Hearts of iron2 のMOD『KAISER REICH』(カイザー ライヒ)。
海外のユーザーが作成した極めて完成度の高いMODで、その人気ぶりから、日本語訳ファイルもネットで作成されています。
本MODのシナリオ『カイザーライヒ:世界大戦の遺産』は、1936年から始まりますが、
第1次世界大戦で中欧同盟国が勝利した、というIFの世界です。
もしも、ドイツが勝っていたら世界はどうなっていただろう?というのを見事に作り上げています。
ドイツ帝国もオーストリア帝国も、オスマン帝国も滅亡はしておらず、世界地図も、我々の知る歴史とは大きく異なります。ナチスドイツやソビエトの勃興はありません。
ちなみに、おまけで日露戦争シナリオも入っている
通常の1936年シナリオにある、連合国、枢軸国、共産国といった陣営はありません。
代わりにあるのは中欧同盟国、協商国、インターナショナルの3つ。
中欧同盟国
盟主はドイツ帝国で、オーストリアやオスマン、ブルガリアは既に脱退している。
ドイツが先の大戦で得た東方領土はドイツの傀儡として独立し、バルト3国はリトアニアを除くバルト連合公国が成立している。
協商国
第1次大戦後にイギリスで共産主義革命が起きた。
そのため、旧イギリス連邦諸国を中心に、カナダがイギリスの後釜として盟主になり、イギリス王室はカナダへ亡命している。
インターナショナル
1871年のパリ・コミューン以来、フランスが社会主義国家に。
インターナショナルは開始直後は加盟国が2国だけ。順次増えていく。
レーニン主義、スターリン主義などに変わって、この世界では社会主義の一派サンディカリスムが主流になっています。あまり聞きなれない言葉かもしれません。
サンディカリスム
サンディカリスム(フランス語
: Syndicalisme、英語
: Syndicalism、サンジカリスム、シンディカリズム、シンジカリズム)は、労働組合主義、組合主義、労働組合至上主義とも訳され、資本家
や国家
主導の経済運営ではなく、集産主義
的な労働組合
の連合により経済
を運営するというもの。資本主義
あるいは社会主義
に代わるものとして提案された経済体制の1種またはその思想
。
wikipediaより
1936年 ヨーロッパ図
ナチスドイツ、ソビエトが跋扈する世界とは異なる。
ロシアは帝国だが、実態は共和制に近い。北欧は史実と一切変わらない。
それからオーストリアは既にハンガリーと分離しており、二重帝国の体制は崩壊している。
19世紀統一を果たしたイタリアはふたたび分裂。南北に分かれている。
民主主義の北イタリア-イタリア連邦と、サンディカリスムの南イタリア-イタリア社会主義共和国。
特筆すべきは、旧イギリス植民地インド。
イギリスの共産主義革命による余波はインドにも押し寄せたらしい。
デリー共和国、諸侯連邦、パールティア・コミューン、マドラス共和国の4つに分裂している。
マドラス共和国を除く3つの勢力は拮抗しており、インド統一は容易ではない。
マハトマ・ガンジーはパールティア・コミューンに属している。
そしてわれらがアジア。
ハッキリ言ってわけがわからない
上海や寧波は、条約都市という名の中立地帯。
清が復活していることに加え、上清天国という名の独立国。
中国南部は、東亜総合結社というドイツの傀儡地帯が成立。その西方にあるは雲南軍閥。
さらにその西は西北連邦。
史実でいうところの満州国は、奉天共和国という国に代わっている。
清は時代錯誤も甚だしい専制独裁をつづけている模様。よく国が存続したな...。
第1次世界大戦から20年、どのように歩んできたのかもきっちり書かれており、すごいの一言に尽きます。主要国家のみ日本語訳あり。
ドイツはカイザー(皇帝)が元首の帝国を維持。
しかし時代の変化とともに、専制独裁から権威的民主主義へと移り変わった。
第1次大戦の勝利によって、海外植民地を多数獲得している。
_1919年3月、3年半続いた消耗戦の末に、西部戦線におけるドイツ軍の攻勢は、ついに協商軍の防衛線を蹂躙することに成功した。フランス軍の士気は猛攻の前に崩壊し、ドイツ帝国軍は突破の勢いのままにパリとロレーヌの峡谷地帯へと進軍した。軍が崩壊したことで、弱りきったフランスは降伏し、彼らの誇った国土をドイツ軍が占領することを認めた。
(長いので中略)
だが、1930年に大提督が死去して以降、ドイツは斜陽を迎えつつあった。世界経済の全般的な停滞により、他国では手工業生産を復活させているのに対して、工業生産や国民所得は低落しつつあり、ドイツの東方衛星国におけるナショナリズムの勃興は、国民と政府の双方にとって緊張の原因となり、ために彼らは帝国から距離を置き始めた。1936年、ドイツ帝国は岐路に立っていた。強大な帝国はゆっくりと拡大を続けているが、宿敵は再び力を取り戻しつつあり、亀裂があらわになりはじめている。
サンディカリスト達が支配する、フランス。
現フランス本土はフランス・コミューンが支配しており、これに抵抗する国粋派はアフリカ植民地を拠点にしている。
フランス・コミューンの歴史情報
第三共和政は、その始まりと同じように滅亡した。
