平凡社 07年2月刊
殷は神聖王朝として輝かしい時代であり、優れた文物を遺し、後世の歴史に充分な歴史的な
足跡をこした。周という王朝は、孔子によって讃嘆やむことのない優れた古代の王朝とし
て伝えられている。

殷周の歴史を特に選んで皆さんににお話しようと思いましたのは、今では典型的と考えられる
古代帝国、古代の理念的な理想的な国家としての周王朝のあり方、こういうものを考えまして、
現代のわが国と対比してみますと、まことに心貧しい、恥ずかしくてたまらんという気持ちが
するのです。

ことに近年のわが国の外交のごときは、子どもの喧嘩にひとしい。おそらくわが国の外交史上、
このような醜態はありません。もっと相手のことも考え、自分のことも考え、お互いにその尊厳
を傷つけないというような形で、外交は展開されるべきだと思います。(P.197-8)

帯:京都で行われた文字講話の後、新たに行われた4回の講話を収録。甲骨文・金文とは何か
という総論に加え、主な金文について断代・解釈を試み、中国古代王朝の姿を探る。
白川文字学の基盤をなす甲骨金文学の絶好の入門書。

1910~2006年。福井県生まれ。立命館大学法文学部漢文学科卒業。99年勲二等瑞宝章、
2004年文化勲章受章。著書に「字訓」「字通」「白川静著作集」など。