昔の鎖国は、日本人が外国に行くことを禁じたが、今の日本の鎖国は、外国人
及び外国製品に対して行われている。
日本人は、その歴史から見て、決して日本人自身が考えているような単一民族
ではなく、さまざまの人種が混血してできている。
朝鮮半島からの移民もあっただろうし、中国大陸から船に乗って来た者もあっ
たろう。またつい戦前まであったフンドシやオコシは明らかにフィリピンや
ボルネオの土民と同じ風俗だから、祖先を同じゅうするものと言っていいでしょう。
もちろん、その他のいろいろな血も混じっているだろうから、テレビの普及す
るつい最近までは、青森弁と鹿児島弁ではお互いに話だって通じなかった。
しかし民族とは、必ずしも血のつながりを意味せず「民族として共通の意識を
持って生活をしているかどうか」が問題であるとすれば、日本人のようにまと
まりのよい一億二千万人というのは珍しいです。
日本人が経済的に成功した条件の一つに、こうした日本人のグループ意識があ
ることは認められてしかるべきです。
既に日本経済の実力が認識され、日本が結構、住みよい国であることがわかれ
ば、世界中の人が日本へ集まってくる。
いくら日本の入国管理局が波打際で撃退作戦に出ても、日本に押し寄せてくる
「外人」たちを一人残らず海に追いおとすことはできない。
たとえば、台湾やフィリピンから日本へ売春旅行にやってくる女たちのことが
よく問題になっている。
もとを言えば、成金になった日本人がこれらの地域に買春ツアーを組んで乗り
込み、気前のよいところを見せた結果であって、日本人を相手にしたら、よい
稼ぎができることを教えたからです。
日本人はよく名刺をくれる。北投温泉で一夜を明かして、敵方の娼婦に名刺を
くれないかと言われると、どうせ遠い外国のことだし、いいだろうと気軽に
名刺をくれる。
女の方はそれに三だとか、五だとか、自分だけ分かる符号をつけている。三と
か五とかは、正規の料金のほかに、チップを三百元くれたとか、五百元くれた
という意味であって、のちに台湾人の海外旅行が自由化されると、女たちは
日本見物、買物旅行もかねて、売春の出前にやってきた。
名刺の束の中から、チップを奮発してくれた気前のよい客を選び出し「舞踏会
の手帖」ではないが、昔のことを思い出しながら、訪ねてまわったのです。
「たいわん物語」 ( 中央公論社刊 ) の中に出てくる「小姐東遊記」という私
の小説はこうしたテ―マをとりあげたものであるが、もちろん「事実は小説よ
り奇なり」です。
先進国の人にとって、遊ぶなら発展途上国の方が安上がりである。しかし、稼
ぐ側から言えば、先進国の方が断然、割りがよい。だから、売春婦だってどう
やったら、日本に入国できるか、そのへんのところにチエをしぼる。
或る時、若い女の子に「いつまで日本にいますか ? 」ときいたら「この度は、
××株式会社と契約相整いまして、山梨の工場におきまして二カ月問、研修を
致すことに相なりました」と、暗記した通りを一気に喋った。
これには係官も思わず吹き出してしまったそうです。
どう見ても「夜の女」という感じだが、ほかは何をきいても一切通じない。恐
らく暗譜した文句は五十歳以上の昔の日本語を知っている台湾の人が教えたも
のでしょう。
商業用、書類用の日本語と、ふだん喋る日本語はまるで違うものであるが、そ
ういうことは一切、おかまいなし、とにかく、入国したい一心で日本語を覚え
る人がいるようになったのも、日本が先進国になった何よりの証拠であると
言っていい。
(付記 上記は検索して偶然見つけたものですが、出自は全く不明です。引用につき
ここでお礼を申します。謝謝!)