作文:忘れられない出来事 | "Second Line Entertainment"代表 DancerHassy's Blog

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自分達にしかできない、新たなエンターテイメントへの挑戦。



昔、まだ高校生の頃。




僕はストリートでブレイクダンスをしていた。



夜は駅に上手な人達が集まって、僕はその人達にずっと教わっていた。



夜にならないと店が閉まらないから、ストリートの練習は夜からじゃないとできない。


僕はそのときバイクの免許も持ってなくて、自転車で40分程かけて駅まで行っていた。

冬になれば服を何枚も着て、体をあたためるためにひたすらペダルを漕いでいた。


正直きつかった。



だから同い年の子と、学校帰りの夕方から練習できる場所を探していた。


違う高校の友達だったし、一緒に練習できる場所が欲しかった。


鏡になるような場所はなかったけど、

奥に何もないスペースがある場所を見つけ、そこで練習することを決めた。



カセットデッキを学校まで持っていき、帰りに駅に寄って練習を始めた。



始めてすぐのことだった。

警備員が来た。




すぐ近くの店の人が駅側に苦情を言ったらしい。







『帰って。』





警備員は冷たくそう一言口にして僕らをにらみつけた。



練習着に着替えていた僕らは、悔しい思いを抱きながらまた制服に着替えた。



すると警備員はこう言った。










『早く。』








ダラダラ着替えていたわけではない。



でもそう言われた。


わかってます。


そう答えた僕らがちゃんと去るのを確認できるまで警備員はそこを離れなかった。




友達は機嫌を悪くした。


『もういい。』




彼は帰って行った。





でも僕は帰りたくなかった。



毎日練習したくてもできなくて、どうにかできないかと必死にもがいていたから。



その日は雨がパラつき、真冬の寒い夕暮れ時だった。


僕は詳しくはわからない駅の中を、練習ができる場所がないか迷子のように探していた。



一ヶ所だけ、広いスペースのある場所を見つけた。





でも、





改札口の目の前だった。




とても広いスペースがあって、改札から出てくる人の邪魔にはならないように、ここなら練習できると思った。



でも、目の前には駅員さんがいる。



堂々と練習なんかさせてもらえるわけがない。



でもここしかないと思った。



僕は駅員さんに話しかけた。




すいません、あそこの隅の方でいいんで、ダンスの練習をさせてもらえませんか?




駅員さんは無言で僕のデッキを見て、



『音かけるの?』




そう尋ねた。


僕はかけるのがダメならかけません。


そう答えた。



すると駅員さんはしばらく悩んだあとにこう答えた。






『音はかけない。あと、1時間後に人が多い電車が来るから、それまでの1時間だけならいいよ。』





すいません、ありがとうございます、ありがとうございます。



僕は何度も頭を下げた。


嬉しかった。



やっと練習ができる、僕は寒さなんて忘れて必死に体を動かした。



50分程練習して、僕はまた制服に着替え始めた。



1時間だけ。と言われたからちょうど1時間練習するってのも図々しいかなと思って、少し早めに切り上げ、礼儀正しくもう一度お礼を言って帰ろうと思っていたから。



すると、着替えていた僕の方に駅員さんから近づいてきた。






『もう帰るの?』




『あ、はい、もうすぐ時間にもなりますし…あ、ありがとうございました。』





僕がそう答えると、駅員さんは何歳?とかどこの高校?とか色々と聞いてきて、




『ここの床痛くなかった?ブレイクダンスか…練習してるとこ見てたけど…すごいね。』

と笑顔でそんな言葉をかけてくれた。




色々と会話をしているうちに約束の時間になり、


遠くの方から電車が到着した音と、たくさんの人の足音が聞こえてきた。




すると駅員さんは






『もし、また練習場所に困ることがあったら来てもいいよ。頑張ってね。』






最後に一言そう口にした後、改札の方へと戻って行った。



僕はその駅員さんの背中に、大きな感謝の気持ちを込めて


『ありがとうございました!』


と声をかけた。





帰り道、僕は一人で泣いていた。


あの冷たい警備員の反動もあったけれど、

人の優しさに触れた1日だった。



僕はその優しさに甘えることよりも、本当に上手くなって、応援してくれた気持ちに応えたいと思った。






それから僕は、学校の昼休みと放課後にいつも一人、廊下で練習を始めた。



いつも一人だった。

いつも音楽もかけれず静かだった。


でもそんな僕に『頑張って』と声をかけてくれる友達がたくさんいた。



ダンス部作れよ、顧問になってやるから。そう言ってくれる先生もいた。


成績面だけでなく、そうやって努力する面もちゃんと見て僕を指定校推薦の枠で大学に入れてくれた先生もいた。



僕は感謝の気持ちは一つも忘れていない。



駅員さんの話はもう6年以上前のことだけど、今でも思い出すと涙が出てくる。


高校には卒業後一度も行っていない。

その駅にもそれ以来一度も行っていない。



それには理由がある。




その頃とは踊りは変わったけれど、僕がもっともっと立派なダンサーになって、


自分が今でも抱いてる感謝の気持ちを、

しっかりとありがとうございましたと伝えたいから。


形にしたいから。




一人一人、みんなの支えがあったから、今の僕を手に入れることができました。

そう一人一人、みんなに伝えたいから。



友や家族や恋人、先生や先輩後輩、バイト先の人間や、僕を応援してくれた全ての人に…




欲しい自分を手に入れることだけが夢ではなくて、


その自分になってから、たくさん恩返しすることまでが僕の夢。






一人じゃないんだな。



思い出す度そう思う。



頑張らなくちゃ。





そう思う。