本作は、悪名高きグアンタナモに収監された無実の息子を取り戻すために闘ったドイツの母の実話を元にしたエンパワーメントムービー。
 
 2001年、アメリカ同時多発テロのひと月後。
ドイツのブレーメンに暮らすトルコ移民一家の母ラビエ・クルナスは、
長男のムラートが旅先で“タリバン”の嫌疑をかけられ、
キューバのグアンタナモ湾にある米軍基地の収容所に収監されてしまったことを知る。
無実の息子を救うために奔走するラビエだったが、 
警察も行政も動いてくれない。
藁にもすがる思いで、
電話帳で見つけた人権派弁護士ベルンハルト・ドッケの元を訪れたラビエは、
アドバイスを受けアメリカ合衆国最高裁判所でジョージ・W・ブッシュ大統領を相手に訴訟を起こすことになる。
 


監督を務めたのは、『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』などで知られるドイツのアンドレアス・ドレーゼン。
収監中の5年間を綴ったムラート・クルナスの著書を読んだドレーゼン監督は、
訴訟も裁判もないまま収容所に送り込まれ、
5年も出られなかったという事実に憤りを感じ映画化を計画した。
しかし、あまりにも悲惨な内容に二の足を踏んでいた。
そんな中で出会ったムラートの母ラビエ・クルナスの一癖も二癖もある天真爛漫なキャラクターに魅せられ、
作品の方向性が決定。
ドイツのコメディアン、メルテム・カプタンが主演を務めたことで、シリアスなテーマにもかかわらずコメディタッチで軽妙な作品となった。
 


 クルナス本人と同じくトルコ系ドイツ人であるカプタンは、
アメリカでミュージカル俳優として活動したのち、
ドイツに拠点を移し人気コメディアンにまで上り詰めた経歴を持つ。
本作はドイツ映画デビュー作にして初主演作となり、
第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(主演俳優賞)を受賞。
同映画祭では銀熊賞(脚本賞)のW受賞も果たし、
またドイツ映画賞では作品賞銀賞、主演女優賞、助演男優賞の3部門で受賞した。



■公開情報
『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』
5月3日(金)より、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次ロードショー
監督:アンドレアス・ドレーゼン
脚本:ライラ・シュティーラー
出演:メルテム・カプタン、アレクサンダー・シェアー
配給:ザジフィルムズ
後援:ゲーテ・インスティトゥート東京
2022年/ドイツ、フランス/ドイツ語、トルコ語、英語/119分/カラー/2.39:1/5.1ch/原題:Rabiye Kurnaz gegen George W. Bush/字幕翻訳:吉川美奈子