父にキャッチボールをしてもらった。

 

 

クズで、酒乱で、

 

どうしようもないクソ親父だった。

 

 

それでも、最初から「クズ」だったわけじゃない。

 

 

最初は真面目に働いていた。

 

 

 

「トラック運転手」

 

 

今は、

 

 

「2024年問題」

 

 

騒がれる渦中の業界だ。

 

 

過酷な仕事だ。

 

 

・・・・ましてや、

 

父は、

 

「長距離運転手」だった。

 

 

日本全国を走る。

 

 

一度、家を出れば、1週間帰ってこない。

 

 

幼い日。

 

まだ、小学校に上がる前。

 

父は、ボクを仕事に連れて行ってくれた。

 

 

一緒に1週間の旅に出た。

 

 

まだ、コンビニが全国にいきわたっていない時代。

 

国道沿いの食堂で一緒にご飯を食べた。

 

そして、一緒に銭湯に行った・・・・連れていかれて、洗ってもらう。

 

一緒に湯船に浸かって温まる。

 

 

・・・・そして、一緒に寝た。

 

 

寝るのは、

 

トラックの後部だ。

 

 

大型トラックは、運転席の後ろが簡易ベッドになっている。

 

 

・・・・そこで、一緒に寝た。

 

父に抱かれて眠った。

 

 

 

小学校にあがる。

 

もう、一緒には旅に出れない。

 

 

父はいつの間にやら・・・・ボクが眠っている間に仕事に行き、

 

ボクが眠っている間に帰ってきた。

 

 

1週間の航海を終え、

 

たまの休み。

 

 

父とキャッチボールをする。

 

 

まだ、

 

野球がプロスポーツの王道だった時代だ。

 

 

スポーツ選手と言えば「野球」だという時代。

 

 

子供たち、全員が野球をしていた時代だ。

 

 

父とのキャッチボールが、何よりの楽しみだった。

 

 

嬉しかった。

 

大きな・・・

 

大きな、

 

大きなトラック。

 

道路一杯を走る大型トラックは、ボクの・・・・子供たちの「憧れ」だった。

 

 

・・・・それを運転する父は、子供たちのヒーローだった。

 

 

 

キャッチボールは、

 

その父を独占することだった。

 

 

・・・・幸せな時間だった・・・・

 

 

 

大きくなり・・・

 

 

大人になって、

 

 

父の代わりとなってキャッチボールをした。

 

 

 

小学生の弟。

 

中学生の弟。

 

高校生の弟。

 

 

キャッチボールをした。

 

 

 

キャッチボール。

 

父子の会話。

 

兄弟の会話だった。

 

 

 

「お父さん殺したのボクかもしれない・・・」

 

 

弟の告白。

 

 

 

テラーノベル。

 

 

「父を愛した」父を憎んだ。

 

 

更新しました。