Who-ya Extendedの3rd EP「A Shout Of Triumph」が6月15日にリリースされた。

本作はテレビアニメ「ビルディバイド -#FFFFFF-(コードホワイト)」のエンディングテーマ「A Shout Of Triumph」を表題に、アンビエントな雰囲気の「Re:Painted」、
キャッチーなギターリフを軸にしたロックチューン「Bitty, Not Empty」、
エキゾチックなメロディが印象的な「half moon」と、、
“生きるとはどういうことか?”をテーマにしたバラエティ豊かな4曲で構成されている。
 
音楽ナタリーでは本作のリリースに際してボーカリストのWho-yaにインタビューし、3rd EPの制作エピソードについて話を聞いた
初のワンマンライブで得たものは?
 
──まずは2ndアルバム「WⅡ」の活動について聞かせてください。
2022年1月、5月にワンマンライブを行いましたが、手応えはどうでした?
 
まず1月のライブは、
初めてのワンマンだったこともあってすべての熱量を注いだので、
いい手応えを感じましたね。
こちらもどういう方々が来てくれるかわからなかったし、
お客さんも「どんなライブになるんだろう?」「何を見せてくれるんだろう?」というヒリヒリした感じがあって。
 ─かなり緊張感があった、と。
 
そうですね。
ライブの最中もそうだし、
終わったあともアドレナリンが出てたのか、
なかなか冷静になれなかったんです。
後日、ライブの映像を観直して、
歌や演奏はもちろん、
MCや曲のつながり方も確認できたし、
次に生かせるところもかなり見つかって。
やってよかったなと思いましたね。
5月のライブも最初の2曲はちょっとヒリヒリした感じがあったんですけど、
1月に比べるとオーディエンスとのキャッチボールができたというか。
皆さんの
パワーを受け取って、
しっかり共鳴しあえたと思います。
ライブをやるたびに「次につながる」という感覚があるし、
ステップアップするためにも、
とにかく数をこなしたいですね。
お客さんの反応を見て、「この曲がこれだけ盛り上がるのか」「だったら、次はこういう曲を作ってみよう」と思えるんですよね。
 
──楽曲制作にも影響があるんですね。
 
そうですね。去年の8月にやったライブを経て、「歌の“生感”を増やしたい」という思いが2ndアルバムに反映されていて。試行錯誤も多いですけど、経験を積み重ねるのは大事だなと。
 
──ライブはファンの皆さんと直接会える、貴重な機会でもありますね。
 
はい。5月のライブは渋谷のO-EASTだったんですけど、客席がフラットだから、後ろのほうまでよく見えたんですよ。
「あの人、1月のライブでも同じポジションにいたな」みたいなことに気付くこともあって(笑)。SNSのコメントやリプライも読んでるし、
少しずつコミュケーションできているのかなと。ライブの感想を知られるのも楽しいですね。
「こういう場面が記憶に残ってるのか」「水を飲んでるところまで見られてるんだな」とか、いろいろな発見があるし。
 
──パフォーマーとしても進化しそうですね。「ステージでは華のあるスターでありたい」みたいな気持ちもあったりします?
 
ライブのときって、当たり前ですけど、制作中ともプライベートとも違うじゃないですか。
ステージに上がるときはスイッチを切り替えるようにしたいし、華のある……って自分で言うとアレですけど(笑)、
そういう存在でいたいなと思いますね。
 
──普段通りのテンションでライブをやっているアーティストもいますけど、Who-yaさんはそうじゃない?
 
切り替えるようにしてますね、
どちらかというと。
パフォーマンスに関してもまだまだ経験が足りないと思ってます。どういうライブにしたいか、どういうライブにすべきかは、
もっと回数を重ねないと答えが出ないと思うので。
 そのときにやりたいことを形にする
 
──では、3rd EP「A Shout Of Triumph」についても聞かせてください。
「WⅡ」のインタビューでは、
「リリースを決めて、
そこから逆算するのではなくて、
“今”を見つめながら楽曲を作っていきたい」と言ってましたが、そのモードは続いていたんですか?
そうです ね。
このEPを作り終えてからも、
そこに関しては変わっていません。
リリースした作品を介して、
自分たちが何を考えていて、
どんなことをやろうとしているのかを受け取ってほしくて。
手紙じゃないけど、そういうやり取りをファンの人としていきたいんですよね。
なので「次はヘヴィロックでいこう」みたいなことではなくて、そのときにやりたいことを形にするのが大事なのかなと。
 
──作品を作ることによって、Who-yaさん自身も自分の考えをまとめることができたり?
 


