7/17付「六本指のゴルトベルク」賛!を参照ください。
著者青柳いづみこさんの音楽を題材にした小説にまつわるエセイの
なかで『マエストロ』(篠田節子)が印象に残っていると書きました。

下敷きになっているのは、海野義雄が生徒への楽器斡旋で楽器商から
リベートを貰って逮捕された事件です。


昭和56年のことでした。音楽学院経営者と楽器商K&Kが安物バイオリン
5丁(実価72万円)を名器とする鑑定書を偽造して、故意に紛失させて
住友海上火災から4800万円の保険を詐取した容疑で逮捕されました。
彼らを取り調べる過程で、芸大音楽部弦楽科教授海野義雄(45)の収賄
が露見し、音楽教育の金権体質が世の中に暴露されました。
(http://uninaturr.net/geidaiongakuhuseinyuusi.html)


もっともこの小説を読むと、先生が生徒を紹介斡旋した見返りに
楽器商からリベートを貰うのはこのギョーカイではごくごく
常識的なことのようであり、いづみこさんも経験と時間を割いて
勘定するのだから、と肯定的であったとおもいます。

主人公神野瑞恵は、たまたま非常勤講師をしていた
国立大学の学生を紹介して口銭を受け取ったことで(またその
ヴァイオリンが真っ赤な偽者であった!)逮捕されます。
国立大学公務員扱いで口銭は賄賂になるのです。

(つづく)