99年の早春に、あえなく天に召されたとき、
代わりのあんぷということで、白羽の矢をば立てたのが、
このひとの巨体だったのです。
それは何故か?と尋ねたら、このひとが世にデビューした1991年、
ここのところのエントリーで、幾度か名の出た 「教祖様 」が、
「MOSの良さがよく出たあんぷ」と、褒めていたのを知っていたから。
加えてこのひとの弟機である、333ESL様 も、
下にも置かぬ絶賛ぶりで、その、いわば兄機が悪いはずないと、
ろくろく試し聴きもせず、中古の品を購めたのです。
持って帰って梱包を、開けたるときの驚きは、
今でも忘れられないのです。
うぇぇ~~~~!、すげ~~~~!!、
でっけ~~~~!!!
そう、このときは、わたくしが、
大鑑巨砲おーでぃおの、生まれて初めてその片鱗に、
触れた瞬間だったのです。
放熱口から透かし見る、「とらんす」やら「こんでんさー」は、
今まで使ったどのあんぷより、堂々と鎮座ましましていて、
それらを支える「土台」のほうも、「Gしゃーし」 なる名を持った、
特殊な素材で複雑な、リブ構造のものでした。
「やっぱり本格おーでぃおは、物量がなきゃ話にならん」 と、
「これでようやく一端の、マニアを俺も気取れる」 と、
まだその音も聞かずして、厭が応にも高まる期待に、
わたくしは打ち震えたのです。
でも、繋ぎたるすぴーかから、流れ出てきたその音は、
低音域が 「ぶかぶか」 で、高音域は清涼感やら、
きめ細かさこそ感じても、どこかなまった雰囲気の、
また中域は厚みも深みも、あるのになぜか浸れない。
最初わたくしが期待した、HA-6800様の、
冴え冴えとした「切れ」感だったり、虚空に浮かぶ立体感とは、
随分違ったものであり、
その実態は各音域の、出方がどうこう、言うことでなく、
特性を追い求めるあまり、肝心の音が死んでしまった、
そんな印象を持ったのです。
しかし、めげないわたくしは、
「そうか!やっぱり、高級あんぷは"えーじんぐ"が必要なんだ!!!」と、
1週間も電源を、入れっぱなしにしてみたり、
「これは、あるいは繋いだ機材の、あらが出てきたものかしら???」と、
知人のおーでぃお機材やら、けーぶると繋ぎ換えたりと、
涙ぐましい不断の努力を、試みて続けて見たものの、
やはり6800様の、華麗な声には程遠く、
良く言ってみれば 「すっきりとした、けれどウォームな」音だけど、
悪口を言えば 「図体ばかりの、腑抜け野郎」 という印象が、
次第につのっていったのです。
それでも出会いの (ただし「見た目」の) 印象を拭いされなくて、
「いつかは化けてくれるのでは?」と、手放すこともためらわれ、
ばぶるの残照を表現したる、インテリアへと変わったものの、
そのうち、「音の良し悪しに、物量が及ぼす程度」 のほどに、
興味を覚えて手当たり次第、他のあんぷを集め出したら、
このひとに持った執着心も、いつしかひどく薄れてしまい、
自宅リフォームの資金の足しにと、2007年の6月に、
里子に出してしまったのです。
※ 他の機械は未練たらたらだったけど、このひとだけはホントにあっさり見送ったなぁ。。
ただ、このひととの経験は、
「いくら他人が褒めそやしても、自分に合うとは限らない」 とか、
「やっぱり自分の耳をもって、確かめなければだめなのだ!」という、
当り前ではあるけれど、実はなかなか難しい、
おーでぃお道の嗜みに、一番大事な教訓を、
しかと根付かせてくれたのです。
※ でもその結果は家の中に、足の踏み場も事欠く始末。。。。