確かにそれもあるかも。特に歌詞を読むと、「このときはこんなことを感じていたのか」と思うこともあるので。
 
──タイトル曲であり、アニメ「ビルディバイド -#FFFFFF-」のエンディングテーマでもある「A Shout Of Triumph」の制作はどんなふうに進めていったんですか?
 
エンディングテーマのお話をいただいてから制作に入りました。
まずは「ビルディバイド」の軸になっているもの、大切にしているものを踏まえて。
そこに自分たちがやりたいことをクロスさせながら形にしていきました。
アニメサイドの意向を咀嚼しつつ、
自分たちの音楽として表現したという感じですね。
 ─Who-yaさん自身は、「ビルディバイド」に対してどんなイメージを持ってるんですか?
 


「ビルディバイド」はトレーディングカードゲームとオリジナルアニメーションを融合させた作品で、
カードの強さやレアカードを持っているかどうかで貧富の差や住む地域が決まってしまうという世界が描かれていて。
この設定自体は現実にはあり得ないことですけど、
自分ではどうすることもできないものに人生を左右される、ということはあると思うんですよ。
家族だったり生まれた地域だったりで人生が決まることはあるし。
その視点を大切にしながら曲を作っていきました。
 
──実際、経済格差や文化の格差が問題になっているし、“親ガチャ”みたいな言葉もありますからね。
 
選択できない状況だったり、
顔も知らない人に何かを決められてしまったり……。そ
ういう大きいテーマはありつつ、
自分自身や周りの人たち、
あとは社会全体のことだったり、 
いろいろな視点を組み合わせながら歌詞も作りました。主観も入ってるんですけど、
それだけじゃないというか。
複数の視点が入っているのがWho-ya Extendedの強みだと思うので。
 ─ちなみにWho-yaさんは、自分ではどうしようもできない状態に直面したときは、どう対処することが多いですか?
 
冷めているのかもしれないですけど、
「しょうがない」と割り切って、ほかのことをやろうとするかもしれないですね。
この曲に関して言えば、テーマ自体はかなりシリアスだし、突き詰めるとどんどん暗くなっていきそうですけど、ただ「悲しい、つらい」と落ちていくんじゃなくて、曲としてはアッパーな感じにしたかったんです。
いろいろ試しながら、結果的にはダンスチューンに昇華しました。
やりたいのはエンタテインメントなので。
 
──華やかなダンストラックですよね。こういうテイスト、初めてでは?
 
そうかもしれないです。
ザ・ウィークエンドの「Blinding Lights」もそうですけど、
2年くらい前から80'sやユーロビートがリバイバルしてるじゃないですか。
僕自身もいろいろな音楽を聴いている中で、
そういうサウンドもいつかやってみたいと思っていて。シリアスなテーマに対して、 あえてポップで踊れるサウンドを合わせるのは面白いかもしれないなと。
 
─なるほど。歌い方もこれまで以上に軽やかな印象があって。意識してボーカルのニュアンスを変化させているんですか?
 
ポップに歌おうと思っていたわけではないし、歌い方自体を変えているつもりはないんですけどね。楽曲を聴きながら歌っていく中で、無意識のうちに「こういう感じがハマるな」と選んでるのかも。
 
──この曲をライブで歌うこともイメージしていますか?
 
5月のワンマンのセトリに入れていたんですよ。
新曲として披露したんですが、 
初めて聴いたからか人によってノリ方が違ってましたね。
踊ってくれてたり、じっくり聴いてくれてたり。
でも曲を通じて空間が1つになっている感覚があったし、
ライブでやる意味がある曲だなと思いました。
初披露だったので「どういうふうに受け取られるだろう?」と思ってだいぶ緊張しましたが(笑)。
歌った回数も少ないし、パフォーマンスも定まってないし、かなり手探りでしたね。
 
思い描いた絵になるまで何度でも塗り直せばいい
 
──EP全体のテーマはありますか?
 
