「業務提携」の申し出があった。
持ち込んできたのは、担当税理士だった。
税理士とは、ここまで二人三脚でやってきた。
仕事で始まった関係だったけれど、
趣味や、考え方が・・・・なんか、ウマが合ったんだよな。
どこか、「友人関係」みたいなふうになっていた。
この税理士。
由緒正しい税理士で、
まぁ、
よくあるパターンでもあるけど、
「税理士一族」って家系なんだよな。
親父さんが大きな事務所をやっていて、
長男さんが、そこを継ぐために中に入っている。
自分は次男なので、勝手気ままにやってるんですよ。・・・・ってことで、個人事務所を開いていた。
で、
気に入った顧客しか担当しないってヤツだった。
で、
当然に、ベンチャーとか、
なんだか、見ていて、ワクワクするような人間しか、顧客にしないって先生だった。
「業務提携」
・・・・・税理士の「本家」
親父さんの事務所経由で持ち込まれた話だった。
で、
さっそく会いに行った。
待ち合わせは、
赤坂の喫茶店だった。
赤坂・・・・都心の都心、
こんなところに「喫茶店」が・・・・しかも、古き良き時代の喫茶店って店構えだった。
いや、
場所柄、
ビルの地下にあったんだけどね。
珈琲が驚くような値段だった。
客は疎ら・・・・
各テーブルが・・・・
ほら、
あの、
銀行とかの「相談コーナー」みたいな、
簡易な壁で仕切られてるような、あんな感じでできてる。
要するに、
「喫茶店」・・・・密談場所にもってこいって場所だったんだよな。
店に入って行けば、先方はすでに待たれていた・・・・もちろん、ボクは時間に遅れてはいない。
名刺交換。
先方はひとりでいらっしゃっていた。・・・・もちろん「代表取締役」
直観でわかった。
「東大卒だな」
なんとなく、
「東大」
「早稲田」
「慶応」
なんとなくわかるんだよな・笑。
これまで外れたことがない・笑。
特に、
「東大卒」
圧倒的な、
なんか、個性的だよな。
歳はボクよりも一回り上だった。
建築のメンテナンスの会社だった。
建築メンテナンスって、仕事が「幅広い」
部屋内もあれば、建物外部もある。
清掃があれば、リフォームだってある。
・・・・ところが、この社長、
まったく、「建築畑」の人物ではなかった。・・・・いや、そうとも言い切れないか・・・
「官僚」だった方だった。
理由があって退官され、創業された会社だった。
国交省の役人だったんだよな。・・・・だから「畑違い」とは言い切れない。
しかし、現場仕事には、全く無縁だ。
役人時代の「人脈」によって会社を経営していくってパターンの方だった。
・・・・で、「上場」を目指している。・・・・すでに視野に入っている。
聞いてみれば、
すでに売り上げは「30億円」を超えている。
ボクの感覚じゃあ、
すでに上場していておかしくないレベルだ。
・・・・で、
この会社、
創業の成り立ちが成り立ち、
社長が、元国交省の役人。
幹部も、それに準ずる人材ばっかだった。
・・・ってことで、
会社の中に「現場の人間」が不足していた。
「東大卒」
「国交省OB」
このふたつの人脈によって成り立っている会社であって、
実戦。
つまり、「現場」は、
全て外注、協力会社で賄っていた。
・・・・・もっと言えば、
「現場監督」すら、社内で賄えていない。
会社としての弱点が、
どうにも「現場力」にある。
現場力を高めれば、
もっと「良い会社」に・・・
簡単に言えば「儲かる会社」になるんじゃないかと考えていた。
「現場力」
そこを強化すれば、
押しも押されもしない「上場企業」になれる。
そう結論づいていたそうだ。
ウチを手に入れれば、
現場監督は当然として、
「現場」の全てが手に入る。
まさしく「渡りに船」って状態だったらしい。
ボクにとっても「渡りに船」
理想的な相手だった。
・・・・・ここから、ミーティングを重ねていくことになったんだ。
ミーティング。
要は「面接」って感じだった。
いつも、社長に、どこかに連れていかれた。
そして意見を求められる。
・・・・そっか・・・
こいつは「就職試験」ってことだな・・・・・