株式市場の上昇は急激に膨らんだ過剰流動性が主な要因とされ
ていますが、その過剰流動性のもとになる貿易黒字の削減には、
人民元の切り上げが必要ということで、これまでの預金準備率操
作や利上げだけではなく、変動幅の拡大に踏み切ったのだと思い
ます。しかしながら、中国の高い成長を支える車の両輪、輸出と
投資のうちの輸出の伸びを抑えるということは、現在噴出するさ
まざまな問題を解決する大切な手立てを失うことになります。
5月9日時点の中国の個人投資家の数は9346万口座(日本
はおおよそ1400万口座)で、そのうち約3000万口座がこの1年ほ
どで開設されたものです。この個人投資家の急増ぶりは、何か日
本のネット専業証券会社の口座が急増した2年前を彷彿させま
す。中国の個人投資家が朝早くから証券会社の店頭に並ぶ光景を
テレビが映し出していましたが、以前にも書いたように日本の競
馬場の馬券売り場のようで熱狂的な雰囲気を感じます
。
中国証券業協会は5月14日「最近の中国株相場が
高い所にとどまり、一部にバブル形成が見られるものの、懸念さ
れるマーケット全体のバブル化はない」とレポートを発表してい
ます。PERの比較から割高ではないということですが、なにやら
日本のバブルのときに出た前川レポートを思い出させます。前川
レポートは土地の含みを会社の資産として、Qレシオを使って日
本の株式市場の割高感・バブルを否定しましたが、中国の今年の
第1四半期から採用された新会計基準では時価会計基準が盛り込
まれましたが何かの偶然なのでしょうか。
現在の中国本土株式市場について先日お会
いした友人の中国経済コンサルタントのT氏から、「高価な花
瓶(株式市場)の上にネズミが乗っている状況で、花瓶を壊さず
に駆除することに頭を痛めているようだ」と言われました。確か
に過熱気味の株式市場を冷やそうとする過度な引き締め政策は、
大切な株式市場を壊しかねないとの思いがあるようで、現在の政
府の舵取りの難しさを揶揄(やゆ)していると納得しました。
(内藤証券 廣瀬政弘)