インターネットで事件の依頼を受ける誉獅子雄と若宮潤一。
依頼者は蓮壁千鶴男という資産家で、東京のオフィスから連絡して来ていた。
千鶴男は家族を故郷である瀬戸内海の霞島という有人島の豪邸に住まわせているが、
そこで一ヶ月前に千鶴男の娘の誘拐事件が起こったという。
娘は無事に帰宅したが犯人は不明のままで、
千鶴男は知人の若宮に事件の解明を依頼してきたのだ。
だが、通信中に体調を崩した千鶴男は画面の向こうで絶命した。
千鶴男の死因は、日本では淘汰されたはずの狂犬病で、感染は一ヶ月前と検視された。
原因究明のために霞島を訪れる誉と若宮。
千鶴男の屋敷には夫人の依羅と娘の紅、
その弟の千里と執事の馬場が暮らしていた。
誉らの到着時には他に知人の捨井とリフォーム業者の冨楽朗子もいた。
銀行を信用しない千鶴男は、所有地で何重にも鍵のかかる鉱山跡に大金を隠していた。
脅迫状で身代金を要求された時、
千鶴男は深夜に一人で金を取り出し、
指定の場所である墓地に行ったが誰も現れず、 足に噛み傷を負って帰宅したという。
誘拐された紅は薬で眠らされ、
気づいた時には屋敷の門前に放り出されていたという。
千鶴男の噛み傷は黒犬の祟りだと恐れる依羅。
この島には昔、墓に黒犬を埋める風習があり、
殺された多くの黒犬に祟られているのだという。
更に蓮壁家には以前から脅迫状が届き、
「立ち退かなければ黒犬の祟りに見舞われる」と脅されていた。
祟りなど信じない息子の千里は、
鉱山に隠された父の遺産や遺言状を気にして、
人目のない深夜に山に登り、
獣避けの罠にかかって身動きが取れず凍死した。
誉は島の町で聞き込みを行い、
この島で20年前に新生児の誘拐事件があったことを知った。
更に、脅迫状の差出人が二人いると推理する誉。
立ち退きを迫る脅迫状は、
知人の捨井が送ったものだった。
地震の多い霞島を調査している学者の捨井は大地震を恐れ、
陰ながら愛している紅を島から出すために脅迫状を送っていた。
誘拐犯はその脅迫状を真似たのだ。
誉の指示で、山に出没する魔犬の正体を探るために、深夜に鉱山跡まで登ると宣言する若宮。
一緒に行くと言う紅は、安全のために睡眠薬で眠らせた。
誉は犯人をおびき出すために、
鉱山跡が調べられることを、わざと関係者たちにアピールしたのだ。
鉱山跡に現れた犯人はリフォーム業者の冨楽朗子と夫の雷太だった。
冨楽夫婦は20年前に生まれたばかりの娘を誘拐された。
犯人は赤ん坊を亡くした直後の依羅だった。
娘の紅は自分が誘拐された子供だと知り、
実の両親と共謀して蓮壁家の財産の独占をはかったのだ。
狂犬病の毒を千鶴男に盛ったのも紅だった。
執事の馬場は紅を我が子のように愛しており、 紅を唯一の遺産相続人にするために依羅を殺し、全ての犯人は自分だという遺書を残して自殺した。
誉に犯罪を暴かれた冨楽夫妻は、
睡眠薬で眠っている紅と会わせて欲しいと屋敷に戻った直後に大地震に遭遇した。
誉たちは脱出したが、
冨楽夫妻と紅は土砂崩れの犠牲となって事件は終った。