている。

 

ドイツ総統 アドルフ・ヒトラー

 

イタリア王国総帥 ベニート・ムッソリーニ

 

【パープル暗号】

日本が当時使用していた外交暗号は、画期的な機械暗号装置【九七式欧字印刷機】によるもので、アメリカ側は【マジック】と呼んでいた。これを座学的な方法で解読するのは限りなく不可能に近い。しかし、現実にアメリカは解読していた。その理由としては、この暗号機の設計書が何らかの形で盗み出されていたという説が有力である。

 

これにおいて日米間の『情報戦』は完全に日本の敗北であったが、この分野における日本人の弱さは今も何も変わっていない。日本の国務機関の情報収集能力も、米国のCIAや英国のMI6等には遠く及ばないのが実情である。

 

日本人は民族的にも付和雷同的な性質があり、『情報』に関しては集めるのも発信するのも極端に不得手で、気が付けば他人にいいように利用されているということがままある。マスコミの【日中記者協定】や教科書検定の【近隣諸国条項】はまさにその象徴と言える。

 

※日中記者協定..日本のマスメディアは中国に不利な報道を行えない

※近隣諸国条項...日本の義務教育における歴史教科書は、中国と韓国の意向を無視できない