白川静のことは過去に二度ほど書いた。
ひとつはその死のときの追悼であり、いまひとつは殷周のことだった。
白川さんの面容は尋常ではない。
その目は何かに取り憑かれているやに見うけられる。 デモーニッシュといふ
形容が最もふさわしい。
このところ、藤堂明保の著書を散見していたが、つい最近藤堂さんが
白川静の 「漢字」 (70年 岩波新書) を攻撃したことを知った。
何故にかかる人物に岩波は書かせるのかという内容の由(未見)。
大喧嘩になり、白川の反論はその著書に収められている。
藤堂明保は学会でも超エリートであり、東大教授、当時機動隊を導入した
加藤学長とソリがあわず退官。 早稲田の客員教授、日中学院の院長にも
就任、11PM(後出)にも出演、NHKテレビの中国語講座の講師を長く務めた。
伊賀上野の藤堂家(武士)の末裔で、強烈な自負心を有したと認められる。
かたや白川さんは、明治生まれで藤堂の先輩に当たるが、福井の貧しい
商家の出、立命館の夜学を出た苦労人。 藤堂が白川に対し、大いなる
優越感を抱いていたことは想像に難くない。 私学風情がという蔑みの念
もあったのは否定できまい。
両人の漢字語源その他には、賛否両論があるようだが、その是非を必要
としない。 読んで著者の漢字への熱き思い・情熱が伝わりかつ勉強に
なればよいだけだ。 われわれ読者は学者を目指さない。
白川さんの漢字学への態度は極めて謹厳実直であり、その情念の迸るところ
到底藤堂の比ではない。 その証拠は上に触れたとうり、顔に現出している。勿論、
白川静の業績について語るのは能力外であるが、いまこれを記しながら検索した処、
李賀でも名を出した松岡正剛の一文(千夜一夜)を参照頂きたく思う。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0987.html