6月5日、LDH JAPANがタイを代表する大手音楽レーベルGMM Musicと業務提携し、合弁会社「G&LDH」設立を発表。
 



 
BALLISTIK BOYZとPSYCHIC FEVERがバンコクで活動を行うなど、かねてよりタイへの進出を視野に入れていたLDH JAPAN、そしてほかのアジア諸国を拠点とするアーティストや企業とのコラボレーションを積極的に展開するタイエンタメにおいて最大手となるGMM MUSICがタッグを組んだのだ。


 
タイと日本のエンタメ企業がタッグ
ある日届いた、1通のメール。それはタイのエンタメ企業GMM MUSICが、LDH JAPANと新会社「G&LDH」を立ち上げるにあたり、バンコクで開催するプレスカンファレンスへの招待案内だった。
 
少しだけ脱線するが、僕は昨年、日本からタイ北部の都市・チェンマイに移住した。旅行で訪れて、街や人々が醸し出すムードに惹かれたのもひとつの要因だが、T-POP(タイポップス)やタイドラマなどから、日本のカルチャーにはない魅力と希望を感じたことこそが最大のきっかけだ。
 
話を元に戻すと、僕が夢中になっているタイエンタメシーンのフロントランナーこそ、GMM MUSICが属するGMMグループである。特に『2gether』などの人気ドラマを生み出していることで知られるGMMだが、タイの音楽業界を第一線でリードしてきた存在であることも忘れてはならない。



タイのLDH人気を実感
会見当日、バンコクの最中心部に位置する一大ショッピングモール『サイアム・パラゴン』のエントランスホールに到着すると、すでにたくさんのファンがアーティストの出待ちをしていた。プレスカンファレンスとなる本イベントは一般向けではなかったが、数時間前から待機してアーティストを応援するために100名以上のタイのファンが集まっており、その熱量には驚かされた。
 
あとから判明したのだが、そこで見た人々のほとんどは、現地のLDHアーティストファンだった。平日の昼間から大勢を集められるだけの人気を既に確保していることに、彼らのタイ人気を知った





LDHアーティストによる驚異のパフォーマンス
GMM MUSICによる“王者”の貫禄を目の当たりにしウンウン唸っていたところ、間髪入れずにLDHのパフォーマンスがスタート。それを目の当たりにした僕は、いちT-POPファンとして、LDHアーティストのパフォーマンスに衝撃を受け、度肝を抜かれることになる。
 
まずは EXILE TRIBEとして11名がパフォーマンスを披露。彼らは全身を使って大きく体を動かし、全員が同一の振り付けを激しく踊った。個々が異なる振り付けで魅せるのではなく、全員が同じ方向を向いて踊る姿は、タイや韓国ではあまり見ない種類のダンスで、その様子は阿波踊りやよさこいといった日本の伝統文化のイズムを感じさせる。
 
曲が変わり、洗練された音色のシンセサイザーのアルペジオが鳴り響く。登場したのは7人組ボーイズグループ・PSYCHIC FEVER。体が勝手に動き出すような、メリハリあるビートにのせて耳障りのよいボーカルとラップがマイクリレーで展開されていく。踊りながらにも関わらず安定感は抜群だ。


なんだ、この素晴らしい音楽は。これは海外に売らなくてはいけない。世界で売れねばならない。それまでLDHのアーティストのパフォーマンスを生で観る機会がなかったことを後悔した瞬間だった。
 
続いて登場したのは、照明の光を浴びて綺羅びやかに輝く銀色の衣装に身を包んだ THE RAMPAGE。
 
ステージからは、勢いや激しさが切実に伝わってくる。僕は「100degrees」のパフォーマンスを観ながら感じた。先ほどのPSYCHIC FEVERとは明らかに、グループの色が違う。
 
思い出したのは、幹部プレゼンの際にHIROやNAOTOが口にしていた「LDHはグループごとに異なるカラーを持っている」という言葉。それは紛れもない真実であることを、彼らはステージを通じて証明した。
 
「グループごとにカラーが違う」とはすなわち、「表現の幅が広い」ということ。LDHアーティストは多様なスタイルを自由に行き来することができる、凄まじい実力の持ち主だったのだ。




LDHが持つパワーを実感
先述した「G&LDH」の狙い「合同練習等を通じたパフォーマンス力の向上」「タイ・日本両市場でのマーケティングリソースの相互提供」がそのとおりに実現すれば、LDHは GMM MUSICが持つタイ最大級のマーケティング・リソースやノウハウを活用して、タイ市場に乗り込むことができる。規模感こそ注視したいところではあるが、圧倒的な実力に裏打ちされたポテンシャルを持つLDHのアーティストがタイ市場に本格的に売り込まれたときのタイ国民の反応は、想定以上のものだろう。
 
T-POPライターとしてT-POPの人気が高まることを第一義的に考えていた僕だったが、むしろLDHの実力が「脅威」にまで感じられるほど、彼らのパフォーマンスにはパワーと魅力があった。
 
一方、GMM MUSICのアーティストについて考えてみるとどうだろうか。もし、T-POPにおいても際立ったプロポーションと高いスキルを持つ彼女ら/彼らが、LDHの表現力を身につけたらどうなるか。そして、LDHのマーケティングリソースを活用して日本市場に進出してきたらどうなるか。人々が予想だにしない、想像を越えたムーブメントを巻き起こす未来が、頭の中に思い浮かんだ。
 
HIROも言及していたように、GMMにはすでに実績がある。タイのアーティストが日本で爆発的にヒットする世界線が、現実味を帯びてきたのである。





-POPとJ-POPの“最高の未来”
GMMおよびLDHの両幹部は「双方の長所を融合したらおもしろいのではないか」と語っていたが、「おもしろい」どころではない。未だかつて見たことのない魅力をもった“エンタメ・モンスター”が誕生する。しかもそれがタイと日本の2拠点で成長していくのだから、非常に驚異的である。
 
そして、タイと日本で両国のアーティストが人気を博したら、いよいよアジア全体を巻き込んだ新しいムーブメントの幕開けとなるだろう。その先陣を切るのはタイのアーティストであり、日本のアーティストなのだ。
 
率直にいうと、市場規模の成長という面において、世界から取り残されている日本の音楽市場に不安を感じていたことも事実だ。しかし、LDHアーティストがタイでみせたパフォーマンスの素晴らしさは、その不安をあっさりと払拭させた。G&LDHのプレスカンファレンスは自分にとって、T-POPにもJ-POPにも希望を見出せた有意義で記念すべき機会となったと言える。読者の皆さんと、T-POPとJ-POPがタッグを組んだ先に待つ未来を見届けていきたい。