会社内。

 

ほとんど誰もいないフロア。

 

・・・・一角だけ、煌々と電気が点いてる。人が動いている。

 

机島。

 

 

「ふぅ・・・・」

 

 

ボクは、椅子にもたれかかり、ホッと溜息をついた。

 

 

・・・・やっと終わったぜぇ・・・・

 

 

パソコンの電源を切った。

 

 

眼がショボショボする・・・・

 

顔全体が脂ぎった感じだ。・・・・髭も伸びた・・・

 

 

・・・・早く顏を洗いたい。

 

 

風呂入りたい・・・

 

 

腹へったぁ・・・・

 

 

 

仕事道具を引き出しに片付けた。

 

席を立つ。

 

 

「お疲れさまっしたー、お先でーす」

 

 

「おう」

 

あちこちから声がかかる。

 

先輩たちは、まだ仕事が残ってる。・・・・今日も帰れないのかしらね・笑。

 

 

ついこないだ結婚した先輩も「残業300時間」だ・笑。

 

 

 

ボクは、タイムカードを押してオフィスを後にした。

 

 

表に出れば、すっかり朝だ。

 

 

・・・・・久しぶりの「完全徹夜」になってしまった。

 

金曜の朝から・・・・土曜の朝までかかってしまった。

 

 

納期が近い。

 

 

まぁ、

 

いつものこと。

 

しょうがない。

 

 

でも、まぁ、ここからは週末だ。

 

 

今日は、帰って寝るだけだとしても、

 

明日の日曜日は完全休日だ。

 

 

 

守衛さんに挨拶して、門を出れば、

 

土曜日の早朝の風景だ。

 

まだ、町は動き出していない。

 

 

 

チュンチュンチュン・・・・

 

 

 

道路端。

雀が朝の散歩をしている。

 

 

静かな町に、雀の声だけが聞こえる。

 

 

 

う~~~~んんんん・・・・はぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・

 

 

 

あくびをしながら歩く。

 

 

・・・・さーて、週末は、どーすっかなぁ・・・・・・

 

寝てから フェアレディ Z で首都高に繰り出すか・・・・

 

 

 

と、

 

長閑な土曜日の朝を切り裂く、

 

うるさい蝉みたいなエンジン音。

 

 

前から「熊のバイク」が走ってきた。

 

 

まったく、

 

朝からご苦労なこった・笑。

 

土曜日。

 

早朝。

 

「売れないアイドル」

 

親衛隊長の、ご出勤らしい・笑。

 

 

おむすび君が、ボクに気づいて原付を停めた。

 

 

 

「今からか?」

 

 

「・・・・今日は違うんだ・・・・・・」

 

 

フルフェイス、ヘルメット越し、

 

うるさい蝉のエンジン音。

 

聞こえない。

 

 

・・・・・はぁ・・・???何だ・・・・?

 

 

 

おむすび君がエンジンを切った。

 

ヘルメットをとる。

 

 

 

「今日は、道場行くんだ」

 

 

いつもの、ニコニコ顏のおむすび君。・・・いつもより嬉しそうだぞ。

 

 

 

・・・・・はぁ・・・???・・・・・え・・??・・・・道場・・・・って・・????

 

 

 

リュックの中。

 

真っ白な道着を見せてくれた。

 

胸には、マンガで散々に見た、憧れの名称が入っている。

 

 

 

「じゃあ、なぁ~」

 

 

うるさい蝉の声を残して、おむすび君が去っていく・・・・

 

 

ボクは、

 

バイクに乗る熊を見送った・・・・・

 

 

 

おむすび君の行先。

 

 

「空手道場」だった。

 

 

・・・・しかも、

 

最強と謳われた、

 

 

伝説の、

 

 

「牛殺し」

 

大山倍達館長が作り上げた、

 

 

 

「極真空手」だった。

 

 

呆然と見送る。

 

サーカスの熊。

 

後光が差してるように見えた・・・・