去年年末に、日本人が興味をもつ中国のことを書いてみないかという話が来た。それを聞くと、授業の中で皆さんと色んな会話が脳に浮かんできた。
たとえば、中国語の中で「北方人、南方人」と言えば、出身地を指すが、「东方人、西方人」と言えば、東洋人、西洋人の意味となる。
南北で分ける理由は、大きい川が西から東へ流れる地形と関係ある。それは黄河、長江、南の珠江のこと。大きな山があれば、界となり、両側の文化が異なる。しかし、川は違う。物質を運ぶ川の両岸で一つの流域が形成される。
黄河流域で、一番古い中国が形成される。今でいうと、山東山西、河南河北でできた「中原」である。戦争や文化的な理由で、ここは中華と呼ばれる。 長江流域の楚、越は後に「中華」に入った。特に浙江の「越」は広東の粤、ベトナムの越南とは人種的に文化的に関係あると考えられる。
漢代の後に、北方民族が中原に入り、彼らに対して「汉人」の概念が生まれた。文字も、絵に近い「小篆」から縦横が確立される「隶书」に変わるので、後に「汉字」と呼ばれる。
漢人が珠江地域を開拓したのは宋代である。中原にいた多くの中国人が南へ移していく・・・
「南と北」だけでも、中国語の歴史、文化、日本文化とのつながりを語るドラマのテーマとなる気がする。
最終的に、このような本ができた!

 

 

この本は5章に分けて、南北の食べ物の違い、日常生活のさまざまから入り、地理歴史の説明をヘて、現代の社会制度、中国人の考え方へ進めている。

 

共著者の王さんは、2年前、語林で教えていた。上海に戻り、日系企業で働いている彼女に、今時の結婚事情やマンガアニメの話を書いてみないかと誘ったら、「ぜひいまの中国を皆さんに伝えない!」と快諾してくれた。そこで、80年代以降に生まれた若者の特徴、観光ブームと爆買から、中国で働く場合の医療保険、企業文化まで、「生」の情報を多く執筆してくれた。

 

また、台湾と香港の話もすこし書いた。名前が載っていないが、本教室の台湾出身の先生とも意見交換をした。本にかける部分はほんのわずかだが、同じ中国系の人間として、アイデンティティの複雑さを痛感した。もちろん、このような違いは、南方出身の先生と北方出身の先生の間にも同じようにある。

 

中国、文化としての中華は、多様性がある故に面白い。「中国はこうだ」「中国人はこう考えている」というような結論を避けながらこの本を書いた。特に「中国と日本はここが違うだ」というような話ではなく、地域や社会制度によって、共通点もあれば相違点もあるという風に書いたつもりである。ぜひ「南と北」という大きな物語を念頭において、50の文章と会話を中国語で読んでいただきたい。

 

ちなみに、会話の部分は、とても素敵なお二人に読んでいただいた。お楽しみに!