(インタヴュー)

史実の玄奘から千年近くたって小説『西遊記』が最終的に成立します。
成立までに長い時間をかけて少しずつ成長してきて、
最終的な段階には、ものすごい頭脳集団がいたのだと思いますね。

非常に数にこだわって構成されているんです。
ボスがすっかり細かいところまで計算して、手下に分散して書かせたようで、
そのための矛盾がちょこちょことあったりします。


B:その頭脳集団というのは?


 たぶん道教の煉丹術のグループじゃないかなと私は思います。
だけどそれを表に出さない。表面は仏教の話でしょ。
実は全然仏教的ではないわけなんです。

裏に道教的なものをちりばめて目くらましをやっている。
オカルティズムというか、ほとんど記号論、記号の遊びですね。
西遊記』は荒唐無稽な小説の代表みたいに思われていますが、
これほど論理的な小説も珍しいのではないかな


B:中国四大奇書のひとつと言われていますが、
  どんな目的で書かれたのでしょうか?


 大衆に向けたメッセージは、おもしろいから読めということ。
おもしろい物語を作るためには、構成も綿密に計算するのだけれども、
それを読む人にわからないようにしている。


B:それをわかってくれる人がいると想定していたのでしょうか?


 想定しているんだろうか…。
自己満足というか、「これは俺たちの秘密の世界だぞ。
誰にもわからないだろう。」

というのが目的と言えば目的だったのかもしれない。

そういうことを知らなくても、表面をたどっていくだけでおもしろい。
だから残ったんでしょう。言葉遊びが大好きな連中で、何気ない言葉の中に、
まったく別の意味が隠れていたりする。

B:『西遊記』の中には、神様とか仏様とか妖怪とかが、いろいろ出てきますね。


 西の天には釈迦如来がいて、こちらの天界には道教的な神々がいる。
でも両方とも官僚制度みたいな感じですよね。

その間に妖怪がたくさんいて、天の神が飼っている動物が降りてきたり。
西遊記』の挿絵における妖怪のイメージというのは
頭の両側にモヒカン刈りみたいな髪の毛をぴょっと立てた感じです。

この間の中国の反日デモで、小泉首相の写真に手を加えて
そういう風にしているのがたくさんあった(笑)。
妖怪に見立ててくれた我らが首相は光栄ですね。
ぜんぜん妖怪ではない俗物なのに。

08.8.24.より一部再録しました。