貿易黒字が人民元高につながらないよう中央銀行である中国人
民銀行が大量の為替介入(米ドル買い)を続け、この結果として
外貨準備高は1兆774億ドル(06年末)と世界第1位となりました
が、その分、新たに人民元を市中に放出、マネーサプライが増え
過剰流動性が生み出され、そしてその過剰資金が不動産や株式に
向かうという構図です。


 さて、人民元高を防ぐために為替介入をする。少し前までの日
本も円高を抑えるため大量のドル買いの為替介入を実施し、市中
に大量の円が放出されましたが、株式市場も不動産市場も大きく
上昇する事はありませんでした。なぜなら、バブル後の不良債権
処理に追われ、バランスシート調整にほとんどの過剰資金がつぎ
込まれ、不動産や株式にはほとんど回らなかったからです。そし
て、バブル後遺症も癒えた最近は、経済が好調を続け特に輸出の
伸びによる貿易黒字の大幅増にもかかわらず為替介入を行わなく
ても円高にはならない状況が生じています。

 そこで、中国では資本取引が厳しく規制されていますが、仮に
規制が撤廃され資本取引が自由化されたら、現在の日本のように
為替介入をしなくとも人民元高が抑えられるのではないかといっ
た考えも出てきます。4月7日付の「日経金融新聞」でゲーリー・
シリング氏は、[その国民性からして、中国人は間違いなく外国
証券に積極的に投資するだろう、資本取引の自由化・変動相場制
へ移行したら、人民元は下落する可能性が高いのではないか]

と、述べています。

 私は、中国政府の本音は、今は急激な人民元高を望まないとし
ても、近い将来は今日の日本のように緩やかな人民元安を望んで
いるのではないでしょうか
、そのためには資本取引の自由化・変
動相場制への移行は中国政府自身がフリーハンドにして置きたい
と考え、
また、その時期については景気減速の恐れが出てきた
時、年金・医療費といった社会保障費対策や三農問題解決のため
の財政資金が潤沢に集った時と考えられますので、まだ数年先の
ように思われます。それまでは、資本取引の自由化については対
外的な圧力が加わっても中国的な漸進的規制緩和でお茶を濁すと
思います。

(内藤証券 廣瀬政弘)