ここでも何度か紹介したが、青柳いづみこさんの「図書」連載の
首記エッセイ?が岩波から本になった。(09年2月)

この連載が終わった途端に「図書」を読む楽しさが失せた。


本書は読書案内のふりを装いつつ、括弧つきの「音楽」とはなにか、
創造とは、演奏とはなにかという本質的な問題を考えさせるように
仕組まれている。
『ゴルトベルク変奏曲』は、最初と最後に主題となるアリアを配し、
あいだに三十の変奏をならべる構造になっているんだが。。

(堀江敏幸、毎日3/8付)


ボーイの印象に残っているのは、篠田節子『マエストロ』ー楽器の真贋ー
について、著者のどちらかというとモデルになった教授(↓)に同情的
な言だった。

芸大あるいは音楽界という狭い社会で生き抜いている以上、著者も安易な
批判ー先輩でもあるし!-はできにくいのだろう。
このことは篠田の小説を読んでからまたここで挙げたい。

(本が出るまでご本人のWEBで読めたが、削除されているので「マエストロ
について言及できない。残念だ。)


この小説の元だねは、海野義雄(元N響コンサートマスター、芸大教授)の
ヴァイオリンの真贋鑑定をめぐる事件である。

当時大騒ぎになった↓。
何せ、しょっちゅうNHKーTVで海野のポマードで固めた頭髪、その格好をつけた、
弾きっぷりを音楽ファンは皆厭という程見ていたのだから。。


昭和56年11月、東京芸術大学音楽学部が備品として購入したガダニーニが
偽物であることが発覚。
納入業者が詐欺罪で東京地検特捜部に逮捕され、取り調べの過程で海野教授に
賄賂を送っていたことが明るみになった。
同年12月特捜部は同大教授・海野義雄容疑者(当時45)を受託収賄罪で逮捕。


参考 (←くりっく)

その後の事は全く知らない。

このヴァイオリニストは復権?し、今は上野の音楽大学の学長になっている。