「たいわん物語」のあとがきに、Qさんはこう書かれている(抜粋)。
台湾には一年間に約60万人の日本人がやってくる。
観光客もあれば、“男の天国”を目指してくる人もあれば、
海外投資に乗り出して一旗あげたいと思っている人もある。
いずれも、日本経済の発展と円高現象がもたらしたもので、
戦前には考えられなかった新しい説明といってよいだろう。
連載中(週間ポストに80-81年連載)、さまざまな反響があった。
台湾に行ったら、知らない人から
『邱センセイは僕のことをモデルにして小説を書いている』と云われたし
『なつかしい、自分のことのような気がする』と手紙を下さった方もあるし、
なかには、『僕は3ヶ月にいっぺんくらい台湾に行きますが、
センセイの小説を見て、女房が色々質問するようになって弱っていますよ』
と頭をかいている人にも出会った。
たまたま私は日本人と中国人の精神構造の内部にまで立入ることのできる
立場にいるせいか、双方で火花を散らしたり、すれ違いになったりする
ところがよく目に映る。一つそれをとりあげて新しいジャンルをきりひらいて
見ようと思い立った。
題名の『たいわん物語』は荷風散人が明治の末期に書かれた『アメリカ物語』
『ふらんす物語』にあやかったものである。
(つづく)