テーマは “生きるってこういうことだよね”という感じです。
達観しているわけではないし、表現の角度は4曲とも違うんですけど、
EPを通して1つのテーマを描いているというか。もちろん正解はないですけど、4曲を聴いていただいて、
さまざまな視点から捉えてもらえるといいなと思ってます。
 
──2曲目の「Re:Painted」はアンビエントな雰囲気の楽曲ですね。
 
“Re:Painted”というワードが思い浮かんで、
そこから広げていきました。
タイトルが先だったんですけど、「人生において“塗り直す”ってどういうことだろう?」と考えてみたんです。
人生を絵に例えると、描いていたキャンバスごと変えるんじゃなくて、
思い描いた絵になるまで、
何度でも塗り直せばいいんじゃないか、
そういうふうに生きていけばいいんじゃないかなと思って。
それが「Re:Painted」のテーマですね。
─なるほど。Who-yaさん自身もそういう考え方なんですか?
 
自分というか、周りの人たちを見ていて感じたことですね。
それまでやってきたことがあるんだから、 「これは意味がない」と決めつけて捨てないでほしいなって。
もし捨てようとしても、それまでやってきたことは残っているし、
なかったことにするのは違うと思うんです。
そういう意味で「Re:Painted」には、自分の主観が強めに入っているかもしれないですね。
 
──ご友人とそんな深い話を普段からしてるんですか?
 
そういうわけでもないですけど(笑)、
ひさしぶりに友人と会うと、
将来のことだったり、
「このままでいいのかな」みたいな話になったり。
そういう会話から「興味深いな」と感じたことを歌詞に反映しているのかもしれないです。
 
──トラックの雰囲気も歌詞のテーマに合ってますね。
 
盛り上がる曲ではないし、
バラードでもないんですよね。
リズムを刻まず、ギターやシンセを重ねながらイメージに近付けていきました。
 
──そして3曲目の「Bitty, Not Empty」は、シンプルなロックナンバー。一緒にシンガロングしたくなるようなフレーズがあるのも新機軸なのかなと。
 
そうですね。いろんな場面で「Who-yaの曲は難しすぎて歌いづらい」と言われることがけっこうあったんですよ。
キーは高いし、歌詞が詰まってるし、裏で拍を取ることも多いので、
確かに歌うのは大変なんだろうなと。
あとはライブの影響も受けてるんですよね。
1月のライブも5月のライブもお客さんが声を出せない状態で、
皆さんと一緒に歌うライブを経験したことがないんですけど、
声出しがOKになったときに今の曲だけで大丈夫なのかなと思ったんですよね。
 
──オーディエンスと合唱して楽しめるような曲が欲しいと。
 
はい。イントロから合唱できて、
ライブの空間の中で1つになって盛り上がれるような。
今後を見据えて、
そういう曲があったほうがいいなと思って作ったのが「Bitty, Not Empty」なんですよ。
もし曲を知らなくても、
その場で聴いてすぐに歌えるメロディだと思うし、ワンマンはもちろん、
フェスやイベントで自分たちのことを知らない人たちとも楽しい空間を作りたいので。
 
──歌詞もかなりポジティブですね。
 
前向きな意志がはっきり出ていると思います。
軽やかなギターサウンドに合わせて、 
歌詞もあまり難しいことは言わず、
できるだけストレートに書こうと思って。
早くライブで歌いたいです。皆さんと一緒に歌える日も、
そう遠くはないような気がするので……。
海外のフェスは、去年くらいから声出しが復活してるじゃないですか。
最近の海外フェスの映像を観て、
一瞬コロナ前の映像なのかと思って驚きました。
 
──日本も少しずつ戻ってくるといいですよね。「Bitty, Not Empty」はストレートなロックチューンだけに「この曲のギターを弾いてみたい」と感じる人も多いのではないかと思いますが、
Who-yaさんは10代の頃、
どんな曲をコピーしてました?
 