ドイツによって敗北を喫し、本国で共産主義革命が起きたのである。
1919年11月、CGT〔Confederation generale du travail.労働総同盟〕の呼びかけで始まった革命ゼネストは、国家を麻痺させ、ブルジョア政府を瓦解を引き起こした。「秩序党」は叛乱を終わらせるには力が足りず、続く数ヶ月において「支配者階級」は、左翼勢力の連合によって国外へ逃亡することを余儀なくされた。
言い方を換えれば、悲惨な内戦があったというわけである。
15年後、〔指導部として〕公安委員会〔Comite de Salut Public〕を頂き、サンディカリストと社会主義者の合意の上に形成された「フランス・コミューン」と自称する国家が樹立された。ところで1936年になると、荒廃した国土を復興し、革命の成果を国外の脅威から守るためのものと解釈されてきたこの合意は、多くの批判によって時代遅れのものと見なされるようになり、より急進的な政策が求められるようになった。
フランスは国防と国家の使命について自信を強めており、フランス革命の伝統は修正された。今後数年の間にどのような勢力が有力となるのかは、現在のところ全く以て不明である
先の大戦から、イギリスは革命が起きて社会主義国家に。
イギリス連合の歴史情報
フランスの敗北の後、イギリスとドイツとの戦争は、だらだらと二年間続いた。手詰まりの状態は、1921年、ルーデンドルフ将軍が「名誉ある和平」を行おうという提案を行い、ロイド=ジョージが同意したことで、遂に崩れた。
この和平条約において、イギリスはドイツが戦争で得た権益を承認し、一方でドイツはイギリス、日本、ポルトガルなど協商国に対し、帝国としての権益を尊重するとした。
イギリスの海外領土は概して秩序を保ち、現状のまま残ったのだが、イギリス本土の人々からの支持や忠誠心についてはそうではなかった。
1925年、破局が訪れた。サウスウェールズの炭田で起きた小規模な労働紛争が、治安回復のために軍を投入した後、急速にエスカレートしたのだ。TUC〔Trades Union Congress、全英労働組合会議〕の呼びかけにより、フランスで試されたゼネストが行われたことを受け、安全保障内閣〔原文は"government of national security"〕は軍に対し、ストに合流した叛乱部隊を鎮圧せよと命じた。叛乱には海軍の兵士も多数が加わっていた。
6週間にもわたって大規模に暴動と掠奪が行われ、宣伝ビラが撒き散らされた後、王室は政府要人や資産家を連れてカナダに脱出することとなった。支配階級を放逐した後、革命グループの暫定政府は、上下両院を解散し、新生「イギリス連合」政府が、新たに労働組合会議を設けるため選挙を行うと宣言した。
現在のところイギリス人民は、本国を確保し、政治的・経済的孤立の中で社会主義の建設に邁進しており、強力な共和国空軍および海軍による国防を進め、各地方は軍予備役と新たな警察機構の双方として機能する民兵組織によって守られている。
だが、世界がまさに混沌の淵に瀕しているように思われる現在、イギリスはかつての植民地に対して、革命を広める義務があるのではないかと、多くの者が考え始めている。最終的には、際限のない連合〔の拡大〕に対して、カナダの王政主義者が画策する余地を与えないことがイギリスの目的である。
ゲームを始めると、開発者の謝辞イベントが即座に起こる。
アメリカ大陸は、開始直後は北米はほぼ史実通り。
無敵の米帝がいます。ところが、途中、1938年ごろまでに革命が起き北米内戦が始まります。
普通のシナリオでは戦火に巻き込まれることがない北米大陸も、4つもの陣営に分かれて内戦が起こる。
アメリカ太平洋諸州-恐らくカリフォルニア共和国がもと
アメリカ・サンディカリスム-サンディカリスト達
アメリカ連合国-南北戦争を思い出すあの南側の勢力です
アメリカ合衆国-存在がチートと謳われる米帝も、本シナリオでは弱小国になり下がります。
内戦のどさくさに、ハワイは独立します。しかし、後にアメリカ太平洋諸州にふたたび併合される。
短い独立でした。アメリカ内戦勃発は日本にとっても絶好の好機なはずですが。
それからロシア。
前述の通り、この世界ではソビエトは存在しません。しかしそれはスタート直後の話。
世界最大の国土を誇るこの国も、1930年代に入って大規模な内戦に入ります。
ロシア革命による赤軍蜂起に乗じ、アジア方面にシベリア共和国が成立。
注意すべきは、ソビエト連邦ではなく、ソビエト・ロシア。
最後に、中東。
瀕死の病人と揶揄されたオスマンは、いまだ存在。
史実でサウジアラビアでは、ヒジャズ王国がまだ滅んでいない。
イエメン・オマーン、ペルシアなどは史実通りだが、イギリス革命の結果、エジプトが独立している。ただし、海上交通の要衝、スエズ運河はドイツ領。
世界最大の国なき民、クルド人がとうとう自らの国を持つが..。
オスマン帝国がこれを許すはずはなく、またたく間に鎮圧されてしまう。
本MOD、カイザーライヒは、イベントの数がすごいです。豊富すぎる。
中小国問わず、とにかく発生するイベントが多くて翻訳しきれていないほどです。