IFシナリオ
『目覚めし獅子 清滅びず』
1884年に起こった日清戦争は双方痛み分けで終わった。日本海軍は豊島沖で清国軍艦を取り逃がし、清国陸軍は牙山から平壌で頑強な抵抗を示し、黄海開戦で日本海軍は勝利したものの制海権を得られなかった。日本陸軍は朝鮮半島から抜け出せず、清国領土を踏むことなく戦争は終結したのだ。
講和の結果、清国は朝鮮半島の38度線以南を日本へ割譲することとなり、朝鮮半島には2つの新国家が誕生する。だが、この戦争によって眠れる獅子と呼ばれた清国は完全に目を覚ました。日本に遅れをとるなと洋務運動は勢いを増し、各地に鉄道を敷きインフラを飛躍的に改善させ、重工業による国力の底上げを図った。1898年、変法派の康有為・梁啓超が戊戌の変法を開始すると、西太后は立憲君主制への移行に反発しクーデターを画策したが未然に防がれ幽閉される。
1904年、南下政策を進めるロシアが清国に宣戦布告。序盤優勢であったロシア軍だが、清国陸軍の粘り強い抵抗と、清国が撃破された場合ロシアの脅威を一身に受けることになる日本が義勇軍を派遣した事もあり徐々に反撃に転じた。1905年5月27日に発生した日本海海戦は、「定遠」「鎮遠」含む清国海軍と日本の義勇艦隊の活躍によりロシア側の一方的敗北に終わった。その後、清国がウラジオストックを攻略。アメリカの仲介によりポーツマスで講和条約を締結し、清国はロシアへウラジオストック返還の代わりに多額の賠償金を、日本はその賠償金の1割を得た。
1908年に光緒帝が病死すると、愛新覚羅 溥儀が皇帝に即位する。第一次世界大戦で中立を保った清国は、各国に物資を売り払い莫大な利益を手に入れ、それを更に工業化と技術開発の資金に回した。ロシア革命を見た清国首脳陣は革命の波及を恐れ、国民主権・国民議会・普通選挙など先手を打つ。初代内閣総理大臣には袁世凱が就任した。
世界恐慌で発展の速度は一時的に鈍るものの、1930年代になると清国は列強に肩を並べる工業力と軍事力を手にするまでになった。しかし政情不安が続き軍部の台頭が顕著な日本では、朝鮮半島と中国を勢力圏におさめて資源・経済基盤を拡大しようとする動きがある。戦争となれば、東洋の主を決定するものになるだろう。
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史実で眠れる獅子から死せる獅子として滅亡した清が、日本に倣って近代化を果たした世界です。
史実より10年早く起きた日清戦争は、日清ともに引き分けで終結。この出来事が発端となり、清は近代化革命を起こしました。史実における日露戦争は、清露戦争に変換。
日本の助力のもと、清はロシアの南下を食い止めることに成功しています。
日本は台湾を領有していないし、朝鮮半島の南半分を傀儡として成立させることができたにとどまり、当然ながら南樺太も獲得していません。史実よりもはるかに、日本の存在感は薄まっています。
清王朝を中心に、中国が統一されているので、史実でw軍閥に分かれて争っていた人物が一つの旗の元に集っています。蒋介石もいますし、汪兆銘もいます。
清は石油を除くその他資源の自活が可能である点が、日本とは大きく異なります。
米英らとも関係は悪くないため、傍観していれば欧米列強と衝突はしないでしょう。ただし、イギリスは香港を、ポルトガルはマカオを返還するつもりがないため、取り戻そうとすれば戦争が必要になります。
ソ連とは国境沿いにて緊張が続いているうえ、日本も大陸進出の機会を虎視眈々と狙っているため、清は国際社会での立ち回りをよく考えなくてはなりません。
そのために、スタート時の軍備確認。
軍備ですが、
まず陸軍。
約90個師団を保有し、陸軍大国の面目躍如といったところです。
ただし、大半が型落ちで、半数が守備隊。しかも広大な中国大陸を防衛するためには圧倒的に不足しているため、陸軍は拡大していかないと辛いでしょう。
