前回の続きです。

以下、教授の「日本人..」からの引用です。
ランダムに抜粋します。
(「世界史のなかの音楽」71年より);


しかし日本教という宗教は厳として存在する。
これは世界で最も強固な宗教である。
というのは、その信徒自身すら自覚しえぬまでに完全に浸透しきっている
からである(「P.40」)。

ベンダサン氏の考え方はすばらしくユダヤ的であるが、同時に禅を深く
「理解」しているところに独自性がある。

私は、このような書物(「日本人とユダヤ人」)の出現こそ、歴史の
現時点における日本人とユダヤ教およびキリスト教との本格的出会い
対決の証拠だと考えるのである。

私はベンダサン氏の宗教とその著書に多大の敬意を払うものであるが、
氏が明らかにしたそのような宗教相互の出会いと一致、協力こそ世界史の
とくにその現時点における主要問題があると考える者である。

音楽こそ、恐らくもっとも非現実的で、純粋に関係的な世界である。
しかもそれは、数学のように論理的に数えられ、思考されるよりは、
直接的に感得され、「無心」に「意識」されるのであろう、

ベンダサン氏が「ソロバンでも、名人の指は全く無心に舞っている。
ちょうどバレリーナ音楽に乗って舞っているように数にのって
舞っている。

数を扱うという、最も意識的思考と集中力の必要なことを、全く無心で
数に乗って舞いながら、一厘一銭のまちがいもない」(P.82)と
ほめる「ソロバン型の日本人の思考」は、じつにモーツァルト
見られるような純粋に音楽的な世界と同質なのではなかろうか。