現代のデジタルで仕上げられたアニメも年々ハイクオリティになっていて素晴らしいものも多い。だが、90年代のアナログの質感が残るアニメには魅力がある。今回紹介するのはいずれも、今のアニメに見慣れた人にも見てほしい作品ばかり。古臭く感じるかもしれないが、新しい発見があるはずだ。
 
■押井守監督によるOVA『御先祖様万々歳!』
 




押井守監督による『御先祖様万々歳!』は1989年から1990年にかけて発表されたOVA作品。
配信されておらず、
現在視聴するのは困難な作品となっている。 
 押井守氏といえば『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』などで知られ、
映画『花束みたいな恋をした』では「神」として登場した名匠だ。
観念的、哲学的な長い台詞回し、
現実と虚構をテーマにした一見難解なストーリーなど、他押井作品と同じく、
『御先祖様万々歳!』も例に漏れず監督の強い作家性が全面に出た作品だ。  
ストーリーとしては、マンションに暮らしている平凡な家庭に美少女が突然やってくる、
ドタバタコメディだが、
小劇場での舞台演劇のような演出を採用しているのが特徴で、
押井監督は「舞台が好きだという以上に、
台詞だけで成立するアニメーションを作ってみたいという思いがあったから」とインタビューで語っている。 
 筆者の個人的なオススメポイントとしては、
声優を務めた山寺宏一さんと鷲尾真知子さんによるデュエットソング「興信所は愛を信じない」などの劇中歌や毎話素晴らしい、
鳥肌が立つようなEDへの入り。
一流アニメーターがそろったことによるアニメーションのクオリティの高さなどだ。  
個人的には押井守監督作品でもトップクラスに好きな作品なので、
気軽に見れる環境にないことが残念でならない一作だ。