メルマガ(6・5付)より。
こちら。
私が見るところ、もっと中国に消費させねばならない理由は、これまで世界
最大の消費国だったアメリカが、すでに国家財政と家計の両方が借金漬けにな
り、住宅バブルの崩壊もあって、もはや消費できなくなりつつあり、代わりの
新たな大消費地を早く作らないと、世界経済が不況に陥ってしまうからである。
中国では10億人が住む農村で、
医療保険がないために満足な医療を受けられなかったり、学校が有償制になっ
たため学校に行けない子供が増え、問題になっているので、中国政府はそこに
金を使えというわけである。
▼中国の空母建造に協力を申し出たアメリカ
中国を政権転覆して潰したら、
イラクのような大混乱になり、消費を拡大するどころではなくなる。先進国は
年3%しか経済成長していないが、中国は10%の成長を続けている。この成
長は、世界経済にとって必要不可欠になっている。
▼資金運用大国になる中国
中国は従来、製造業を発展させ、工業製品の輸出で経済力を伸ばしてきたが、
輸出の儲けが貯まり、外貨準備も急増して今年3月には日本をしのいで世界一
(1兆2000億ドル)になった。中国政府は従来、慎重な資金運用に徹し、
貯めた外貨の多くで米国債を買い、アメリカの赤字を中国の黒字が埋めるかた
ちになっていた。しかし中国政府は今年初め、資金運用のための新機関を作る
ことを決め、投資の多様化と効率化を進めるとともに、投資技能を向上させよ
うとしている。
その具体的な動きとして中国政府は5月下旬、企業買収を専門にするアメリ
カの大手投資会社ブラックストーン社の株の約8%を買い、資本参加した。中
国政府は昨年、アメリカの国際パイプライン敷設会社ユノカルを買収しようと
して、米議会に反対されて失敗している。中国政府は豊かな資金を使って欧米
企業を買収し、国家戦略に必要な技能を取得しようとしたが、中国の台頭をお
それる欧米側は、買収拒否の意志が強い。そのため中国は、ブラックストーン
のような企業買収会社に資本参加することで、間接的な買収戦略を採ることに
した。
今後、中国が投資技能を高めて米国債を買わなくなると、アメリカでは国債
の売れ行きが悪くなって金利が上昇する懸念がある。国連の経済社会局は最近、
アメリカは巨額の赤字が嫌気され、ドルの急落が起きかねないと警告した。
▼アフリカは中国の傘下に
中国は、石油や鉱物資源を買い漁るとともに、中国製の安い日用品などを売
ることを目的に、何年か前からアフリカに食い込み、積極的な開発融資や、道
路や鉄道などの建設事業を援助している(中国が輸入する石油の3割がアフリ
カ産)。中国からの援助には「人権」や「民主」といった条件がついていない
ので、アフリカ諸国は世銀や欧米からの援助を断り、中国からの援助に乗り換
える傾向を強めている。アフリカ諸国は5月中旬、アフリカ開発銀行の年次総
会を上海で開き、中国政府は今後3年間で200億ドルのインフラ投資をアフ
リカ諸国に対して行うことを約束した。
中国は、アフリカだけでなく、中南米や中央アジアなどの諸国に対しても開
発援助を拡大している。中南米では反米感情が強く、中南米側は、中国との連
携強化はアメリカの影響力を排除するために好都合だと考えている。従来、中
南米には中国ではなく台湾(中華民国)と外交関係を結んでいた国が多かった
が、中国の影響力拡大によって、台湾から中国に乗り換える動きが出ており、
台湾は絶望的な後退を余儀なくされている。
今後の世銀は、開発援助を使った中国の覇権拡大に
対抗する姿勢を弱め、中国の台頭を容認する方針を採りそうである。