「うっせぇんだよテメェら!さっきからよぉ!!」

 

 

ぶちキレた!!

 

とばかりに、ヤンキーたちが立ち上がる。

 

 

どうやら、ボクたちの店での振る舞いが気に障ったらしい。・・・・確かに先輩は「我が物顔」って感じで店に居るもんな。

 

 

リーダーらしいのが、ズカズカとやってきて先輩に掴みかかろうとした・・・・・・

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

おむすび君がサッと立ち上がる。

 

 

目にも鮮やか。

 

 

スッと、先輩との間に割って入った。

 

 

 

「すいませーん!」

 

 

おむすび君がヤンキーに抱きつく。

 

 

「すいませーん。すいませーーーん!」

 

 

「なんだ、てめぇ!」

 

 

ヤンキーは、おむすび君に掴みかかろうとする。しかし、ガッチリと抱きつかれて掴みかかれない。

 

ただ、手が宙をバタバタするだけだ。

 

 

「すいませーーん!すいませーーん!」

 

 

おむすび君が、ヤンキーをカウンターへと押し戻していく。

 

 

当然、周りのヤンキーが黙っていない。

 

全員でおむすび君に掴みかかろうとする。

 

 

と、

突然、抱きついていたヤンキーが右側に倒れた・・・・足がもつれたようだ。

 

だいぶ酔ってる感じだもんな。

 

 

「大丈夫っすか?」

 

 

倒れた・・・・倒れそうになっているヤンキーを抱きかかえるようにおむすび君が言う。

 

 

ヤンキー立ち上がる。

 

 

「てめぇ、ふざけねてんじゃねーぞ、こら!」

 

 

掴みかかろうと・・・・すると・・・・・今度は左に倒れた。

 

 

あれ?

泥酔状態なのか・・・???

 

 

ガッ!と、別のヤンキーが掴みかかろうとする。

 

・・・・それを邪魔するように、リーダーヤンキーが前に倒れ込む・・・・

 

 

 

最初、何が起こったのかわからなかった。

 

 

 

ただの酔っぱらい。

 

リーダーヤンキーがフラついてるように見えた。

 

 

 

・・・・・違った。

 

おむすび君が「防戦」しているんだと気づいた。

 

 

 

台詞は、相変わらず、

 

 

 

「すいません、すいませーーん!」

 

 

 

台詞としては、謝っている。

 

しかし、リーダーをいいように振り回していた。

 

リーダーを盾として、

 

振り回し、

 

雑魚どもを防いでいるんだった。

 

 

 

「すいませーーん。すいまっせん。勘弁してくださーい!」

 

 

 

最初、事態が呑み込めなかったヤンキーたちも、気づく。

 

 

振り回されてるリーダーを遠巻きにする。

 

 

・・・・と、

 

おむすび君が手を離した。・・・・ってか、リーダーを投げ放った。

 

 

 

仲間たちの中に収まった。

 

 

 

ヤンキーリーダーの戦意は喪失している。・・・・ってか、何が起こっているかわからない感じだ。

 

 

ただ、

 

 

「勝てる相手じゃない」

 

 

それだけは、わかったらしい。

 

 

 

リーダーは、

 

カウンターに1万円札を投げると、

 

 

 

「覚えてろよ!」

 

 

 

漫画、劇画、のまんまに捨て台詞を吐いて出ていった。

 

 

 

 

「塩撒いてやんな!」

 

 

 

ママが言い放ち、

 

塩のケースを取り出した。

 

 

 

よく来る客ではあったらしい。

 

 

・・・・が、いつも、安酒でねばり、女の子たちに相手を強要する。

 

 

店としては、ホトホト迷惑・・・・嫌な客だったらしい。

 

 

女の子たちが、入口に塩を撒いている。

 

 

 

・・・・・ボクは、全く動けなかった。

 

 

ただ、ぼぉ~~~~っと、おむすび君の動きを見ていただけだった。

 

 

 

あっという間の出来事だった。

 

 

で、それは、先輩も同じ。

 

 

 

女の子たちが、結界を張るように、「盛塩」を、ドアの両サイドに作った。

 

 

 

ボックス席。

 

 

数分前と同じ光景だった。

 

 

相変わらず、

 

先輩は、

 

 

「両手に華」だった。

 

 

 

・・・・いや、ちょっと状況は変わっている。

 

 

先輩が煙草を咥えれば、「彼女もどき」が火をつけた。

 

 

・・・・もうひとりの女の子は・・・・

 

 

 

「はい、あーーーーん・・・・」

 

 

 

フォークで、りんごを「おむすび君」の口へと運んでいた。

 

 

女の子はニコニコ顔だ。

 

 

「ステキ・・・・」

 

 

眼が囁いていた。

 

先輩の煙草に火をつける気なんぞ、もうサラサラない。

 

 

 

古今東西。

 

 

男の魅力は、

 

 

「いざという時の行動力」だ。

 

 

中でも、

 

 

「守ってくれる力」

 

 

それが、一番の魅力だ。

 

 

 

「世界平和」

 

 

「戦争反対」

 

 

それを言うには「力」が必要だ。

 

 

実力の無い「言葉」

 

 

覚悟のない「言葉」

 

 

そんなものには意味がない。

 

 

 

・・・・・そして、女の子の心には響かない。

 

 

 

フォークを差し出す女の子の「変化」とは違って、

 

 

おむすび君は、全く変わらない。

 

 

 

さっきの、「大立ち回り」

 

 

そんな「高揚感」や・・・・「熱量」は全くなかった。

 

 

中学校の昼休み。

 

 

体育館でバスケで汗を流したぜ。

 

 

そんな感じにしか見えなかった。

 

 

 

おむすび君。

 

 

立ち回りとはうってかわって、女の子のリンゴ攻撃に汗をかいている。アタフタしている。

 

 

どーやら、

 

ヤンキーより、女の子の方が「苦手」らしい・笑。

 

 

 

・・・・思い出していた。

 

 

雰囲気が似ていたんだった。

 

 

 

死んでしまった同級生。

 

・・・・ボクが守ってやれなかったヤツ・・・・

 

 

ヤツに似ていたんだった。

 

 

 

べつに、

 

ヤツは、

 

こんなふうに、「大立ち回り」を演じるヤツじゃなかった。

 

 

・・・・まぁ、スポーツマンではあったけど・・・・・

 

テニス部のキャプテンだったもんなぁ・・・・

 

 

ただ、見てくれとか・・・

 

「おむすび顏」とか、

 

この「笑顔」とかの雰囲気が似てるんだった・・・・

 

 

 

でも・・・・

 

 

おむすび君。

 

 

お前は、

 

いったい、

 

何者なんだ・・・・???