目が人を騙す | ゴルフ直線打法

目が人を騙す

データから有効な情報を見つけ出そうとする人達に対する警句として、これまで「目が人を騙す」という言葉を言い続けて来ましたが、前回の「円周イメージを打ち破る」(08-02-09)も、目の騙しの効果を打ち破る方法の話だったのです。

物を見る時の危険として、「目が人を騙す」以上に、「人は見たいものを見る」ということがあります。こうではなかろうかと思うと、それを裏付けるように目に入るデータを扱ってしまうのです。ゴルフの場合もこれが多く、何かの「理論」を聞いたり読んだり思い付いたりすると、人のスイングをこの見方で解釈するようになります。

「目が人を騙す」という危険をこのブログで強調しても、テレビの「有名人」の言葉とは違い、多くの人の注意を引くことはなさそうです。そこで虎の威を借りる狐の諺に従い、この言葉を裏付ける有名な人の発言を引用することにしました。この人はシャーロック・ホームズです。

コナン・ドイルが生んだ、優れた探偵の典型シャーロック・ホームズには、「明白な事実ほど人の目を欺くものはない」(”There is nothing more deceptive than an obvious fact.”)という言葉があります。科学的な推論法の議論を展開したC.S. パースとホームズの話を対比した「シャーロック・ホームズの記号論」(T.A.シービオク J.ユミカー=シービオク著 富山多佳夫訳 岩波書店1994年)に、この話が取り上げられています。まさしく「目が人を騙す」というわけです。

スイングの「左右対称イメージ」もその一例です。レッドベターの「100パーセント・ゴルフ」(塩谷紘訳 新潮社)には、バックとインパクトの動きについて、「体を捻る動作とコイルをほぐす動作は、驚くほどの左右対称図を描く」とあります(58頁)。左腕は左右、右腕は上下、という「革命的イメージ」は、これに真っ向から対立しますが、これを具体化しようとすると、左右対称イメージが忍び込みます。

体の正面から、左拳(こぶし)を右の遠くへ伸ばすバックの動きでは、腕は自然に外側に回ります。左の肩と腕の「魔法の動き」です。問題はここから拳を左の遠くに運ぶ動きです。拳を左の遠くへ一気に振ると、肘が伸びて左腕が外側に回ります。この時、拳の動きはバックの動きとは対称にはならず、体の正面に相当する位置が左に移ります。微妙な動きですから、自分で実際に試してみて下さい。

ボールを打つ動作としてこの左腕の動きを実用化するには、「左右対称イメ-ジ」を打破する必要があります。これは大変な仕事で、これが「核心打法」実用化の鍵になります。この鍵を「体の右側で振り切る」というイメージが与えるのです。スイングは円周とは言わなくても、インパクトを左右対称の動きと見るのは、多くの指導者が教えて来た見方です。今の実験の立場からは、これも「目は人を騙す」実例になりそうです。