吉田の書き物には、しばしば中原中也との交流が出てくる。
インタヴューも何度も受けているから本人はウンザリしている
かも知れない。中原から仏語の手ほどきも受けたらしい。
中原の名前くらいはご存知とおもう。
「秋の一日」
こんな朝、遅く目覚める人達は
戸にあたる風と轍との音によつて、
サイレンの棲む海に溺れる。
夏の夜の露店の会話と、
建築家の良心はもうない。
あらゆるものは古代歴史と
花崗岩のかなたの地平の目の色。
今朝はすべてが領事館旗のもとに従順で、
私は錫と広場と天鼓のほかのなんにも知らない。
軟体動物のしやがれ声にも気をとめないで、
紫の蹲(しゃが)んだ影して公園で、乳児は口に砂を入れる。
(水色のプラットホームと
躁(はしゃぐ)ぐ少女と嘲笑ふヤンキイは
いやだ いやだ!)
ぽけつとに手を突込んで
路次を抜け、波止場に出でて
今日の日の魂に合ふ
布切屑をでも探して来よう。
(「山羊の歌」より)
インタヴューも何度も受けているから本人はウンザリしている
かも知れない。中原から仏語の手ほどきも受けたらしい。
中原の名前くらいはご存知とおもう。
「秋の一日」
こんな朝、遅く目覚める人達は
戸にあたる風と轍との音によつて、
サイレンの棲む海に溺れる。
夏の夜の露店の会話と、
建築家の良心はもうない。
あらゆるものは古代歴史と
花崗岩のかなたの地平の目の色。
今朝はすべてが領事館旗のもとに従順で、
私は錫と広場と天鼓のほかのなんにも知らない。
軟体動物のしやがれ声にも気をとめないで、
紫の蹲(しゃが)んだ影して公園で、乳児は口に砂を入れる。
(水色のプラットホームと
躁(はしゃぐ)ぐ少女と嘲笑ふヤンキイは
いやだ いやだ!)
ぽけつとに手を突込んで
路次を抜け、波止場に出でて
今日の日の魂に合ふ
布切屑をでも探して来よう。
(「山羊の歌」より)