吉村昭に長編「ふぉん・しいほるとの娘」がある。

当時まだ文字通り「島」だった出島の内部が詳しく
描かれている。

徹底した調査、記録、証言をもとにして小説を冷静に構築
して行く吉村をおいらはとても尊敬している。
同時に、ボーイが小説を評価するところの創造力・想像力も
読み手に満足される。

出島の中はかなり整備され、出土された石垣をはじめ往時の
様子を再現しようとしている。
入園料を五百円も取られるので入らなかった。
外からで十分だった。

シーボルトの和蘭政府よりの密命は日本内部の調査だった。
医学は隠れ蓑に過ぎなかった。
吉村の小説に詳しい。

遊女との交わり、その長女、そのまた長女と女三代の
歴史も幕末情勢を織り込みながら巧みにその時代を
描き切るのである。