技(わざ)は体力の有効利用 | ゴルフ直線打法

技(わざ)は体力の有効利用

前回マスターズの優勝者フィル・ミケルソンのゆったりとした歩き方の印象に触れましたが、テレビやインターネット上の画像で見る限り、彼のスイングは常に極めて安定しています。動きに合理性があるわけです。ところが、彼の優れた体格を見ると、動きの文化の問題以前に、体力の相違があるのではという意見が出そうです。

ここで登場するのが、天才的なゴルファーであった戸田藤一郎プロの特徴的な技です。手許にある早瀬利之氏の力作「右手」(立風書房版1988年)によれば、彼は二回目の渡米で冬のツアーに参戦中、右手の合理的な使い方を中心とする新しい打法を開発し、5尺2寸の体で大活躍をしています。5尺2寸といえば160センチに達しない小柄な体格です。彼のスイングについては、「日本刀を振り回す」ようなとの印象が紹介されています。

この打法の特徴的な動きは右腕と右手の使い方にあり、この動きを支える体の動きが問題になります。杉山悟氏の「プロの極意」(白馬出版 1987年)には、戸田プロの極意として「からだは回さず、ひねりを使う」があります。右手のボクシングのパンチのような突きの動きを、この体の動きで支えるのです。重い右腕の動きを、体重を掛けた背骨の動きで支える打法に見えます。

更に、「左手首をスエーさせないように止めておいて、右手で打つ」という説明もあります。この打法の開発で、ドライバーの飛距離が200ヤードから300ヤードに伸びたとのことで(浜 伸吾編著 ゴルフ 日本のテクニック ベースボール・マガジン社 1986年)、ボクシングの打撃動作、あるいは日本刀の急速な振りの体の動きが、160センチ足らずの体格でも米国のプレーヤーと互角に戦うことを可能にしたことが分かります。

早瀬氏の「右手」によれば、戸田プロの打法は日本の優れたプロゴルファーに伝授されということですが、残念ながら「和魂洋才」の支配するこの国では、アメリカのゴルフ教師の言説が重視され、戸田式打法は少なくとも普通のゴルファーの世界には定着しなかったように見えます。その原因は、動きの構造に常識的には捉え難いものがあったためと考えられます。

皮肉なことには、現在のアメリカのゴルフ教師の言説には、脚で腕を振る「洋魂和才」風の動きを勧めるものがあります。日本に紹介されるこれらの教師の打法は、ボディーの大きな動きで腕とクラブを引っ張り、インパクトを遠心力で振り抜くというダウンの動きを勧めるように見えます。これでは日本刀を振り下ろす感覚の動きにはなりません。背骨の動きが消えているのです。