しなやかな背骨の動き | ゴルフ直線打法

しなやかな背骨の動き

「上体を右に回す動き」でボールを打つというこのブログの主張には、まだ熱烈な賛成意見(!)は寄せられていません。「上体を右に回して腕が左へ振れる筈がない」という感じでしょうか。もしそう感じたら、短いクラブを両手で握り、右脚外側からヘッドを左へ振ってみて下さい。

腰の左への移動あるいは回転で引き戻すと、インパクト時点ではフェースが開き気味あるいは閉じ気味になりながら、リストが回って振り抜けます。これに対して、先ず上体を右に回す動きを試し、この動きを使ってヘッドを左へ引き抜くと、ヘッドが「インパクト面」(ボールのライの平面)上を真っ直ぐ左へ引き抜かれます。この違いは極めて安定的なものです。自分の小さなスイングの動画でこれらの動き、特にスクエアにヘッドが引き抜かれる動きを見た時のショックは忘れられません。

この動きの基本は背骨の動きです。以前はダウンで腰は左に回ると考えていました。この場合、骨盤帯(腰周り)の動きで、背骨は右前方向に傾くことが知られています。嘗て切手の図案にも用いられた、浮世絵師菱川師宣の「見返り美人図」の動きです。腰が左を向き、背骨を傾けて右を見る女性の姿は、右の敵を見て左へ逃げる「右敵左逃」(06-03-26)の姿にも見えます。絵の場合は逃げるつもりはなく、逃げる雰囲気を漂わせている様子を描いたものでしょう。

先日、目のイメージより速い動きを別の動きで捉えるという話(「動きの源泉は?」(06-04-07))で、動きの始まりはどこからという哲学的な議論に近づいた時、古くからの友人が神経内科医ラマチャンドランの著書「脳の中の幽霊、ふたたび」(山下篤子訳 角川書店 2005年)を送って呉れました。ざっと眺めると、12世紀に作られたシバの女神像の写真が目に入ります。

このブロンズ像は、神経科学の視点から著者が提案するピークシフトと呼ぶ芸術上の法則に基づき、男には難しい女性の姿勢の特徴を誇張し、見る人はそこに美しく神々しい女神を見るという説明があります。となれば、「見返り美人図」もまたその一例ということになりましょう。

ところが、描き出された優美な姿勢は、「頭がどちらかに傾き、体幹がその反対に傾き、腰がまた反対に傾く」という三重の屈曲から構成されているという説明があります。これは、「背骨は回る?」(06-03-25)で話を後回しにした、背骨の動きの簡潔な表現なのです。背筋を真っ直ぐ伸ばせと教えられて来た日本男児には、難しい動きなのかも知れません。このような動きは、背骨を構成する椎骨の回転的な動きが生みます。腰椎は左に引かれながら右に回って体幹を右に振り、胸椎が右に引かれながら左に回り腕が振られるのです。詳しい話は次回に。