十数年前に、邱永漢「わが青春の台湾・香港」(中央公論社)が出版された。
さっそく買い込んで読んでいたら、同級生に、Qさんとおなじ台北高校から東大に進んだ
王育徳さんの名前が出てきたので愕いた。
王育徳(Ong Iok-tek,1924-1985)さんは、明大の教授で福建語(閩南語)の研究、及び
はじめて日本人向の台湾語の入門書を書いた人だ。
ボーイは台湾に行く前から、王さんの入門書を何度か借りてパラパラとめくってみたり
して、それを現在まで繰り返している。特別に勉強しようとしてるわけではないんだが。
マレー半島を旅していると、店の看板に漢字とアルファベットが併記してあるのにすぐ気付く。
ならべて見ていると、意外にも日本の音読みに近い発音があるのがわかる。
それらは、福建(ほっけん)から広東の出身の華僑たちで、各々出身地の発音でローマ字で書いている。
(もっとも、なかには海南島ほかの出もある)
音読みに近いのは、福建語のようだ。台湾語とほぼ同じ(?)で両者はそのまま通じる。
ただ福建語でも,地方により全く通じないのもあるそうで、そのことはQさんの上掲の本にも少し
書かれている。
王さんのコラムより。(章はさんずい付、声調は表示しない)
台北 台南 章州 泉州 厦門 潮州(の順)
鶏 koe ke ke kei koe koi
洗 soe se se sei soe soi
底 toe te te tei toe toi
梨 loe le le lei loe loi
つまり、台北は厦門と同じ訛りで、台南は章州と同じ訛りで。。
これは福建語として一つの「祖語形」があって、そこから各方言の形が分かれ出たと
考えたくなる。私の学位論文「閩音系研究」は福建語(閩南と閩北語)の文言音と
白話音の祖語形の再構を試みたものでした。始めに白話音の体系があって、その上に
文言音の体系が重なったものであることを、ついでにお知らせしておきましょう。
王育徳著「台湾語入門」P.22より(日中出版 82年。87年増補改訂版)
「台湾語初級」もあり(日中出版 83年。93年増補改訂版)
育徳(Iok-tek)も音読みに近い。
論文「中国五大方言の分裂年代の言語年代学的試索」も手に入れば読んでみたい。