SNSを通じて世界的ヒットを生み出した、imaseとなとりの対談が実現。両者は同時期(2021年5月)にTikTokへの投稿をスタートし、瞬く間に時代を象徴する存在へと駆け上がっていった。Spotifyが発表した2023年のランキングにおいて、imaseの「NIGHT DANCER」は「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」4位、なとりの「Overdose」は「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」13位、「国内で最も再生された楽曲」6位にランクイン。



今回の対談では、TikTokをはじめとするSNSプラットフォームから生まれる世界的ヒットの「音楽的要素」と「SNSの使い方」、その両面から二人の知見を語り合ってもらった。

なお、インタビュアーを務めるのは元TikTokの社員である編集者・音楽ライターの矢島由佳子。アーティストにとって「バズり続けなきゃいけない」時代の重圧、

常に数字が見える世界でいかにメンタルを保っているのか、

そして「ポップスに対するバズの功罪」まで話が及ぶ、貴重な対談となった。






―お互いを認識し始めたのはいつ頃ですか?imase:めっちゃ初期だよね。

お互いフォロワーが1000もいなかったとき。

なとり:活動を始めた時期がほぼ同じで。 僕は自分が投稿する前からimaseくんを見ていて――といっても初めてTikTokに投稿した日が、imaseくんは(2021年)5月3日で、僕が5月15日なんですけど―

―この人めっちゃすげえなと思って。

音楽面でいうと、僕はネット文化の系譜を受け継いでいるんですけど、

imaseくんに出会ったとき、それプラスR&Bの要素があると思って。

「このテンションの歌は聴いたことない!」と思って、度肝抜かれたんですよね。



imase:それでコメントをくれていて、フォローを返して。

なとり:「TikTok LIVEに入ってきてくれませんか?」って僕が言ったのが、最初の関わりだった気がする。imase:(2021年)6月頃かな?(TikTok LIVEで)「お絵描きしりとり」みたいなことをやってたよね(笑)。

なとり:僕のユーザーネームが「@siritoriyowai_」なんですけど、「お絵描きしりとり」で負けてそれになったんです(笑)。

imase:僕が「しりとり弱いね」って言って、罰ゲームでユーザーネームを変えて、ずっとそのままになってる(笑)。―あの名前はそういう経緯だったんですか!i

mase:だからずっと切磋琢磨してる仲というか。なとりが伸びて、俺が伸びて、またなとりが伸びて、みたいな。常に刺激を受けますね。


なとり:健全なライバルという感じですよね。




imase:どうやって曲を作っているかとか、どういうルーツなのかとか、

なとりから聞いたりもしますね。 いいところは盗みまくろうと思って。


なとり:僕はimaseくんのTikTokとかSNSの動かし方をめっちゃ参考にしていて。それこそ(「Overdose」の1曲前に)初めて実写の動画を出そうと思った理由も、imaseくんに「一回やってみたら」って言われたからで。imase:たしかに、言ったわ。あと、マイクは変えろって言ったよね(笑)。あまりにも音声が悪かったから「絶対にバズらないぞ。曲がいいのにもったいない」って。

なとり:そう。僕の一個前のマイクはimaseくんが誕生日に買ってくれたものです。「Overdose」の初期とかはそのマイクで録ったから、imaseくんの力がなかったら「Overdose」はバズってなかったかもしれない。imaseくんが教えてくれる曲の影響も大きくて。韓国R&BのDEANとかを教えてくれて、それをめっちゃ聴いてる時期があったり。imaseくんに教えてもらったアーティストで一番好きになったのはKroiですね。

imase:懐かしい、教えたね(笑)。そのとき「洋楽はあまり知らないです」って言ってたので、なとりのブラックミュージックのルーツに合いそうなプレイリストを送ったり。逆に僕はボカロをあまり聴いてこなかったので、

なとりから教えてもらったりしてました。―「ボカロ」「ブラックミュージックをベースにしたバンドサウンド」「世界的トレンドのビート」など、いくつものシーンの要素を引き継いで新しい時代の音楽を生み出している背景として、それぞれが詳しくないジャンルの音楽を互いに教え合っていたというのは重要な話ですね。自分たちの曲が海外にまで広まった音楽的な要因については、どのように考えていますか。



imase:Spotifyの「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」のランキングを見ると、アニメタイアップの曲もありつつ、SNSでバズった曲はリズム重視でノれるような曲調だなと思っていて。「NIGHT DANCER」も踊りやすいし、耳にも残りやすいのかなと。メロディに関しても、

なとりも僕もちょっと歌謡曲っぽさがあると思うので、根底にあるそのキャッチーさも海外で受け入れられた要因なのかな。


なとり:リズムもめちゃくちゃ大事だと思いますし、あとはグルーヴの出る言葉を選び続けると「日本語の音楽」というよりも「音楽」として海外の人に聴かれるので、そこにバズる要因があったのかなと思います。僕らの歌い方、なんか英語っぽいですよね?

imase:そうね。母音が柔らかいし、言葉の繋ぎも滑らかだし。なとり:ちょうど引っかかるところがないというか、いい意味で流れるように歌っていることはひとつの要因かもしれないです。―日本語の発音、母音の処理の仕方や韻の踏み方などでいかに歌にリズムやグルーヴを作るか、ということを二人は巧みにやってますよね。それが海外の人も心地よく感じる曲になっている要因のひとつだと私も考えてました。なとり:そこはimaseくんに影響を受けてますね。



imase:最近のアーティスト、わりとそういう方多いですよね。藤井 風さんもそうだし、紫今さんやjo0jiさんもそう。母音を崩すと聴き心地がよくなりやすいですよね。―その中でもimaseさんの歌い方はかなり特徴的ですよね。藤井 風さんが「ねそべり配信」で「NIGHT DANCER」をカバーしようとしたら歌えなかったじゃないですか(笑)。カバーできないほどの特徴があるということが、あれでも明らかになったなと。

imase:あれめっちゃ面白かったです(笑)。「NIGHT DANCER」と「Nagisa」、どっちも弾いてくれて嬉しかったですね。



「バズること」と「やりたいこと」のバランス

「数字」との向き合い方、未来を担う二人の使命感