最初はやっぱりシンプルなリフの曲でしたね。Green Dayとかハイスタ(Hi-STANDARD)とか。Linkin Parkも好きなんですけど、
難しくて弾けなかったです(笑)。「Bitty, Not Empty」のギターはシンプルだと思うので、ぜひ弾いてみてほしいです。
 すべての物事は表裏一体
 
──4曲目の「half moon」はエキゾチックなムードの楽曲ですね。トラック、メロディを含めて、非常に美しい曲だと感じました。
 
ありがとうございます。
奥行きや深みのあるトラック、
印象に残るリフを意識して、
いいバランスになったんじゃないかと思います。楽曲全体のテーマは、
そのままですけど“半月”ですね。
すべての物事は表裏一体というか。
誰にでも「これは正しい」「これは間違っている」という思いがあると思いますけど、場所や時間、見ている位置によって、大きく変わってくると思うんです。
正解と間違い、いいと悪いは表裏一体というのを“半月”に例えて曲にしてみたいなと。
月の形も、住んでいる国や場所によって違って見えるので。
日本人は月を見て「美しい」と感じる人が多いと思いますけど、違う国の人は「冷たい」「不吉」というイメージを持つこともあるだろうし。
 
──立場や生まれ育ち、ジェンダーなどによっても、モノの見方は変わりますからね。意見の違いによる分断も深刻だし。
 
そうですね。普段からなるべくニュースを見るようにしているんですけど、
同じニュースなのに、メディアによって言っていることがまったく違うこともありますし。
正解なんてないんだなと感じるし、
事実かどうかもわからないまま、信じてしまうのも怖いなと。
 
──そうですね。ちなみにCDジャケットには初めてWho-yaさん本人の写真が使用されていますが、これはどうしてですか?
 
これまでCDジャケットやキービジュアルはイラストがメインだったんですが、
それは純粋に音楽と歌だけを届けたいという気持ちがあったからなんです。
でも、2年と少し活動を続けてきて、「THE FIRST TAKE」や2本のワンマンライブ、ミュージックビデオなどで自分の姿を見てもらう機会が増えてきたんですよね。
だからこのタイミングでCDジャケットで顔を出しても大丈夫だろうなと。
 ─ジャケ写やMVに関しても、Who-yaさん自身のアイデアが投影されているんですか?
 
そこも話し合いながら進めています。
全体のテーマをもとにして、
デザイナーの方、映像作家の方とやり取りしながら、任せるところは任せるし、
「こうしたい」という思いはお伝えして。「A Shout Of Triumph」のMVも監督としっかりコミュニケーションを取りながら撮影しました。
 
──“作品ごとにいろいろなクリエイターと組む”というスタイルも進化している?
 
そうだと思います。
歌詞も自分1人で書いているわけではないし
、関わってくれる方々もWho-ya Extendedというプロジェクトへの理解度が高まっていると思うので。
 
──次作の制作も始まってるんですか?
 
やってます。いつ発表できるかはまったく決まってないですけど、
最初にお話したように、
今後もそのときにやりたいことを形にしていけたらなと。
ずっと試行錯誤しているし、形にするのは難しいなと思うことも多いんですけど、だからこそお届けできるときの喜びがある。
簡単だったら、やる意味もないのかなと。
ライブも増やしたいですね。
ワンマンだけじゃなくて、イベントやフェスにも出たいんですよね。
Who-ya Extendedを知らない人の前で、どこまでやれるか確かめたいので。
 プロフィール
 


Who-ya Extended(フーヤエクステンデッド)
 
ボーカリストWho-yaを中心としたクリエイターズユニット。2019年11月にテレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3」のオープニングテーマとなったシングル「Q-vism」でメジャーデビューし、2020年4月に公開された映画「PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR」でも主題歌を担当した。2021年2月にテレビアニメ「呪術廻戦」第2クールのオープニングテーマ「VIVID VICE」を表題曲とする1stEPをリリース。2022年6月には、アニメ「ビルディバイド -#FFFFFF-(コードホワイト)」のエンディングテーマ「A Shout Of Triumph」を表題曲とする3rd EPを発表した。