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11日、「ブラック企業大賞 2013」の授賞式が都内で行われた。不名誉な「大賞」を受賞したのは、下馬評通り「ワタミフードサービス」だ。ネット投票では全体の7割を超える2万票以上の圧倒的な得票数を獲得。当日投票でもワタミがぶっちぎりだった。

 ブラック企業大賞は昨年創設され、今年で2回目。実行委員会は弁護士、大学教授など労働問題のエキスパート11人で構成されている。委員でルポライターの古川琢也氏に選考の過程を聞いた。

「実行委は4月下旬から労働法に抵触したり、パワハラなど暴力的強制を従業員に強いる企業をピックアップ。

6月27日にノミネート企業を発表しましたが、大賞はほぼ全会一致でワタミに決定しました。08年6月に入社2カ月の女性社員が過労自殺しているわけですが、同社は遺族との面談を拒否しているうえ、その遺族を相手取って同社が払うべき損害賠償金を確定させようと調停を申し出た

。面会も謝罪もしないで、いきなり法廷で金銭解決とは冷酷です。しかも、創業者の渡辺美樹参院議員は今月2日付の朝日新聞のインタビューで、自殺した社員の適性に問題があったかのように言っている。遺族はどう思われたでしょう」

 とはいえ、ヒドイのはワタミだけではない。今回、ワタミのほかにノミネートされた企業は「ベネッセコーポレーション」「西濃運輸」

「東急ハンズ」など7社。約50社から厳選したというが、昨年、全国の労働基準監督署は、法令違反の疑いがある13万件以上の企業に監督指導を行っている。これだって、氷山の一角だろうから、ブラック企業の件数は何十万社になってもおかしくない。

「その中でノミネートした8社は知名度があり、企業イメージがいいのに、内情がまったく違う企業です」(古川琢也氏=前出)

 そうやって企業の労働者軽視をアピールしなければ、全国に広がるブラック企業の蔓延(まんえん)に歯止めがかからない。

実行委員会はそう言っていたが、ブラック企業がかくも幅をきかすのは、テレビと新聞にも責任がある。「NNNドキュメント」のチーフディレクターを務め、現在は法大社会学部メディア社会学科教授の水島宏明氏はこう言っている。

「たとえばブラック企業大賞『業界賞』に選ばれたクロスカンパニーは、人気女優の宮崎あおいさんを起用して“earth music&ecology”というブランドのテレビCMと新聞広告を大量に出稿しています。

だから、テレビは過労死があっても報道しないし、新聞も小さなベタ記事程度。きちんと問題を報道しないメディアは結果的にブラック企業を助長しているのと一緒です」

<これじゃサラリーマンは泣かされ続ける>

 ノミネートされた王将フードサービスにしたって、マスコミは一時期、「餃子の王将」で頑張ったバイトが店長にステップアップしていく“出世物語”をこぞって取り上げた。

中にはタイアップもあったとされ、実際、テレビが王将のネガティブ報道をすることはほとんどない。政府の無策もブラック企業が増殖する原因だ。田村厚労相は「きっちりと対応していきたい」と言い、9月は約4000社に立ち入り調査を実施するというが、期待できそうにない。

「行政の言う“対策”とは、マスコミ向けの一過性のポーズであることが往々にしてあります。たとえば厚労省は5年前、違法派遣を繰り返していたとして、グッドウィルの全支店に事業停止命令を出しました。

ところが、違法派遣は今も抜本的改善はしていません。折口雅博会長が自己破産して、うやむやになったまま。ブラック企業問題も監視を続けなければいけません」(水島宏明氏=前出)