▼北の集団指導体制化を望む中国
米国が北に強硬姿勢をとっている限り、北は経済支援を中国に頼るしかない。
そして中国は、軍事主導の北朝鮮で最も重要な組織である国防委員会を、
すでに掌握しているふしがある。
6月になって、金正日の後継者として三男の金正雲が確定したと報じられた。
こうした最近の流れから私が感じるのは、北朝鮮が中国型の「集団指導体制」に
移行しつつあるということだ。
中国が今のような政治の安定と経済の発展を実現できたのは、文化大革命後、
権力者が毛沢東からトウ小平に代わった後に、個人独裁を排して集団指導体制を
とりつつ、社会主義の建前を維持したまま市場経済(資本主義)を導入する
改革開放を成功させたからだ。
中国は、自国の傘下に入りつつある北朝鮮に対しても、同じような国是を
採らせ、中国と同様の経済発展をさせたいと思っているはずだ。
北朝鮮が世襲制の個人独裁を採っている限り、一族内部の対立が常に
北の中枢の不安定要因として残る。
半面、北朝鮮が労働党の独裁を維持したまま、党中枢を集団指導体制に
移行することは、米国が望む複数政党制の民主化を導入した場合より、
はるかに政治的な安定を維持しやすい。 田中宇
(つづく)