一方で、司令部2個、軽戦車3個師団を保有しているのは大きなアドバンテージです。
海軍。
日本の帝国海軍にはわずかに及ばないものの、それなりの艦隊を揃えています。
特筆すべきは空母3隻を保有するため、開始直後であれば日本と互角に戦うことが可能です。
ただ、空母の性能やドクトリンなどでは日本が優位なので、馬鹿正直に真正面から艦隊決戦をしても壊滅するのは清のほうです。やり方次第といったところ。
以下、ゲーム開始。
難易度は難しいを選択しています。
1936年2月
清で右翼がクーデターを起こす。清版2.26ともいえるこの暴動は未遂に終わるも、その混乱を終息させるには多少の時間がかかりました。
一方で、1940年は北京オリンピックが開催されることが決定。
日本ではなく清が選ばれたことは、つまり存在感や影響力という意味で清が日本を上回っている証左でしょう。
御隣の大日本帝国はというと...左翼がクーデターを起こし、後藤政権に。
天皇を元首としながら、レーニン主義というよくわからない国になっていました。
と思ったら、現役武官制復活に伴い、国家社会主義を採用する日本の図。
廣田政権に。右に振れたり左に振れたりと、日本では混乱が激しいようです。
第2次大戦の主役、ドイツとソ連。
清としては、ソ連はともかくドイツとは確執がないため、独ソ戦の勃発に伴い、ソ連に宣戦布告。
ソ連に2正面作戦を迫り、勝利をもぎ取る狙いで行きます。
清もソ連も人的資源に限りがないと言っても過言ではないほど、陸軍の拡張が可能ですが、
最大の違いは民主国家と独裁国家であるという点です。
戦争において有利なのは独裁国である点はいわずもがなですが、このゲームにおいてはさほどのアドバンテージがないので気にすることはないでしょう。
1937年6月。
板門店事件。史実でいう盧溝橋事件で、これを契機に第2次日清戦争の始まりです。
1884年では引き分けに終わりましたが、此度でハッキリと勝負をつける必要があるでしょう。
そして、勝利した側が東洋の王者となります。
清の沿岸部は全て守備隊でガッチリ固めているため、いくら日本でも簡単に上陸作戦などできるはずがありません。そうなると、最初はやはり朝鮮半島が主戦場となります。
二つに分かれた朝鮮半島で、朝鮮軍と韓国軍が衝突。さながら史実での朝鮮戦争の様相を見せます。
とりあえず、朝鮮軍の戦いぶりを観察。開戦後、勢いに乗る韓国軍は、瞬く間に朝鮮半島の北部を併合し、統一を果たします。
しかし、これ以上は進ませない。清-朝鮮の国境沿いに待機させておいた総勢30個師団の精鋭軍に、越境しての進軍を命令。脆弱な韓国軍は敗退を重ね、朝鮮半島一帯は清の支配下に置かれます。
これもさながら朝鮮戦争の展開と大体似ています。
ちなみに、台湾島の防備をうっかり忘れていたので、開戦直後に日本に占領されてしまいました。
取り戻すのはまぁ、後回しでいいでしょう。まずは朝鮮半島の戦線です。
韓国全土は難なく攻略。済州島の攻略は果たせなかったですが、韓国に傀儡化の和平を打診し続けるうち、飲んでくれました。
これで、韓国は清の属国になりました。開戦から日本と一緒に戦っていた韓国軍は、清側に寝返って戦争を継続することになります。
日清が戦う中、欧州ではドイツが順調に拡大を続けていました。
今回はドイツと協調をするつもりなので、大変喜ばしい限りであります。
とりあえず、日本の帝国海軍を、時間をかけて潰していき、ころ合いを見て上陸作戦を開始。
日本の工業地帯を一気に押さえます。東京の防備が非常に硬くて苦労しましたが、なんとか占領。
第2次日清戦争は、約2年かけて、清の完全勝利で終わりました。
最初は傀儡化和平で行こうかと思いましたが、しばらく日本の工業を利用させてもらいたいので、併合を選択。
のちのち日本は(清の傀儡とはいえ)独立させますが、当面は清の支配下に置くことにします。